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藤井聡太名人への挑戦権争いは一騎打ち。残留争いは混戦模様ー第82期順位戦A級は佳境へー

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
記事中の画像作成:筆者

 本日(1月31日)、第82期順位戦A級8回戦一斉対局が行われます。
 現在、藤井聡太名人(21)への挑戦権をめぐる争いでは、豊島将之九段(33)が6勝1敗でトップに立ち、菅井竜也八段(31)が2敗で追いかけています。

 一方、残留争いでは、広瀬章人九段(36)と斎藤慎太郎八段(30)が2勝5敗と苦しい状況にありますが、3勝勢も4名いて熾烈な争いが続いています。

 7回戦の振り返りと8回戦の展望について、ここから解説していきます。

7回戦まで終了した
7回戦まで終了した

挑戦権争い

挑戦の可能性が残るのは表の4名。ほぼ上位2名に絞られている。
挑戦の可能性が残るのは表の4名。ほぼ上位2名に絞られている。

 7回戦では、全勝で首位を快走していた豊島九段に土がつきました。
 広瀬九段との一戦は7回戦のラストに行われ、そこまでに豊島九段を追いかける棋士が相次いで敗れていたため、豊島九段はこの一戦に勝てばほぼ挑戦権を手に入れるところでした。

 豊島九段は依然として有利な状況にありますが、最終戦に5勝2敗の菅井八段との直接対決が待ち受けています。
 その直接対決があるため、挑戦権の行方は一騎打ちと言える状況です。

 7回戦で菅井八段は、渡辺明九段(39)と対戦して完敗を喫しました。中盤で致命的な見落としがあり、挽回の余地がありませんでした。

 タイトル戦など対局が多い中、菅井八段は調子を崩しているようにも見えます。調子を取り戻す一番の良薬は白星です。8回戦での勝敗は、菅井八段にとって大きな意味を持つでしょう。

 最終戦に直接対決がある関係で、3敗の2名に挑戦の可能性が残るのは、8回戦で豊島九段と菅井八段の両者がいずれも敗れて自身が勝利する場合のみです。

残留争い

6名での争いに。降級は2名。
6名での争いに。降級は2名。

 7回戦では、2勝4敗の4名中、3名が白星を挙げました。1勝だった広瀬九段も勝利し、残留争いはますます混迷をきわめています。

 中村太地八段(35)との直接対決に敗れた斎藤八段が降級に最も危ない位置に立たされています。一方、勝利した中村八段は降級圏から脱出しました。
 また、佐藤天彦九段(36)は直接対決を制して残留の可能性が高まりました。敗れた佐々木勇気八段(29)は残留争いに巻き込まれてしまいました。

 稲葉陽八段(35)は、永瀬拓矢九段(31)との対戦で振り飛車を採用して、対戦成績で分の悪い相手から貴重な白星を手に入れました。3勝勢の中で一番順位が上なので、残留を大きく引き寄せた一勝でした。

 混戦になると順位がモノを言ってきます。
 2勝の2名は3勝の4名よりも順位が上なので、勝てば降級圏から脱出できる可能性が高いです。
 一方、前期昇級組の中村八段と佐々木八段にとっては、順位の影響が大きい展開は嫌なところでしょう。

挑戦&降級が決まる可能性も

 ここで、本日行われる対戦カードをご覧ください。

△渡辺九段ー▲中村八段

▲広瀬九段ー△稲葉八段

▲佐藤九段ー△菅井八段

▲豊島九段ー△斎藤八段

△永瀬九段ー▲佐々木八段

 豊島ー斎藤戦の結果は、挑戦権と残留争いに大きな影響を与えるでしょう。
 また、広瀬ー稲葉戦が残留争いの中で直接対決となります。

 挑戦権争いでは、「豊島勝ち&菅井負け」の場合に挑戦が決まります。
 残留争いでは、2勝の広瀬九段と斎藤八段が敗れると、周囲の結果によっては降級が決まる可能性もあります。

 果たしてどのような展開になるか。ご注目ください。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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