航空会社で預けた荷物が出てこない! その「傾向と対策」を考える

空港チェックインで預けた荷物。さあ、無事に到着地で出てくるでしょうか?

筆者は先月の末からヨーロッパを出張し、一度帰国したものの、すぐ次の出張で現在台湾に滞在中です。

ヨーロッパへは友人と一緒でしたが、お互いに別ルートで現地で落ち合うコースでした。

そして現地で合流した時に友人から「成田で預けた荷物が着かなかった。」という報告が。

夕方到着した便で荷物が未着になり、その晩の午前1時にホテルまで届けられたとのことでしたので、業界人である筆者としては航空会社のデリバリーサービスはずいぶん頑張ったなあと思いましたが、ふつうの人はとても不安になると思います。

では、どうすれば目的地での手荷物未着事故を防げるか。

まず、原因分析から始めてみましょう。

荷物が未着になる理由にはいくつかのパターンがあります。

荷物が未着になる理由にはいくつかのパターンがあって、大きく分けて次のようなことが考えられます。

1:出発地で搭載されない

空港カウンターで預けた荷物が自分の乗る飛行機に搭載されない原因とまず考えられるのは、

・セキュリティーチェックに引っかかる。

預けた荷物の中で怪しいものがあると搭載されません。

最近ではほとんどの空港で「インライン」という制度がとられています。

今でも田舎の空港などへ行くと、カウンターの手前にX線の機械があって、まずそこで検査を受けてからカウンターで行先タグを付けてもらいます。

このシステムだと中身に怪しいものが入っているとその場で開封が求められ、取り出すことができますが、インラインシステムというのは、カウンターで行先タグを付けてもらって、ベルトの上を流れて行った「その先」にX線の機械があって中身を検査するシステムです。

チェックインカウンターで荷物を預けた後、航空会社の職員から「あちらでしばらくお待ちください」と流れて行った荷物の先で待機するように指示されたり、みどりのランプが点灯するのを確認するように言われたりする場合がこれです。

例えば、「中身が怪しい」ということで、赤ランプがついて、その場にお客様がいらっしゃらないと中身の確認ができません。

そういうシステムの空港では、チェックインカウンターで荷物がきちんと流れて行ったかの確認を求められます。

もし、その場で立ち会わず、お客様だけ先にゲートへ進んでしまったりすると、その荷物を飛行機に搭載することはできなくなります。

「◎◎便でご出発予定の××様。お荷物のことで確認事項がございます。カウンターまでお戻りください。」

このようなアナウンスを聞かれた方も多いと思いますが、これがそういうことになります。

通常は最初の検査は機械が自動で行い、そこで怪しいとされた荷物は人間が機械で検査します。

そして、中身に不審物があると、搭乗口横まで持ってきて、乗客名を呼び出されて、検査官立会いの下でその場で開封検査が行われます。

でも、そこまでやってくれるのは時間的に余裕がある場合のみで、ぎりぎりのチェックインでは単純に積み残しになる可能性があります。

・タグオフ

カウンターで荷物に取り付けた行先タグがベルトで運ばれていく途中に取れてしまうことがあります。

これを「タグオフ」と言います。

このために、カウンターではタグを取り付ける際に、小さな券片を外して別の場所に取り付けます。

バーコードが書かれた小さなシールをスーツケースの別の場所に貼りつける行為を見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。

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この写真の赤丸の部分です。

タグ本体から外したシール片がカバンに付けられています。

現在の大空港のベルトシステムはほとんどが自動で、いろいろな角度からカバンにセンサーを当てて行先のバーコードを読み取ることができるシステムになっていますから、たとえ行先タグ本体が取れてしまったとしても、このミニ片があれば、お客様が乗る航空便の搭載場所まで自動的に運ばれます。ただし、そこに更なる次の関門が待ち構えていて、その関門を突破しなければ荷物は搭載されません。

その関門というのは、搭載する係員が荷物のバーコードをスキャナーにかざして再確認することです。

搭載の係員にとっては、目の前のベルトに流れてきた荷物ですが、便名と行先があっていればなんでも載せてよいというものではありません。

ここでもう一度スキャンして、搭載可能な荷物かどうかを確認してから搭載することになります。

ですから、そこにタグオフの荷物が流れてきた場合、搭載することができなくなります。

この場合、搭載係員は航空会社の職員に無線で連絡を入れて職員を呼びます。やってきた航空会社の職員は荷物をいろいろ調べてシール片があればバーコード、荷物の名前などをチェックして乗客を特定します。そして、乗客を特定できれば、新しいタグを取り付けて、その荷物は搭載されます。

