「勝率」と「戦法の流行」から読み取る2020年の将棋界。戦国時代、その先は。

2020年、初めてのタイトル挑戦を目指す藤井聡太七段(写真:森田直樹/アフロ)

 将棋界は昨日(6日)指し初め式が行われ、本日(7日)より公式戦が本格的に再開される。

 いよいよ2020年の戦いが始まった。

 先だって4日(土)にA級順位戦が行われ、渡辺明三冠(35)が稲葉陽八段(31)に勝って順位戦7連勝とし、名人挑戦まであと1勝としている。

タイトルホルダーの2020年

 新年早々強さを見せた渡辺三冠は、いきなり2つの防衛戦を迎える。

 王将戦七番勝負では広瀬章人八段(32)と、棋王戦五番勝負では新人の本田奎五段(22)と対戦する。

 もし防衛に成功し、ほぼ手中におさめている名人戦の挑戦権、そして準々決勝まで勝ち進んでいる叡王戦でも挑戦権を得ると、春先には最大で五冠までタイトルを増やせる。

 相手がトップ棋士ばかりにもかかわらず8割を超える勝率でランキング1位を独走しており、その可能性も否定できない。

 ただ、年末に竜王ランキング戦1組で佐藤和俊七段(41)に敗れるなど、一時期の無敵状態よりはわずかに勢いが落ちているようにもみえる。

 対局間隔が詰まれば誰でも調子を落としがちだ。渡辺三冠はハードスケジュールとの戦いも待っている。

 豊島将之竜王・名人(29)、永瀬拓矢二冠(27)、木村一基王位(46)の3名は、しばらくは防衛戦に軸足を置く戦いとなりそうだ。

 渡辺三冠が名人に挑戦すれば豊島竜王・名人との頂上決戦となり、おおいに注目を集めるだろう。

 また、豊島竜王・名人は叡王戦で準決勝まで勝ち進んでおり、挑戦権を得れば永瀬叡王との二冠対決となる。

 この二人はまだ3局しか対戦がなく、番勝負での戦いを見てみたい。

勝率ランキング

 ここからは勝率ランキング上位の棋士をピックアップする。

 現在、渡辺三冠に次いで2位につけているのが藤井聡太七段(17)だ。

 藤井七段は9~12月末を15勝2敗という驚異の成績で駆け抜けた。2敗はいずれも王将リーグでのもので(豊島竜王・名人と広瀬八段)、他の棋戦では負け無しだ。

 まずはマジック2としている順位戦C級1組で昇級を目指す。

 トップ棋士との対戦が組まれる王位リーグでの戦いぶりにも注目が集まりそうだ。

 最近の成績と内容をみると、2020年にタイトル初挑戦を決める可能性は十二分にあると筆者はみる。

 トップ棋士との対戦が多い中で高い勝率を保っている一人が菅井竜也七段(27)だ。

 一昨年に王位のタイトルを失ったが、その後は各棋戦で活躍を重ね、順位戦ではA級昇級を目前にしている。

 トップ棋士同士の対戦が多い中で高勝率をあげている棋士は活躍する可能性が高い。昨年の木村王位がその典型例だ。

 昨年はタイトル戦でほとんど振り飛車が指されなかった。

 いま、振り飛車党のファンが菅井七段にかける期待は大きい。

戦法の流行

  先日の記事にも書いたが、戦法の流行と棋士の活躍は結びつきやすい。

 相掛かり戦法(以下相掛かりと略)が流行すれば、棋王戦で活躍した勝率ランキング11位と12位の棋士にさらなる活躍が期待される。

 11位はデビュー1年足らずでタイトル挑戦を決めた本田五段

 12位は本田五段に挑戦者決定戦で敗れた佐々木大地五段(24)だ。

 両者とも相掛かりで驚異的な勝率をたたき出し、棋王戦での躍進につなげた。

 そして、矢倉戦法(以下矢倉と略)も、後手の急戦への対策が進んだことで流行の兆しがある。

 もし矢倉が流行すれば、過去の経験や蓄積を生かし、40代以上の棋士の復活もありそうだ。

  羽生善治九段(49)は4日に行われた将棋まつりの席上対局で豊島竜王・名人に矢倉で快勝し、大舞台へ戻ることを予感させた。

 また、B級1組以上の棋士で勝率トップ5に入っている行方尚史九段(46)も矢倉を得意としている。

 同世代の木村王位の活躍に刺激を受けていることもあり、活躍が予想される。

戦国時代、その先は

 2020年も渡辺三冠や豊島竜王・名人らタイトルホルダーを中心に動きそうだが、タイトルを獲得する実力を持った棋士もひしめいており、戦国時代が続く可能性は高い。

 平成の初期にも7名がタイトルを分け合う戦国時代があった。

 その時、羽生九段はプロ入りから約2年。それから数年後、羽生九段は前人未到の七冠を達成した。

 令和の将棋界は戦国時代で始まっている。

 現在、藤井七段はプロ入りから約3年。

 歴史は繰り返すのか、それとも新しい歴史が刻まれるのか。

 2020年も将棋界にご注目いただきたい。