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開運薬膳火鍋は日本の食文化となれるのか?

東龍グルメジャーナリスト

正月とおせち料理

2015年も始まってから1ヶ月が経とうとしていますが、みなさんはおせち料理を食べたでしょうか?

正月には1年の始まりということで、この年がうまくいくようにという願いを込めて、おせち料理を食べます。

おせち料理とは、正月に食べるお祝いの料理です。「おせち」とは本来、暦上の節句のことを指します。その際に食べる料理をおせち料理と呼んだため、現在では節句の一番目にあたる正月の料理を表す言葉として使われています。おせち料理は”めでたさを重ねる”という意味で縁起をかつぎ、重箱に詰めて出されます。地方や家庭ごとにお重の中身は様々です。

出典:日本文化いろは事典

縁起物を集めた

また以下の通り、おせち料理は縁起ものばかりを集めたもので、「縁起のよいおせち料理のいわれ」を見てみると、それぞれが意味のある一品一品であることが分かるでしょう。

もともと季節の変わり目の節句(節供)に、神様にお供えした食べ物を「お節料理」と呼んでいましたが、やがて、節句の中でも、もっとも重要な正月の料理のことを「おせち料理」と呼ぶようになりました。 おせち料理はお正月の神様、年神様に供える料理であり、家族の幸せを願う縁起ものの料理でもあります。ですから、五穀豊穣、家族の安全と健康、子孫繁栄の祈りを込めた、海の幸、山の幸を豊富に盛り込んだものなのです。

出典:紀文のお正月

おせち料理の起源は紀元前であるとされており、かなり昔から日本人の生活に浸透している食文化となっています。日本人にとっては年始めに縁起物を食べることはごく自然なことかも知れません。

開運薬膳火鍋

チャイナルーム
チャイナルーム

おせち料理は日本人にとって大切な食べ物ですが、おせち料理と同じように年初めに縁起を担ぐということで、趣向を凝らしたメニューが提供されています。それは「【中秋の名月/高級食材】トリュフを尽くした中国料理とは?」でご紹介したチャイナルームの「開運薬膳火鍋」です。

火鍋は専門店もある程のポピュラーな中国料理で、「食薬同源」や「医食同源」の思想に基づき、唐辛子や花椒をふんだんに使った辛くて刺激的な鍋料理です。

この火鍋がどうして開運薬膳火鍋として提供されるようになったのでしょうか。

定番となった火鍋

開運薬膳火鍋
開運薬膳火鍋

マーケティング コミュニケーションズ アシスタント マネージャー 藤井三喜氏は「火鍋のご提供は今年で7年目を迎え、毎年いらっしゃるお客さまもいるなど、定番となっている。毎年テーマを設けており、昨年は雲南をテーマとしたキノコ火鍋であった」と火鍋について説明します。

これを受けてチャイナルーム料理長 中里卓氏は「以前、勤めていたホテルで火鍋をご提供したことがあり、お客さまに喜んでいただけたので、チャイナルームでも是非召し上がっていただきたいと考えた」と想いを語り、「火鍋が今年最初のフェアだったので、召し上がるお客さまに1年を幸せに過ごしていただきたいという願いを込めた。開運につなげられるようにと7ヶ月もアイデアを絞り、開運薬膳火鍋を完成させた」と、経緯を述べます。

加えて、「中国に行って、庶民的なものから高級なものまでありとあらゆる火鍋を食べて研究した。鍋は陰陽に見立てて仕切った太極鍋で、本場中国と同じものを探して使っている」と補足します。

食べるエステ・食卓のサウナ

今年の状況を訊くと、藤井氏は「1月7日から開始して、ディナーでは半分のお客さまが注文するなど、早速ご好評いただいている」と説明し、「都内で火鍋を食べられるホテルは、他にないのではないか」と希少性があるとします。

確かに、火鍋は町場の中国料理店ではよく見掛けられますが、ホテルではそうそう見掛けられません。それも、7年前から始めたということを考えれば、先見の明であったと言えるでしょう。

火鍋の特徴を訊くと、藤井氏は「火鍋は<食べるエステ・食卓のサウナ>。コラーゲンがたっぷりで美容にいい。身体が温まり、汗を流してデトックス効果もあるので、今流行している温活にも通ずる」と答え、マーケティング コミュニケーションズ アシスタント マネージャー 長田彩子氏は「開運薬膳火鍋に使われている食材は全て縁起物。昨年までの悪いものをすっきりと流して、新しい一年を迎えていただきたい」と補足します。

