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日テレの内定取り消し騒ぎ。銀座ホステスのバイトは「コミュニケーション能力」向上のため?

大宮冬洋フリーライター

ガールズバーでアルバイトをしていたという大学3年生と話す機会があった。いや、客として会ったわけではない。仕事上での会話である。

「私は人の話を聞くことよりも自分の話をするほうが好きなのだとわかり、バイトを辞めました。でも、聞き上手になれないと就職活動にも不利だと聞いています。どうすればいいのでしょうか?」

率直すぎる告白と質問にたじろいだ。日テレの内定取り消し騒ぎの渦中にいる「ミス東洋英和」の女子学生も、小遣い稼ぎのために銀座のホステスとして働いたのではなく、リッチな大人たち相手のコミュニケーション能力を向上させることが目的だったのかもしれない。

以前、僕はこのコラムで「頭脳・外見・性格の『三冠王』だけが大企業に入れる時代」という文章を書いた。実際、いくつも内定を取っている学生や大企業の若手社会人と会うと、いわゆるオタク系は皆無に等しく、ひたすら爽やかで感じが良く、それでいて自分の意見も持っている人が多い。僕が就職活動をした15年前は、ちょっと変わった外見や性格で周囲とはなじみにくい学生も大企業の内定を取っていたように思う。それではもはや通用しない時代なのだ。

「酔客のつまらない話を聞いたふりをして受け流す」「社用族の自慢話についていくために日経新聞を熟読する」「誰からも好感を持たれつつ太い客には特別感を持たせる」などのテクニックや努力は、目上の存在である客を上手にあしらうためには必要だ。就職活動中の学生や若手社会人には役立つ面もあると思う。

しかし、新人時代を終え、30代になると状況が変わってくる。権限や責任が重くなり、努力ではなく結果を問われ、部下を持つ管理職になる人もいる。そこで求められるコミュニケーション能力は、媚びを本質とするホステスのそれとは大きく異なる。

30代以降で真の聞き上手になるためには、「この人にならば何でも相談できる」と思われるような存在でなければならない。そのためには実力と実績および信頼できる人柄が何より重要である。尊敬されていなければコミュニケーション自体が始まらないのだ。少し前に流行ったコーティングなどのテクニックは表面的なものに過ぎない。

冒頭の女子学生は、ガールズバーを辞めた後は塾講師のアルバイトをしているらしい。正しい選択だと思う。講師というのは、受講者と対等もしくはそれ以上の立場で話さなければ教育効果がなくなってしまうからだ。敬意を持てない人の教えに誰が真面目に耳を傾けるだろうか。情熱を持って教えようとするならば、言葉遣いや姿勢も自然と凛々しいものに変わっていく。

社会人として生き抜いていくためには、目上の相手を立てることも相手から尊敬されて立てられることも両方必要だ。ガールズバーと塾講師の経験をともに活かし、たくましく働く女性になってほしい。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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