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新型コロナ感染の第2波、3波による不況に気をつけよ!

津田栄皇學館大学特別招聘教授、経済・金融アナリスト
観光客がほとんど見えず、お店も閉めている浅草寺の仲見世通り商店街(写真:k.k/アフロイメージマート)

厳しい日本経済

最近発表された経済指標を見ると、日本経済は厳しい局面にある。先日発表された、4-6月期の実質GDP(国内総生産)の改定値は、季節調整値で前期比-7.9%、年率では-28.1%と戦後最悪のマイナス成長となった。7-9月期は、大幅な落ち込みを見せた個人消費が感染拡大のなか財を購入する動きが続くことから、年率で二桁のプラス成長が見込まれる。しかしそれもGDPの減少の半分にも届かないと見られる。

秋以降の経済が怖い

そうした中で、新型コロナウィルス(以後、新型コロナ)の新規感染者の増加に鈍化傾向が見られ、楽観論が出ているが、個人的には、10月以降秋から冬にかけて、日本の景気が怖い。なぜなら、これまで耐えてきた飲食店、旅行関連企業の中小・個人企業を中心に、経営に行き詰まるところが一気に出てきそうだからだ。こうしたお店や企業は、今年4月から、新型コロナで外出自粛が要請されたために、売り上げが昨年に比して大幅に落ち込んだままで、新型コロナの先行きがどうなるか分からないのでは、回復の見通しが立たない。

もちろん、政府からの持続化給付金や自治体からの営業自粛に対する補償金などが給付されたものの、一時的であり、その後も営業自粛を求められ売り上げがわずかな状況では、経営は一段と厳しくなっている。中小・個人企業は、9月前後には自己資金は底をつくと言われ、融資の返済も近く始まるが、その返済めどが立たないとなると、お店や会社をどうするか選択を迫られることになろう。存続を選択するとなると、まず一番負担となる人件費をカットすることになるはずで、つまり最初はパートやアルバイト、次に従業員の解雇、それでも無理であれば、倒産、そうなる前に廃業や解散を選ぶことになろう。

実際、帝国データバンクの企業倒産情報では、新型コロナ関連の倒産は、現在のところ500社に達した。多くは、新型コロナ感染以前から経営上の問題があった企業で新型コロナが引き金になったが、今後は、以前では経営上の問題がなかったが新型コロナ感染の要因で倒産に追い込まれるケースが増える可能性が高い、その結果、取引先の連鎖倒産や焦げ付き、取引先の消失につながり、実体経済に悪影響が出るとの予想もある。倒産ではなく、それ以前に廃業や解散を選ぶお店や企業は、倒産の何倍にもなるといわれている。

もうすでに、街のあちこちに店じまいの張り紙をしてシャッターを閉めているのが散見される。今後新型コロナが終息せず、感染不安がある限り、客は戻らず、売り上げが回復する期待は持てない。そうなれば、こうした倒産、廃業や解散が、資金の枯渇とともに、10月以降に増えることになろう。

ただ、政府・自治体も、なんとか経済を回したいとの思いで、新型コロナ感染者増加の鈍化傾向を見て、9月15日から東京の飲食店の営業時間短縮要請を撤廃し、10月1日からGo Toトラベルキャンペーンに、感染者が多いが経済効果も大きい東京も加えようとするなど自粛緩和に動き始めている。それはよく分かるし、当然だと思う。

秋以降は新型コロナ感染の第2波の恐れ

しかし、いま世界で感染者が増え続けているのは、ブラジルなどの南米、南アフリカなどのアフリカ大陸、これまで沈静化したかと思われたオーストラリア・ニュージーランドなどが冬を迎えている南半球である。夏場は新型コロナの感染力が弱いといわれ、また人の活動も控えていたから、感染者の増加が鈍かったが、南半球の現状を見ると、これから秋から冬にかけて、新型コロナの感染の第2波(第3波とも)がやって来て、本格的に拡大する可能性はあると思わざるを得ない。

今の政府のやり方では、戦略がないまま、新型コロナ感染を楽観的にとらえて、むやみに経済活動の再開を推進した結果、新型コロナ感染を拡大させて、むしろ経済活動を委縮させ、景気が悪化するという事態を招くのではないかと危惧する。そして、最悪なのは、帝国バンクも危惧している新型コロナ感染による企業の倒産の増加、その何倍もの廃業や解散・整理、そして大量の失業、その連鎖から実体経済が消費から設備投資へとスパイラル的に悪化する大不況にもなりかねないことである。

日本経済を回すには

今必要なのは、新型コロナに対する不安を国民から早く除去することであり、そのことが経済活動を回復させる近道である。ワクチンができるまでは、まず大規模なPCR検査による新型コロナ感染者の早期発見と隔離、着実に蓄積した治療法の確立と共有、その結果、感染者がほとんどおらず、万一感染しても回復する可能性が高いとなれば、国民は安心して経済活動をする。そうした戦略が、次の政権に求められている。

もちろん、今の保健所を通じてのPCR検査は、保健所に大きな負担がかかって大規模にできないと言われるが、むしろどんなケースも保健所を通すというボトルネックをなくして、公共の場などにPCR検査場を設けて費用も低額か無料で、短時間で検査結果を出し、保健所は結果集計など統括をしてあとは民間に任せる方法を採ればいいことである。また隔離も、医療機関に負担を掛けないように、軽症者や無症状の人などは、今でも行っている借り上げホテルだけでなく、既存の大規模施設を利用して収容すればいいことである。そのために、第二次補正予算で使われていない予備費の10兆円を活用すればいい。そして、それらを妨げている法律を早く改正するべきである。

皇學館大学特別招聘教授、経済・金融アナリスト

1981年大和証券に入社、企業アナリスト、エコノミスト、債券部トレーダー、大和投資顧問年金運用マネジャー、外資系投信投資顧問CIOを歴任。村上龍氏主宰のJMMで経済、金融について寄稿する一方、2001年独立して、大前研一主宰の一新塾にて政策立案を学び、政府へ政策提言を行う。現在、政治、経済、社会で起きる様々な危機について広く考える内閣府認証NPO法人日本危機管理学総研の設立に参加し、理事に就任。2015年より皇學館大学特別招聘教授として、経済政策、日本経済を講義。

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