新しいタグの半券は、搭乗口、あるいは乗り込んだ飛行機の中で呼び出されて、事情を説明してそのお客様にお渡ししますが、別に半券が無ければ引き取れないというものではありませんので、お客様としてはなくても大丈夫です。

ただし、ここでもそうですが、こういう一連の作業には時間がかかりますので、カウンターにぎりぎりの時間に手続きをされると対応できなくなる場合があります。国際線の場合、出発の1時間前までに荷物を預けるように案内されているのはそういうことなのです。

2:乗り継ぎ地で搭載されない

さて、出発地で荷物が同じ便に搭載されない可能性はだいたい以上ですが、一番トラブルとなるのは乗継便がある場合です。

冒頭申し上げました筆者の友人のケースも乗り継ぎでした。

「ヘルシンキ経由でも乗り継ぎ時間が50分あるので大丈夫だと思っていた。」

彼はそう言っていましたが、確かに普通の人ならそう考えますね。

プランの段階で筆者がアドバイスできていれば、手荷物未着などという不安な気持ちになることも無かったろうと考えると、友人として大変申し訳ないことをしたと反省しきりですが、ではなぜ彼が「50分あるから大丈夫だろう」と考えたかというと、空港には乗り継ぎ時間というのが設定されています。

これをMCT(Minimum Connecting Time)と呼ぶのですが、各空港ごとに設定されています。

ヘルシンキの場合は、最小で25分。

これはヨーロッパ内の乗継便の最低接続時間で、乗り継ぎのタイプによっていろいろ時間設定されていますが、日本からの便は到着の際に乗継であってもヨーロッパへ入るためのパスポートコントロールがあります。

でも、ヘルシンキの場合、パスポートコントロールがあってもMCTは40分ですから、彼が「50分あれば大丈夫だと思った。」というのはもっともなことなのです。

事実、人間は予定の便に乗り継ぎができていますが、荷物が乗り継げなかったのです。

対策

ではこのMCTについて筆者の見解を述べさせていただきます。

MCTというのは最小接続時間です。

つまり、すべてのことがうまく行って、何とか達成できる時間がMCTです。

例えば、到着便が集中してパスポートコントロールに行列ができていたらどうしましょう。

成田空港ではよくあることですが、混雑で離陸まで予定以上の時間がかかり、出発が遅れます。

すると、当然ですが目的地への到着も遅れます。20分、30分の遅れなどザラにあります。

また、海外旅行ではよくあることですが、自分の体調が思わしくなくなって、トイレに10分籠ったり、急いで歩くことができなかったりすることもあるでしょう。

だから、そういう時のためにMCTを基準にしてプランを組んではいけないのです。

筆者の場合、乗継便を自分で計画を立てるとしたら最低でもMCTの倍の時間を見ておきます。

その空港のMCTが60分であれば2時間ぐらい見ておけば、たとえ日本からの便が1時間遅延しても大丈夫だからです。

MCTの盲点

ではなぜこのようなMCTが定められているのでしょうか。

その理由は各国間で空港ごとに熾烈な競争があるからです。

日本人も最近では少しずつ理解される方が増えてきていますが、世界中の航空業界は競争の波にさらされています。

これは何も航空会社だけの問題ではなくて、空港そのものも競争になっているのです。

不便な空港、使いづらい空港というのは、世界から相手にされなくなっています。

成田空港のように門限が決まっていて、それまでに飛行機が出発や到着できなければ、「欠航や引き返しになりますよ。」なんて空港は世界的に見たら欠陥空港で使いづらくてしょうがないというのが常識です。

そういう中で、航空会社は自社の拠点となる空港の管理局や運営会社と共同で、自分の空港が如何に便利かをアピールしているのがこのMCTなのです。

だから、どの空港も必死になってMCTの数字の小ささをアピールする傾向にあります。

するとどういうことが起きるのかというと、航空会社や旅行会社の航空券販売システムにこのMCTの数字が組み込まれます。

すると、例えば、

TYO(東京)-DUS(デュッセルドルフ)、TYO-HAM(ハンブルク)、TYO-MAD(マドリッド)など、直行便が少ない行先を検索した場合、一番早くて一番安い乗継便がポン!と表示されるようになります。

そして、その乗継便の検索の基準がMCTですから、そういう旅行プランの立て方だと、「必ず」と言ってよいほどトラブルに巻き込まれることになるのです。特に航空券の価格重視で検索すると、乗り継ぎ時間など気に留めなくなりますからご注意ください。

