佐々木紀彦編集長は書き手の「3つのモチベーション」を煽りまくる
●今朝の100円ニュース:「東洋経済オンライン→ニューズピックス」(朝日新聞)
今朝は100円どころか100万円ぐらいに相当するニュース記事に出会った。朝日新聞の経済面にある「東洋経済オンライン」の佐々木編集長の移籍ニュースだ。なぜそれが100万円?と言われるかもしれないが、同WEBサイトで昨年から仕事をしている僕にとってはフトコロに直結する大ニュースである。
仕事として文章を書く場合、3つのモチベーションが必要だ。1つ目は、発注者(編集者)が優秀であること。「僕にしかできない(というか僕ぐらいしかやらない)だろうなあ」と思わせる企画を突き付けてきて、それでいて人柄は柔らかく、事務連絡などで負荷を感じさせず、仕事の結果には厳しくて温かい。そんな編集者が相手だと、ギャラや納期などの条件に少し無理があっても、二つ返事で引き受けて普段以上に張り切ってしまう。
2つ目のモチベーションは、多くの良質な読者に読んでもらえること。読者ハガキやWEBのコメント欄でウィットに富んでいて好奇心を膨らませてくれるような感想が入ったりすると、身が引き締まる思いがする。そのような媒体で書く記事は、自分よりはるかに知的な人たちと個別に対話する気持ちで臨まなければならず、自分を飾ることがほとんどできない。取材した内容と自分自身をほぼ「ありのままで」提示して、評価を待つしかない。恐ろしいけれど、僕たちライターにとっては最良の環境だと思う。
3つ目はやはりお金。たまには買い物や旅行もしたいし、それが仕事の糧にもなる。ギャラは可能な限り高いほうがいい。しかし、ヒット作を出して印税や講演料で稼がない限り、文章だけで生計を立てて小遣いをねん出するのはなかなか大変だ。僕はいろんな人に仕事や生活の本音を聞かせてもらった内容を主なネタにしているので、交際費はやたらにかかる。現状でも月に50万円ぐらいの収入がないと仕事と生活が回っていかない。
僕は佐々木編集長と3つの仕事をしてきた。「今週の愛知県人」という連載は好きなことをやらせてもらったがPVが稼げずに全20回で打ち切られた。残念だったが文句はない。それでも多くのPVと感想を獲得した記事が3回あったが、いずれも「志も能力も高く、ユニークな工夫で働いている爽やかな若者」を取り上げた内容であり、「東洋経済オンライン」の読者層を少しつかめた気がした。
単発記事の「ユニクロ社員が不幸になる合理的な理由」は、著書『私たち「ユニクロ154番店」で働いてきました』の発売に合わせた記事を頼まれて書き、ヤフートピックスに取り上げられるなどの反響を得た。佐々木編集長のビジネス嗅覚の鋭さに驚いた。
現在は「エリート美女のすべて」という連載をしている。これも佐々木編集長からの「大宮さん、高学歴の女性は得意でしょ?」という軽い一言で打ち合わせが始まり、わずか30分間ほどでタイトルと内容が決まった。今のところ多くの読者に読んでもらっており、ギャラはPV連動性なので十分に稼げている。今後、そのお金で地方のエリート美女も勝手に開拓するつもりだ。
佐々木編集長は書き手の「3つのモチベーション」を煽りまくる稀有な若手編集者である。移籍先のインターネットメディアでも大いに活躍することだろう。僕も何か書かせてもらいたいな。さっそく彼にメールしなくちゃ……。