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【JAZZ】平賀マリカ『マンデルシーニ』発売記念ライヴツアーファイナル@JZ Brat

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、4月に新作『マンデルシーニ』を発売した平賀マリカのツアーファイナル。

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大学卒業後は就職するも、在学中から学び始めていたジャズの道を諦めず、アジア音楽祭で金賞を受賞してプロへ転向。2001年に『マイ・シャイニング・アワー』でアルバム・デビューを果たした後もニューヨークへ渡って研鑽を積むなど、常にチャレンジングなアプローチを選んでいるのが平賀マリカというジャズ・ヴォーカリスト。

2007年にはマンハッタン・ジャズ・クインテットを迎えた『クロース・トゥ・バカラック』、2008年にはニューヨークの精鋭を迎えた『モア・ロマンス』や、マイケル・フランクスやマルコス・ヴァーリと共演した『バトゥカーダ〜ジャズン・ボッサ』をいずれもニューヨーク録音で仕上げている。

2009年の『シング・ワンス・モア〜ディア・カーペンターズ』ではカーペンターズ、2011年の『モナ・リサ〜トリビュート・トゥ・ナット・キング・コール』と、ポピュラー・ソング・シーンのレジェンドをテーマにした作品作りにも積極的に取り組んできた。

さらに、2012年の『シングス・ウィズ・ザ・デューク・エリントン・オーケストラ』ではジャズ・オーケストラの伝統を受け継ぐデューク・エリントン・オーケストラとの共演も果たし、ジャズ・ヴォーカリストとしてなし得る歴史へのリスペクトをすべて実現させてきたと言っても過言ではないのが、平賀マリカのディスコグラフィだ。

武者修行を経てホームへ戻ったディーヴァの新たな挑戦

平賀マリカ『マンデルシーニ』
平賀マリカ『マンデルシーニ』

2015年4月にリリースされた新作『マンデルシーニ』は、ジャズを育ててきた“本場”であるニューヨークを舞台に、あるいはジャズをジャズたらしめてきた最前線のミュージシャンたちを相手に、自分が“ジャズを歌う”ことと闘うようなチャレンジを続けてきた平賀マリカのこれまでの作品とは趣の異なる内容になっている。

彼女がセレクトしたメンバーは日本のジャズ・シーンの最前線で活躍する面々だが、それをスケール・ダウンと感じるのは早計だ。世界を舞台にジャズのレジェンドと“闘ってきた”平賀マリカだからこその基準による人選は、オール・ジャパンで表現されるジャズが名実ともに世界で評価されるに足るサウンドを生み出すことを体感するに至った経緯があってこそ。

つまり本作は、世界で闘い、評価されてきた日本を代表するディーヴァによるホームグランドでの活動がスタートするという“狼煙”といえるもの。

そしてその俎上に上ったのは、数多くの映像美を飾るメロディで世界を席巻したヘンリー・マンシーニとジョニー・マンデルという映画音楽の巨匠たち。ジャズからさらにポピュラリティへと枠を広げてヴォーカルの表現力を探ろうとしたのが、今回の彼女のチャレンジングと言える。

ツアーファイナルではアルバム参加メンバーも勢揃い。『マンデルシーニ』として新たな一歩を記録したサウンドがリアルで再現されるステージは、ジャズ・ヴォーカルの歴史に残るエポックになるはずだ。

では、行ってきます!

●公演概要

6月24日(水) 開場17:30/開演19:30&21:00

会場:JZ Brat(渋谷)

出演:平賀マリカ(ヴォーカル)、井上陽介(ベース)、堀秀彰(ピアノ)、田辺光邦(ギター)、太田朱美(フルート)

♪平賀マリカ「Far Call」

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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