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【DMJ】マリンバ新世紀の幕開けを告げる豪華ステージ(ミカリンバ@ブルーノート東京)

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
ミカ・ストルツマン『イフ・ユー・ビリーヴ』
ミカ・ストルツマン『イフ・ユー・ビリーヴ』

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画が“出掛ける前からジャズ気分”、略してDMJ。今回は“ミカリンバ”の東京公演。

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“ミカリンバ”とは、世界的な活動を展開するマリンバ奏者のミカ・ストルツマン(旧姓:吉田ミカ)が2010年にスーパー・ドラマーのスティーヴ・ガッドをプロデューサーに迎えて制作したアルバムのタイトルで、その後も彼女のプロジェクト名になっている。

ちょうど1年ほど前に、『ミカリンバ』の続編となる『イフ・ユー・ビリーヴ』を完成させたミカ・ストルツマンとスティーヴ・ガッドに取材する機会があり、2人の奇跡的な出逢いや、現代音楽的な視点でとらえられがちなマリンバという楽器の可能性をもっと広げたいという2人の熱意などについて聞くことができた。

マリンバの背景などについて説明したボクの原稿を引用しよう。

ミカ・ストルツマンは2000年にカナダのトロント大学音楽学部上級演奏家コースを修了しているが、在学中にNexusに師事、交流を深めていた。Nexusのレパートリーは軍隊音楽からラグタイム、アフリカのリズムと幅広いが、武満徹やジョン・ケージ、スティーヴ・ライヒといった現代音楽へのチャレンジに注目が集まることもあって、ジャズなどのポピュラー音楽とは距離があるようなイメージが強いかもしれない。その点についてはミカ・ストルツマンも、「マリンバという楽器は歴史が浅いので、曲がないんですよ。あってもコンテンポラリー系の現代音楽の曲なので、マニアックなの」と笑いながら解説をしてくれた。

楽器の成り立ち自体は木の棒(アフリカの言語で“リンバ”、+多くの数を表す接頭語“マ”=マリンバ)を並べて叩くという原始的な仕組みだが、20世紀になってようやくピアノと同じ配列のスタイルになったという“つい最近できた楽器”という背景がある。そこに難解というイメージの現代音楽系楽曲での演奏機会が多いこともあって、マリンバという楽器自体を取っ付きにくいものにしてしまっていることに、ミカ・ストルツマンは不満を抱いていた。

引用:「jazzLife」2014年2月号

スティーヴ・ガッドもまたプライヴェートでマリンバを弾いていて、もっとポップ・インストゥルメンタルなアプローチがあるはずだと感じていたそうだ。そうした“マリンバ愛”に引き寄せられた豪華メンバーによって生まれた『ミカリンバ』と『イフ・ユー・ビリーヴ』は、ジャズ・フュージョンのシーンに大きな一石を投じることになった。

“マリンバ・サウンドの新世紀”を実感できるステージが繰り広げられることを楽しみにしているとともに、なんといってもフュージョン・ファンなら目移りしてしまうに違いない豪華メンバーによるサウンドがどのようにマリンバと“マリアージュ”していくのか、興味は尽きない。

では、行ってきます!

●公演概要

10月17日(金) 1st 開場 17:30/開演 19:00

10月17日(金) 2nd 開場 20:45/開演 21:30

会場:ブルーノート東京

出演:ミカ・ストルツマン(マリンバ)、リチャード・ストルツマン(クラリネット)、スティーヴ・ガッド(ドラム)、ジョン・トロペイ(ギター)、エディ・ゴメス(ベース)、デューク・ガッド(パーカッション)

♪MIKARIMBA : BLUE NOTE TOKYO 2014 trailer

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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