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木村王位のエース戦法に藤井聡太七段はどう立ち向かう?注目の王位戦第2局

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
撮影:筆者

 本日(13日)、第61期王位戦七番勝負第2局1日目が行われる。

 第1局は挑戦者の藤井聡太七段(17)が木村一基王位(47)の受けを突破して先勝した。

 前期悲願の初タイトルを獲得した木村王位としては、初防衛に向けて正念場の一局となる。

木村王位のエース戦法

 本局は木村王位の先手番となり、相掛かり戦法を採用した。

 木村王位は前期王位戦の先手番の全対局で相掛かりを採用し、タイトル獲得の原動力となった。

 タイトル獲得後も相掛かりでの勝率は高く、昨年のNHK杯で渡辺明三冠(36)に圧勝した対局はインパクトがあった。

 先日の順位戦B級1組開幕局でも相掛かりで強敵相手に圧勝した。

 木村王位が満を持してエースを投入した、そういう言い方もできそうだ。

 このシリーズは、並行して行われる第91期棋聖戦五番勝負で渡辺棋聖に藤井七段が2連勝していたこともあり、調子の良さをみて藤井七段ノリの声も多かった。

 しかし、木村王位には先手番において得意の相掛かりがある。

 本局の内容にもよるが、相掛かりでペースを握れるならば木村王位は先手番での戦いが楽になり、防衛の線も濃くなりそうだ。

記事中の画像作成:筆者
記事中の画像作成:筆者

相掛かり

 相居飛車で後手番が主導権を先手に委ねる場合、先手番が選ぶ戦法は3つ。

 矢倉・角換わり・相掛かりだ。

 藤井七段にとって角換わりはエース戦法であり、矢倉も得意戦法だ。

 しかし相掛かりだけは先手番で選択しない。

 

 これは何故か?

 真意は本人しか知り得ないが、選択しない裏には理由があるはずだ。

 いま、相掛かりを得意としている若手棋士に活躍が目立つ。

 増田康宏六段(22)、本田奎五段(23)、佐々木大地五段(25)。

 皆、独自色の強い相掛かりを指し、相手を翻弄して高い勝率をあげている。

 相掛かりは個性が出やすい戦法で、それがゆえに研究がしづらい。

 その辺りが藤井七段の好みに合わないのだろうか。

 木村王位の相掛かりも個性豊かな指しまわしで人が真似をしづらい。

 いい態勢を作ってから相手の攻めを引っ張り込み、戦力を低下させてから反撃に移るのが勝ちパターンだ。

 研究の的が絞りづらく、藤井七段としては対応が難しいであろう。

藤井七段の今後に影響も

 ただ、木村王位の作戦がハマって序盤でリードしたとしても、藤井七段が容易に土俵を割ることはないだろう。

 必ず熱戦になるはずだ。

 藤井七段は正念場ともいえる連戦を迎えている。

16日:棋聖戦第4局(vs渡辺棋聖)

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18日:JT杯(vs菅井竜也八段)

21日:(16日に敗れた場合)棋聖戦最終第5局(vs渡辺棋聖)

24日:竜王戦決勝トーナメント(vs丸山忠久九段)

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 本局を制すれば、王位戦は連勝スタートとなり、佳境を迎える棋聖戦五番勝負へもはずみがつく。

 二冠制覇へ、視界良好となる。

 一方、本局を内容の良くない将棋で負けて勢いを落とすと、初タイトルへ暗雲立ち込める。

 シリーズの今後、そして藤井七段の行く末を占う一戦になりそうだ。

 終局は明日の夕方頃になる。

 ご注目いただきたい。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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