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順位戦はフィナーレへー第79期順位戦B級1組~C級2組最終戦特集ー

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
藤井聡太二冠は最終戦の前にB級1組への昇級を決めた(写真:森田直樹/アフロ)

 第79期名人戦・順位戦は、B級1組~C級2組の各クラスで最終戦を残すのみだ。

 藤井聡太二冠(18)や山崎隆之八段(40)など1戦を残して昇級を決めている棋士もいる。

 各クラス最終戦を迎えたところでの状況と注目ポイントをまとめた。

 今回は一斉対局の開催日が近い順に解説していく。

C級2組(3月5日)

記事中の画像作成:筆者
記事中の画像作成:筆者

 順位戦ウィークのスタートを飾るのはC級2組。

 2日間に分けて行われた9回戦は上位陣総崩れの波乱となった。

 全勝の黒田尭之四段(24)は初黒星を喫したものの、他局の結果で昇級が決まった。

 1敗の2名のうち、服部慎一郎四段(21)は大熱戦の末に敗れて大きく後退。

 出口若武四段(25)は苦戦を跳ね返して勝利し、最終戦に勝てば昇級となる。

 最後の昇級枠をめぐる争いも熾烈だ。

 1月28日の対局結果によって自力(※)となった佐々木大地五段(25)だったが、2月4日に行われた9回戦で痛恨の黒星を喫して脱落した。

 代わって自力の権利を得たのが大橋貴洸六段(28)。タイトル挑戦に絡む活躍を見せている実力者が昇級をつかめるか。

 順位上位の2敗勢が次々と敗れ(筆者も含む…)、4番手に浮上したのは梶浦宏孝六段(25)。こちらも昨年の第33期竜王戦決勝トーナメントでベスト4に残る活躍をみせた実力者だ。最終戦に勝って、出口四段か大橋六段が敗れると逆転で昇級となる。

 降級点は10名中5名まで決まっている。

 タイトル獲得経験のある塚田泰明九段(56)ら10名程度が残り5名の枠をめぐって争う。

※自力とは、自身が全勝すれば他の結果にかかわらず昇級が決まる状況のことをさす

C級1組(3月9日)

最後の昇級枠は2名の争いに
最後の昇級枠は2名の争いに

 9日(火)からは3日連続で順位戦が行われる。

 まず行われるのはC級1組。

 2月2日に行われた10回戦で高崎一生七段(34)と増田康宏六段(23)が昇級を決めた。

 高崎七段は二転三転する深夜の大熱戦の末、相手玉を長手数の詰みに仕留めた。最後に相手が受けを誤るという幸運もあったが、それもまた実力といえよう。

 増田六段は船江恒平六段(33)に敗れて全勝がストップしたが、他の対局結果により昇級が決まった。

 残す1枠は、高見泰地七段(27)が自力だ。そして他に昇級の可能性が残っているのは船江六段のみ。

 昇級の条件は以下となる。

  • 高見七段勝ち・・・高見七段昇級
  • 高見七段負け、船江六段勝ち・・・船江六段昇級
  • 高見七段負け、船江六段負け・・・高見七段昇級

 高見七段が有利な状況ではあるが、最終戦の相手はここまで全勝の高崎七段。最後にして最大の強敵を迎える。

 元タイトルホルダーが昨期に続く連続昇級を果たすか、注目される。

 降級点は8名中4名まで決まっている。

 森下卓九段(54)や豊川孝弘七段(54)といった実力者が降級点争いに巻き込まれているのがこのクラスの厳しさを表す。両者とも自身が負けると2つ目の降級点が決まり、C級2組へ降級となる。

 実力者が土壇場で底力を発揮するか。こちらも注目だ。

B級2組(3月10日)

最後の昇級枠をめぐる争いは混戦に
最後の昇級枠をめぐる争いは混戦に

 2月9日に行われた10回戦で藤井二冠、佐々木勇気七段(26)がそれぞれ勝って昇級を決めた。両者とも昨期に続く連続昇級となる。

 藤井二冠の順位戦での戦いぶりについて別記事に書いたのでご参照いただきたい。

全勝でB級1組への昇級決定。藤井聡太二冠の今期を振り返る

 藤井二冠は全勝、佐々木(勇)七段は藤井二冠に負けた以外は全勝と、強豪揃いのB級2組でも力が抜けていると思わせる見事な成績だった。

 他の上位陣は総崩れとなった。6勝2敗だった中田宏樹八段(56)、横山泰明七段(40)、大石直嗣七段(31)が全員敗れ、なんと2敗がいなくなった。

 3つ目の昇級枠は3敗勢による争いとなる。

 6勝3敗で前期成績にもとづく順位が一番上なのは横山七段だ。ここにきて連敗しているが、他も崩れて自力が残っている。

 3敗勢は他にも多くいる。順位がモノをいう展開だが、最後に波乱が起きないとも限らない。数字上は順位1位で5勝4敗の谷川浩司九段(58)までチャンスがある。

 降級点は6名中1名決まっている。残りの争いはかなりの混戦だ。3勝7敗ではアウトだろう。前期に続いて4勝6敗でも降級点がつく可能性がある。

B級1組(3月11日)

残り1つの昇級枠を2名で争う
残り1つの昇級枠を2名で争う

 順位戦のフィナーレを飾るのは3月11日(木)に一斉対局が行われるB級1組だ。

 2月4日に行われた12回戦で、山崎八段が自身は敗れるも他の対局結果により昇級を決めている。

 残り1枠は永瀬拓矢王座(28)が自力の権利を持っている。そして他に昇級の可能性が残っているのは木村一基九段(47)のみだ。

 昇級の条件は以下となる。

  • 永瀬王座勝ち・・・永瀬王座昇級
  • 永瀬王座負け、木村九段勝ち・・・木村九段昇級
  • 永瀬王座負け、木村九段負け・・・永瀬王座昇級

 永瀬王座が有利な状況であるが、相手の近藤誠也七段(24)は今期初参加ながら7勝4敗と好成績できている。難敵だ。

 木村九段の相手は深浦康市九段(48)で、昇級と残留争いの大一番となる。

残留争いは3名による最終決戦へ
残留争いは3名による最終決戦へ

 残留争いは、最終戦が抜け番の丸山忠久九段(50)の降級が決まって残りの枠は2つ。

 12回戦で丸山九段との直接対決を制した深浦九段だが、残留へ向けての条件は厳しい。他に降級の可能性が残るのは行方尚史九段(47)と阿久津主税八段(38)。残留できるのは3名中1名だ。

 自力で残留を決められる(勝てば残留が決まる)のは阿久津八段のみ。

 下記に状況を整理する。

阿久津八段勝ち・・・阿久津八段残留

阿久津八段負けの場合

  • 行方九段勝ち・・・行方九段残留
  • 行方九段負け、深浦九段勝ち・・・深浦九段残留
  • 行方九段負け、深浦九段負け・・・阿久津八段残留

 深浦九段の立場からすれば、行方九段と阿久津八段の両者が負けて自身が勝つより道はない。

 順位戦は最後の一局まで目の離せない戦いが続く。

 3月5日から始まる怒涛の順位戦ウィークにご注目いただきたい。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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