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王位戦開幕!木村一基王位と藤井聡太七段、意外と多い「共通点」

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
撮影:筆者

 本日(1日)、第61期王位戦七番勝負が開幕する。

 前期、悲願の初タイトルを獲得した木村一基王位(47)に、藤井聡太七段(17)が挑戦する。

 藤井七段にとって、棋聖戦五番勝負に続いてのタイトル戦登場となる。

将棋における共通点

 年齢差は30。

 親子ほど年齢の離れた両者だが、実は共通点が多い。

 まずは将棋における共通点をみていこう。

1.居飛車党

 お互いに振り飛車を指すことは全くない。正統派の居飛車党といえる。

 居飛車の中でも木村王位は相掛かり、藤井七段は角換わりを得意としている。

 ここにはやや違いがある。

 木村王位が先手だとタイトル獲得の原動力となった相掛かりが有力だ。

 藤井七段が先手の場合、木村王位が2手目に△8四歩と突いて主導権を渡せば角換わりになりそうだ。

 ただ、直近で藤井七段が敗戦を喫したのは横歩取りだった。

 そのため、木村王位が注文をつけて後手番で横歩取りに誘導する可能性もある。

 第1局は振り駒なので予想しづらいが、果たしてどんな戦型で開幕となるのか。

2.長考派

 藤井七段の長考はよく知られている。中盤で持ち時間の大半を消費し、秒読みに追い込まれながらも正確な指しまわしで終盤を乗り切るのが最近の勝ちパターンだ。

 木村王位は1手に長時間使うことは少ないが、序盤からゆったりと使うタイプだ。

 どちらかといえば長考派であり、持ち時間の長い棋戦ほど活躍が目立つ。

 前期は豊島将之王位(当時)が序盤を飛ばすため、持ち時間に大きな差がつくことが多かった。

 今期は互いの波長が合って、序盤からゆっくりした進行になりそうだ。

3.読みを重視

 木村王位の受けの強さは有名だ。

 「千駄ヶ谷の受け師」という異名は多くのファンに知られている。

 受け将棋に必要なのは正確な「読み」だ。

 丹念に相手の手を読み、攻めを予測して的確にかわしていく。

 決して感覚だけでは受け止められない。

 「読み」こそが木村王位の受けの強さの源だ。

 藤井七段は、先日の棋聖戦第2局では「△3一銀」という受けでインパクトを残した。

 最近の藤井七段は、直感では浮かびにくい、「読み」に支えられた好手が多い印象だ。

 詰将棋を得意とする藤井七段が「読み」を重視するのは当然ともいえる。

 藤井七段にとって大切なのは、攻めでも受けでもなく、丹念に読んで正着を導き出すことなのだ。

 この二人の対戦はじっくりした駒組みから「読み」を重視した戦いになりそうだ。

 より受け身に勝る木村王位が、藤井七段の攻めを誘う展開が予想される。

盤外の共通点

 盤上ほどではないが、盤外でも共通点がある。

 一つは体の強さだ。

 昨年、木村王位は王位戦七番勝負と竜王戦挑戦者決定三番勝負を並行し、「炎の十番勝負」を戦った。

 タイトなスケジュールだったが、体調を崩さずに乗り切っている。

 一方、藤井七段は今まさにタイトなスケジュールで対局が続いている。

 17歳という若さとはいえ、対局での消耗は激しい。

 しかし疲れを感じさせないタフさをみせている。そうした体の強さもまた、天性のものといえよう。

 もう一つは和服が似合う点だ。

 先日の棋聖戦第2局では、藤井七段は和服で対局して注目を集めた。

 想像以上に似合っており、個人的にはスーツよりもカッコよくみえた。

 木村王位も和服姿が似合う棋士として知られている。

 こちらもスーツよりも和服での対局姿が断然カッコいい。

 盤上でも盤外でも注目が集まるこの戦いは、ABEMA将棋チャンネルで中継が行われる。

 筆者は第1局1日目(本日7月1日)の解説を担当する。

 歴史的な戦いをABEMA将棋チャンネルでぜひご覧いただきたい。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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