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まるで迷路な新潟駅。お乗換えはランダム発車のミステリー。不慣れな旅行者は要注意です。

鳥塚亮えちごトキめき鉄道代表取締役社長。元いすみ鉄道社長。

先月、ネットに「新潟駅がよくわからない。」「発着番線情報量ほぼ0」などという書き込みが多く集まり大きな話題になりました。

いったいどういうことだろうかと気になった筆者は、実際に新潟駅へ行ってみて、自分で体験してみることにしました。

まず、新潟駅の状況です。

現在、在来線の高架化工事が行われていて、順次地表の線路が新幹線と同じレベルに上がって来ています。

駅構内がわかりづらいというのは、この在来線ホームの高架化工事で、すでに高架化されたホームと、まだ地表にとどまっているホームが存在するためで、これが電車のランダム発車の原因になっています。

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▲2017年4月の新潟駅在来線ホームです。

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▲2018年7月になると線路がすべて撤去されています。

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▲現在の新潟駅旧地上ホーム跡です。

ホームの跡も撤去され、高架線路用の支柱が立ち始めています。

やがてここに高架ホームが増設され、また、駅ビルが作られていくことになるのでしょう。

で、現在の新潟駅は2015年の時点で6本あった在来線の線路のうち4本が高架になり、2本が地上に残っている状況なのです。

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▲地表ホームの8、9番線。(2017年4月)

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▲他の線路は撤去されてしまいましたが、8、9番線だけは今もポツンと残されています。(2018年7月)

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▲JRの案内に掲載されている現在の新潟駅構内図です。

この図を少し加工してみました。

青い四角で囲ったところが新幹線ホーム(11~14番線)と在来線ホーム(2~5番線)へ上がるコンコースです。

そして右上の赤い矢印を付けたところが8、9番線ホームです。

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新幹線を降りて在来線乗換改札口を出ると、高架化されて同じレベルになった2~5番線は、すぐ隣りの階段を上がるだけですから全く問題ありません。ところが、今でも地上にとどまっている8、9番線はどこかというと・・・

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右へ曲がって250m進めと書かれています。

250mって、渋谷駅で山手線から埼京線のホームに行くぐらいの距離でしょうか。結構ありますよね。

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では、その8、9番線まで行ってみましょう。

何だか心細い通路を進みます。

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突き当りを左ですね。

ここは地上ホーム時代線路をまたぐ跨線橋だったところ。

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その突き当りに8、9番線への階段があります。

ここまでで約150m。

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階段の上には「ここから100m」の表示が。

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階段を降りてこの先が8、9番線ということです。

さらに、新潟駅がお客様を混乱させている原因は、これだけ離れたところにある8、9番線を発車する電車が、ランダムであること。

通常はこれだけ離れたホームであれば「○○線のりば」として、例えばこの駅から分岐する別の路線の専用ホームであったりすると思いますが、新潟駅の場合は2~5番線と8~9番線とで、同じ方向に行く電車がランダムに発車しているのです。

一例をあげます。

【新津方面:信越本線・磐越西線】

16時台 :09-3番線 28-2番線 38-8番線

17時台 :01-9番線 08-2番線 21-3番線 40-2番線 56-9番線

18時台 :04-8番線 15-3番線 30-3番線 51-9番線

【新発田方面:白新線・羽越本線】

16時台 :02-9番線 20-9番線 42-3番線 58-2番線

17時台 :21-8番線 44-3番線

このように電車によって上のホームから発車したり下のホームから発車したり。

まあ、上野駅もそういえばそうなのですが、ホームが離れている距離が違います。

これではお客様が迷うのは無理もありませんね。

毎日使っている人ならまだしも、不慣れな旅行者ではほぼ確実に困惑します。

これが、ネット上で話題になっていた「新潟駅ランダム発車」ということになります。

さらに混乱させるのは

発車ホームが離れているのは理解しました。

ランダム発車ですから同じ方面、同じ路線の列車でも発車番線が違うということも理解しました。

でも、新潟駅にはさらにお客様を混乱させる大きな問題があるのです。

それがこれです。

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2枚の駅構内の案内図です。

お気づきになられますでしょうか?

