「トヨタ社長豊田章男氏がワクチンは人口削減のための遅効性の毒と発言した」との個人ブログのデマが広がるというニュースがありました.毎日新聞の速報でも流れ話題となっているようです.この記事がトレンドに載ったことによって,そこそこ話題になったようです.

フェイクニュースの詳細は先にあげた記事を見ていただくとして,これに対してこのフェイクニュースに騙されている人が多数いることを前提としたツイートが多く見られました.

実際にこのフェイクニュースの影響は大きかったのでしょうか?

最初にこの内容がツイッター上に現れたのは,Yahooを模したアカウントであるYqhooのツイートですが,何気にこのツイートは8月3日10時現在で66回しかリツイートされていません.とても影響力があったとは言えない気がします.それ以外にもこの記事が真実だとして拡散されたツイートはほとんど見つかりませんでした.

また,ワクチン懐疑派に大いに広がったかと言われると特にそういう傾向もなく,ワクチン懐疑派のユーザによるツイートを確認してもあまり拡散されていないばかりか,

トヨタは去年6月に職場接種させている.DS企業だ.

と言うツイートまである始末です.まさかのワクチン懐疑派にまでフェイクニュース扱いです

というわけで,今回のフェイクニュースの拡散はかなり限定的だったと見られますが,一応トヨタ,DS,ワクチンなどを含むツイートがどのくらいあったのか調べてみました.

一時間ごとのツイート数はこんな感じです.

1時間ごとのツイート数(筆者作成)
1時間ごとのツイート数(筆者作成)

すでに収束した感もありますね.

一番盛り上がったタイミングで1時間当たり5000に満たないので炎上としてもかなり小規模です.

さて,気になるのはどのくらいこのフェイクニュースに騙された人がいたかですね.ワクチン懐疑派にまでフェイクニュース呼ばわりされていたので,あまり騙されていた人はいないのではないかと思いつつ調べてみました.手法は根性マイニング(筆者が目で見て頑張る)を利用しました.ランダムに抽出した100件のツイートを分類しどのような内容のツイートが含まれていたかを調べています.

その結果がこちら.

根性マイニングの結果(筆者作成)
根性マイニングの結果(筆者作成)

その結果,約半分がフェイクであることを前提としたツイート内容となっており,46%が注意喚起記事を拡散したツイートでした.元記事が正しい前提のツイートや,元記事を拡散したツイートは合計でも3%しかありませんでした.

もうちょい頑張れば正確な値が出ると思いますが,この記事を信じたツイートはごく一部であると言えるでしょう.

そのごく一部の中には

他の影響力ある方々も続いてほしい。 どうかここで止めないでほしい!

や,

これはデクラスだ

といったツイートが含まれていました.ちなみに,デクラスとは機密情報の公開のことのようです.また新たな専門用語を覚えてしまった.

一方で,8月2日19:50ごろに注意喚起の記事が出ていますので,その影響も大きそうです.そこで,この記事の影響を排除するため,8月2日19:00までのツイートについて同様に根性マイニングを行ってみました.

8月2日19:00までのツイートに対する根性マイニング結果(筆者作成)
8月2日19:00までのツイートに対する根性マイニング結果(筆者作成)

この結果,元記事を信じたツイートや元記事の拡散の割合は6%と増えたものの,全体としてはフェイクニュースであることを疑ったりフェイクであることを確信したツイートがほとんどでした.8月2日の18~19時くらいが一番盛り上がったタイミングですが,その時点ですでに多くの人がフェイクであると確信していたため,「このフェイクニュースを信じて拡散した人が多かった」とは言えなそうです.どうやらワクチン懐疑派の人たちがこのフェイクニュースを大量に拡散していて危険な状態だったわけではなさそうです.

トレンドに載ったタイミングは分からないため難しいですが,流れとしてはデマ記事を見たワクチン懐疑派の一部が拡散したものを見て,それについて懐疑的なツイートが増加したことがトレンド入りに寄与した可能性が高いのではないでしょうか.

ちなみに,ワクチン懐疑派のアカウントを調べても大概がこの記事についてはフェイクだとツイートしているようなので,「反ワクがこの記事を拡散している!」というのもデマになりかねないのでご注意ください.

というわけで,あからさまなフェイクニュースが拡散したように見えたけど,実際は「フェイクニュースが拡散しているという情報が拡散している」という状態だったことが分かりました.

フェイクニュース絡みではよくあることですが,「こんなフェイクニュースに騙された人がたくさんいる!」と思い込むとそれはそれで社会的混乱をもたらす可能性がありますので,フェイクニュースが拡散したというニュースを見た場合も冷静に捉えたほうがよいという事例がまた一つ増えたといったところでしょうか.

もちろんこれは,フェイクニュースを否定する情報を拡散してはいけないという意味ではないので,その点はご了承ください.

元々の記事がどういう意図で作られたのかはわかりませんが,フェイクニュースは基本的にあまり社会的に良いものではないと思いますので,作られることもなければ,拡散もしないほうが良いですよね.

今回のフェイクニュースもとんでもないものを盗んでいきました.根性マイニングに使った私の2時間です.