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【JAZZ】EPS Trio@大塚Welcome Backと松井秋彦『album CPJ』

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
松井秋彦『album CPJ』
松井秋彦『album CPJ』

独自の音楽理論“CPJ”を掲げて、前人未聴のメロディ×ハーモニー×リズムを融合させたサウンドを追い求める松井秋彦が、“ポストCPJ”と位置付ける活動をスタートさせる。

その名はEPS。

松井秋彦本人の解説によると、EPSはExtraordinary Perceptional Serendipity=超知覚的偶発的発掘才覚の略で、彼の造語だそうだ。どうやらESP(extrasensory perception=超感覚的知覚)を意識しているらしいが、知覚と感覚が逆転しているところにこだわりがありそうだ。

というのも、松井秋彦はCPJの活動をとおして感覚の曖昧さを排除し、徹底的に数値化された音楽がどれほど無機的であることから距離を置くことができるかという“壮大な実験”を続けてきたように見えるからだ。

その“壮大な実験”の集大成となるのが、2014年11月にリリースされたアルバム『album CPJ』だ。

進化し続ける音楽の原点を結晶化させたアルバム

アルバム『album CPJ』は、このアルバムと同時に発売された譜面集『mujik CPJ』に収録された楽曲から、CPJ色が最も強いとして選ばれた10曲を収録。

譜面集自体が、これまで彼が口伝してきたCPJサウンドの初となる譜面化だったことに加えて、その厳選された収録50曲からさらに厳選を重ねた10曲に対して、あろうことか松井秋彦自身が4つのパート(キーボード、ギター、ベース、ドラム)のすべてをひとりで演奏するという、完全無欠の“松井秋彦ワールド”を具現させている。

松井秋彦はライヴにおいてもマルチパフォーマンスと称して複数楽器の同時演奏を行なったり、曲ごとに担当楽器を変えたりしている。これは「楽器演奏>楽曲」となることを良しとしない彼の意識の表われではないかと考えている。彼にとっては、CPJという言葉に集約した理論を楽曲に転化できる可能性が大事であり、どんな楽器でも弾きこなせることや偶発的に整った(ようにみえる)フレーズに興味があるわけではなさそうなのだ。

マルチであるということは、器用であるということとは重ならない。ある意味で自分の脳内で熟成している不可解な未知の音について、どうすれば寸分たがわずアウトプットできるのだろうかということにのみ集中する不器用な音楽家である。

これまでアルバムでも、CPJに共感する卓越したテクニックを有するミュージシャンたちの協力によってその具現化は遂行されてきたが、集大成と銘打っての『album CPJ』では、禁じ手とも言える「誰の手も借りない」という手段で臨んでいる。これはもう、彼の脳内と3Dプリンタを直結してしまったことを意味しているんじゃなかろうか……。

改めて“さらに前進しようとするCPJ”=EPSを楽しむために、試金石として『album CPJ』を活用したいと思っている。

では、行ってきます!

●公演概要

3月12日(木) 開場18:30/開演19:30

会場:大塚Welcome Back(大塚)

出演:松井秋彦 EPS(Extraordinary Perceptional Serendipity):松井秋彦(ドラム)、 田中信正(ピアノ)、福田亮(ベース)

♪☆mujik CPJ Festival IV / Jackpot @ Blues Alley Japan / Akihiko'JOKER' Matsui(松井秋彦)

♪松井塾(松井秋彦さん)7連符の説明の風景

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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