実は貼ってある場所によって上下が反対になっているのです。

上の案内図は南口が上ですが、下の図では万代口が上になっています。

「現在位置」から見て南が上だったり北が上だったり、その方がお客様にはわかりやすいだろうという判断なのでしょうが、そういうものなのでしょうか。

というのも、旅行者にとって新潟駅は方向感覚が無くなる名所のような所で、筆者も以前から新潟駅に到着すると、一瞬方向が分からなくなる時があります。その理由は到着する列車の進行方向にあります。

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簡単に地図に示してみましたが、上越新幹線で新潟に到着する場合は左方向から、つまり西からの到着になります。

ところが、在来線である信越本線で到着する場合、右方向から、東から到着するのです。

長岡方面、あるいは東京方面から新幹線で到着するのと、信越線で到着するのと正反対の方角から列車が駅に進入してくるという構造は他の都市では例がありませんので、筆者は以前から新潟駅に到着すると一瞬方向感覚が麻痺することがあります。まして、乗換となると「さて、どちらでしょうか?」となるわけで、いつも旅をしている筆者でさえそうなのですから、不慣れな旅行者ともなれば、混乱するのは必至ではないかと思うのです。

新潟駅のもう一つの問題点:バリアフリーが貧弱

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高架化工事中で連絡通路がこんな仮設みたいな状態ですから仕方がないのかもしれませんが、新潟駅構内には階段ばかりで、例えば万代口の改札を通って連絡通路を渡るところにはエスカレーターがありません。

県庁所在地の玄関口の駅で、改札口を入って新幹線ホームへ向かう連絡通路に上りのエスカレーターすらない状況はちょっとお寒いと思います。

もちろん階段裏に小さなエレベーターはありますが、今の時代はガラガラとスーツケースを引く旅行者も多く、ベビーカーを押す家族連れもたくさんいる中で、十分な設備とは言えません。

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改札外にはなりますが、駅の南北を結ぶ通路は各所にこんな階段があり、スロープもありません。

もちろんはるか遠回りをすれば駅の外のエレベーターを利用することは可能ですが、バリアフリーのバリアというのは段差のことだけではありません。遠回りをしなければならないことがすなわちバリアなのですが、法律にはそんなことはかかれていませんから、コンプライアンスは満たしているということなのかもしれません。

大きな荷物を引いたりベビーカーを押したりして新潟駅構内を歩くとき、バリアに阻まれないようにお目当ての電車にたどり着くことは、ちょっとしたミステリーツアーだと思います。

いくら工事中とはいえ、新潟県の玄関口である新潟駅構内は、ちょっとお寒い状況なのではないかというのが筆者の感想です。

現在万代口からは地表を通る通路が建設中ですので、もう間もなくエレベーターはもちろん上下エスカレーターがある通路が出来上がると期待していますが、それまでの間、新潟駅構内のミステリーツアーはまだまだ続きますので、帰省やご旅行で新潟駅を通られる際は、十分にご注意いただきたいと思います。

新潟駅の最新設備

ということで、新潟駅の使い勝手の悪さばかり取り上げてしまいましたが、実は、新潟駅には最新の設備が設けられています。

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上越新幹線から酒田、秋田方面への羽越線の特急列車「いなほ号」が、実は同一ホームで乗り換えができるのです。

以前、九州新幹線の新八代-鹿児島中央間が部分開業していた時代、新八代駅で新幹線「つばめ」と在来線の特急「リレーつばめ」が同一ホームで乗り換えできていましたが、ここ新潟駅では「いなほ」と上越新幹線との乗り換えが同じホームの反対側同士で可能になっています。

ホームにはホームドアの他、自動改札機が設けられて、一応新幹線と在来線との間に境界はあるのですが、一度階段を降りて、改札を通り、再度登るというような手間を掛けずに、同一ホームで乗り換えができるという設備はなかなか画期的です。

新潟駅で新幹線から特急「いなほ」お乗り継ぎの皆様は、ぜひ、お試しいただきたいと思います。

ただし、在来線普通列車へのお乗り継ぎには十分にご注意ください。

皆様どうぞよい旅を。

※本文中に使用しました写真はすべて筆者撮影です。

えちごトキめき鉄道代表取締役社長。元いすみ鉄道社長。

1960年生まれ東京都出身。元ブリティッシュエアウエイズ旅客運航部長。2009年に公募で千葉県のいすみ鉄道代表取締役社長に就任。ムーミン列車、昭和の国鉄形ディーゼルカー、訓練費用自己負担による自社養成乗務員運転士の募集、レストラン列車などをプロデュースし、いすみ鉄道を一躍全国区にし、地方創生に貢献。2019年9月、新潟県の第3セクターえちごトキめき鉄道社長に就任。NPO法人「おいしいローカル線をつくる会」顧問。地元の鉄道を上手に使って観光客を呼び込むなど、地域の皆様方とともに地域全体が浮上する取り組みを進めています。

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