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【JAZZ】パブロ・シーグレル五重奏団 ft. レジーナ・カーター「タンゴ・ジャズ・コネクション」

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
タンゴ・ジャズ・コネクション
タンゴ・ジャズ・コネクション

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、タンゴ新潮流の牽引役、パブロ・シーグレル率いる五重奏団の来日ステージ。

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タンゴの革命者として大きな功績を残したアストル・ピアソラの没後20年を記念して東京オペラシティのコンサートホールで「ブエノスアイレスの四季」が開催されたのは2012年。

クラシックのオーケストラを配してのタンゴ進化形への挑戦は刺激的な内容で、ポピュラー音楽界の大きなエポックとなった。

以降も、拠点としているニューヨークでジャンルを超えた精力的な活動を展開する彼が、自身の五重奏団とともに、ジャズ・ヴァイオリニストのレジーナ・カーターをフィーチャリングしたステージを観せてくれる。

ヌエヴォ・タンゴの進化形を豪華なコラボレーションで

パブロ・シーグレルはアストル・ピアソラ五重奏団のピアニストとして10年ほど活動した経歴をもつ、“タンゴ革命当事者”のひとりだ。1944年アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれで、14歳ですでにリサイタル・デビューを飾り、ブエノスアイレス音楽院を首席で卒業するなど、早くから才能を開花させている。

1921年生まれのピアソラとは23歳の差。シーグレルが五重奏団に参加したのは1978年、ピアソラが15年ほど続けてきた八重奏団〜九重奏団での活動に一区切りをつけ、再びホームグラウンドと呼べる五重奏団に編成を戻した年のことだ。バンドネオン、ヴァイオリン、ピアノ、コントラバス、エレクトリック・ギターによる五重奏は、ピアソラが“タンゴを破壊した”と言われるもととなった編成でもあった。ピアソラと彼に影響を受けたタンゴはヌエヴォ・タンゴ(ヌエヴォ=Nuevoはスペイン語で「新しい」の意)と呼ばれ、旧来の“踊れるタンゴ”とは一線を画して発展している。

今回の来日公演では、パブロ・シーグレル側の五重奏団にドラムが入り、レジーナ・カーターのヴァイオリンを加えた六重奏のかたちとなる。ドラムが入ることで、よりリズミックな、ジャズ的すなわちインプロヴィゼーショナル(即興的)なアプローチが可能になると思われる。

レジーナ・カーターは1966年米ミシガン州デトロイト生まれ。独特のスウィング感で1990年代初頭から脚光を浴び、ジャズからポピュラー音楽界、そしてR&Bに至るまで引っ張りだこの人気を博すようになった。

レジーナ・カーターをフィーチャーしたエピソードを含めて今回の公演についてのパブロ・シーグレルのインタビューと動画メッセージはこちら→「〔インタビュー〕パブロ・シーグレル|東京オペラシティ

では、行ってきます!

●公演概要

3月6日(金) 開演19:00

会場:東京オペラシティ コンサートホール(初台)

出演:パブロ・シーグレル(ピアノ、作曲、編曲)、レジーナ・カーター(ヴァイオリン)、エクトル・デル・クルト(バンドネオン)、クラウディオ・ラガッシ(ギター)、ペドロ・ジラウド(ベース)、フランコ・ピナ(ドラム、パーカッション)

曲目:ミロンガをもう一度(シーグレル)、ラ・フンディシオン(シーグレル)、天使の序章(ピアソラ)、ミケランジェロ70(ピアソラ)、ブルース・ポルテーニョ(シーグレル)、プレイシス(シーグレル)、フーガと神秘(ピアソラ)、石蹴りと遊び(シーグレル)、アスファルト(シーグレル)、石畳(シーグレル)、ボエドの少女(シーグレル)、マハビシュヌ・タンゴ(シーグレル、日本初演)、ブエノスアイレス・レポート(シーグレル)、チン・チン(ピアソラ)

♪Mahavishnu Tango. Pablo Ziegler Quartet with Regina Carter

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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