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渡辺王将、防衛に向けて好スタート。強さの秘訣は「積極性」にあり

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
筆者撮影:2019年に行われた棋聖就位式

 第69期王将戦七番勝負第1局は1月12・13日に静岡県掛川市で行われ、渡辺明王将(35)が挑戦者の広瀬章人八段(32)を破り、先勝した。

 1日目が終わったところでは広瀬八段やや有利と見られていたが、終わってみれば渡辺三冠の快勝だった。

分析結果

 一局の流れとして、広瀬八段が少しリードするも渡辺三冠が逆転した、という見方をされている。

 局後のインタビューで対局者も1日目は広瀬八段のペースだったと話していた。

 しかし、改めて将棋AIに分析させてみると思わぬ結果が出た。

 1日目を終えたところではすでに渡辺三冠が優位にたっており、2日目はそのまま押し切った、という分析結果が出たのだ。

 渡辺三冠が玉頭から盛り上がっていった積極策を将棋AIは好着想と判断し、その積極性がリードを広げる要因になったと分析している。

 プロが揃って広瀬八段寄りの判断をしていた場面を、将棋AIは渡辺三冠に利のある展開だと示す。

「本当にそうなのか」

 筆者は将棋AIの分析結果をみて思わずそう漏らした。

 色々な角度から分析を試みたが、どうやら将棋AIの判断が正確のようで、筆者も最終的にはその意見に同意した。

積極性

 渡辺三冠自身も局後の感想では「苦戦を覚悟した」と話している。

 しかし苦戦を覚悟しながらも自分の玉頭から撃って出る積極策をとり、それが結果的に功を奏した格好だ。

 勝ち続けて勢いがあるから積極的であり、そして積極的であるから勝ちも続くのだろう。

 ここに勝率8割を超える渡辺三冠の強さの秘訣をみる。

 広瀬八段としては、封じ手の直前に積極策をとったのが結果的には裏目に出たようだ。

 ただ積極的にいきたい場面でもあり、判断ミスもやむを得ないところだろう。

 しかしそのわずかな判断ミスでトップの戦いというのは勝敗が決まるのだ。

 それを感じた一局だった。

シリーズの行方

 この一戦では終盤戦で広瀬八段があっさり土俵を割った。

 持ち時間も残しており、将棋AIの分析からみても、粘り強く戦えば勝機がでた可能性もある。

 広瀬八段の持ち味は終盤力だ。

 挑戦者決定戦では藤井聡太七段(17)を終盤の逆転でくだして挑戦権を獲得したのだ。

 広瀬八段の終盤力を封じる力がいまの渡辺三冠にあるのだろう。

 大きく調子を崩さない限り防衛の可能性は高いのではないか、そう感じさせられた一局だった。

 第2局は25、26日に大阪府高槻市で行われる。

 早くもシリーズの行方を大きく左右する大一番となりそうだ。注目いただきたい。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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