土鍋
土鍋

藤井氏は「途中でコラーゲンを追加するので、さらに味がマイルドになって、2度楽しめる。最後は旨味が凝縮されたスープを使って、土鍋で麺を作ってご提供する」と最後まで飽きさせない工夫を施しているとし、長田氏は「デザートは飴細工で作ったドラゴンエッグ。木槌で割っていただくと、中から桃饅頭が現れる」と面白い演出があるとします。

来年以降も続けたい

他のこだわりを尋ねると、中里氏は「コラーゲンは鶏と鴨を丸1日煮込んで作っている。枸子の実、ナツメ、干し貝柱、干し椎茸も加えて、複雑で深い旨味に仕上げている」と述べます。

これから先について訊くと、「お客さまが1人で1つの鍋を召し上がるスタイルを考えている。円卓に食材が並んでおり、それぞれが好きに取って食べる回転火鍋が、台湾や北京で流行している」と最新の火鍋事情を説明し、「開運薬膳火鍋は大変ご好評いただいているので、来年以降も続けたい。おいしいものを食べていただいて、幸せにもなっていただければ嬉しい」と意気込みを語ります。

中里氏が自信を持って提供する開運薬膳火鍋の縁起物は以下の通りです。

恋愛良縁:奈良県産大和肉鶏とコラーゲンスープジュレ

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燃え上がる恋をするには、「火」の"気"をもつ鶏肉のコラーゲンがたっぷり溶け出たスープの美肌効果が恋愛成就を後押し。

健康祈願:白菜、ニラ、ヒラタケ、きのこ、凍り豆腐、春雨

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大地の"気"(パワー)を根からたくさん吸収した野菜をたっぷりと食べられる火鍋で健康を祈願。

立身出世:寒ブリ

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冬の味覚、寒ブリは出世魚。脂をたっぷり蓄えた寒ブリを食べて仕事運上昇。

家庭円満:北海道産鱈の白子、薬膳タツノオトシゴ

ぷっくりと大きくなった白子は子宝の象徴。つがいで向き合いハートの形で泳ぐタツノオトシゴは、夫婦円満のシンボル。白子のたんぱく質、コラーゲン、薬膳タツノオトシゴの滋養強壮成分はカラダにも嬉しい。

不老長寿:車海老

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ヒゲが長く、腰が曲がった姿から不老長寿と言われる海老。鮮やかな赤色は開運カラー。

金運上昇:羊ロース、北海道産牛ロース

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風水で肉はビジネス運、金運の象徴。上質な羊・牛ロースでおいしく金運アップ。

商売繁盛:川藻と豚肉入り水餃子と海鮮つみれ

中国語で"儲ける"を意味する単語「発財(ファーツァイ)と同じ発音を持つ"もずく"と、中国で縁起物とされる豚肉をたっぷりとお金の形を意味する水餃子につめて、2015年の商売安泰は間違いなし。

不老長寿:桃饅頭 ドラゴンエッグとともに

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中国で不老長寿のシンボルとして知られる"桃"を饅頭にした中国式開運デザートを、中国古来、縁起が良いとされている龍にちなみ、飴で作った直径約30cmのチャイナルーム特製の"ドラゴンエッグ"に入れてお出しします。新たな年の幸せを祈願して木槌で勢いよくドラゴンエッグを割れば、開運宴会が盛り上がること間違いありません。

火鍋が日本文化へ

グランド ハイアット 東京はCSR活動「ハイアット スライブ」に力を入れていることでも有名で、東日本大震災直後から継続的な支援活動を行っており、宿泊料金の一部を寄付する宿泊プランを販売したり、宴会利用の売上金を寄付したり、ホテルスタッフがボランティア活動をしたりと、精力的に活動を行っています。クリスマス発表会の時には、クリスマスケーキやクリスマスプランの説明よりもチャリティーイベントの紹介に時間を割いていることを考えると、熱意の程が分かるでしょう。

こういったグランド ハイアット 東京の理念や中里氏が述べる「お客さまの幸せを願う」という想いがあれば、日本のしゃぶしゃぶの起源になったとも言われる火鍋が開運薬膳火鍋へと昇華され、縁起を大切にする日本の食文化に溶け込めるのではないでしょうか。

情報

詳しくは公式サイトをご確認ください。

参考

チャイナルームについてはレストラン図鑑にも詳しく掲載されていますので、ご参考にどうぞ。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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