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今回ドイツから帰国した時の筆者のカバンに付けられたタグ。

ハンブルクからワルシャワ乗継のポーランド航空にお世話になりましたが、ワルシャワ空港のMCTは40分ですが、筆者は2時間の余裕を見ていました。案の定、ハンブルクからの出発が30分ほど遅れ、ワルシャワでの実質乗り継ぎ時間は1時間半に。でも、国際線の場合は搭乗開始が45分程度前というのがほとんどですから、1時間半と言っても待ち時間は45分です。お土産物屋さんをのぞいているうちに時間が経ちました。

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▲もちろん、荷物もこの通り、ちゃんと成田で出てまいりました。

これから夏休みのご旅行を計画される方へ

そろそろ夏休みの計画をされている方もいらっしゃると思います。

そういう皆様方へ、荷物が未着にならないためのアドバイスをさせていただくとすれば・・・

1:MCTに左右されず、国際線の乗継は最低でも2時間以上。

トランジットの場合、空港内でウインドーショッピングしてるだけでもあっという間に時間が経過します。

できるだけゆったりとした乗り継ぎを心掛けましょう。

MCTでの接続の場合、到着便の飛行機を降りたところであなたの名前を書いたボードを持った係員がいて、「走ってください。」と言われることもあります。そうなると荷物の接続は絶対に無理です。なぜなら、あなたは走れますが、荷物は自分では走れませんから。

2:空港には早めに到着する。

荷物を預ける場合は特にですが、ぎりぎりに到着すると、前述のセキュリティーやタグオフの問題を含め、何か問題が発生した時に対処ができなくなります。ギリギリに空港へ到着して、「早くしろ!」と怒鳴っている人をときどき見かけますが、過去の経験上そういう人は要注意人物と見られますから、いくら怒鳴っても早くしてくれることはありません。

最近では、機械がランダムに要注意人物をマークして、セキュリティーも含め、時間をかけてじっくりと検査される対象になることもあるようですから、とにかく時間に余裕を持って。筆者も常に自分自身で気を付けるようにしています。

3:怪しまれるものは入れない。

カバンには怪しまれるようなものは入れないことですね。

怪しまれるかどうかは爆発物に見えるかどうかだと思いますが、意外なものも要注意です。

例えばアルミホイルにくるんだ物。

X線で中身が見えませんから、もしかしたら開封検査の対象になるかもしれません。

おみやげ品の和菓子。

意外ですが羊羹やあんこなどのペースト類は、自動の検査機ではじかれる傾向があります。

昔の映画で見た気もしますが、粘土のようなものに導火線を取り付けるあれです。

たぶん爆弾にはそういうものもあるのでしょう。

味噌などもそれに当たります。

現地の日本人にお土産に持って行く時には注意が必要です。

4:乗継便はできるだけ同じ会社を使いましょう。

乗り継ぎのコネクションが厳しい場合、次の便の予約の取り直しであったり、荷物の搭載便変更であったり各種作業が必要になります。

到着便と出発便が同一航空会社であれば、その辺りのデータのやり取りがスムーズですから、遅れている場合は飛行機の到着前から新しい便への取り直しなどの対応をしてもらえますが、別々の航空会社だと当然MCTも違ってきますし、乗り遅れたりした場合の振り替え便が別のターミナルだったり、連絡も難しくなる場合があります。

乗り継ぎで旅行する場合は、できるだけ同一航空会社の便をお勧めします。

それが無理であれば、同じアライアンスの航空会社にしてください。

比較的スムーズです。

一番やってはいけないことは別ブッキングです。

インターネットで安い切符を探していると、現地の航空会社の最安値が見つかります。日本からの予約とは別にこういう予約の取り方をされる方も多いと思いますが、これだと2つの便を別々に予約していることになりますので、遅れたりした場合の接続の保証はありません。

別ブッキングというのは連絡輸送の契約になっていませんので、到着遅れの理由がたとえ航空会社によるものであっても面倒を見てもらえることはありません。

あと、中身には貴重品などを入れてはいけないことはもちろん、アメリカ方面へ行かれる場合はTSAの基準がありますので路線によってはカバンに鍵をかけることが許されません。

今回はそのお話はいたしませんでしたが、つまり一歩日本を出ると、日本の常識は全く通じないということだけは確かですから、皆様充分にお気を付け下さい。

ということで、皆様方の快適なご旅行の一助になればと思い、預ける手荷物についての注意点を挙げてみました。

どうぞよいご旅行をお祈りいたしております。

※本文中に使用しました写真は筆者撮影です。