【JND】時を超えて再び歩き出した1950年代ジャズの名盤『クール・ストラッティン』

ソニー・クラーク『クール・ストラッティン』
ソニー・クラーク『クール・ストラッティン』

話題のアルバムを取り上げて、曲の成り立ちや聴きどころなどを解説するJND(Jazz Navi Disk編)。今回はソニー・クラーク『クール・ストラッティン』。

巷で『クール・ストラッティン』が話題になっている。1958年にレコーディングされた、モダン・ジャズを代表すると言っても過言ではない名盤の1枚。でも、ジャズ・ファンにとっては「なにをいまさら」の定番なのに、どうしてまた改めて話題になっているのか???

その原因は、これだった。

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クイズ仕立ての“問題編”で異例のPV

このアルバムを使った世界初となるMV(宣伝用のミュージック・ヴィデオ)が制作されたということで、がぜん注目度がアップしているようなのだ。

ことの始まりは10月8日に発売される「ジャズの100枚。」というCD販売企画で、「世界的快挙! レーベルの枠を超えた名盤シリーズ! ジャズ・レコード100年の歴史を代表する名盤100枚が、1枚1,000円(税抜)で一挙発売。」という内容のもの。

ジャズの100枚。

この企画の宣伝のために作られたのが『クール・ストラッティン』を使ったMVだった。しかも1本ではなく、9月5日から動画サイトで公開された“問題編~「この美脚は誰?」”と、9月16日に発表された“解答編~「美脚はこの人」”のクイズ仕立てになっているという凝りよう。週ごとに“後ろ姿”や“顔の下半分”などのヒントを出すなど、ゲーム性を濃くしたことも盛り上がりの一助になったようだ。

“ジャズらしさ”を感じさせる完成されたスタイル

肝心の『クール・ストラッティン』はといえば、ソニー・クラークというピアニストがジャズの名門ブルーノート・レーベルからリリースした5人編成のジャズ・アルバム。

ソニー・クラークは1931年米ペンシルベニア州生まれのアフリカ系アメリカ人。4歳でピアノを始めていたというから、裕福な家庭環境だったようだ。西海岸で音楽の仕事に本腰を入れ始めたのが1951年、ちょうど20歳のころ。1957年にはニューヨークへ移って“ジャズの最前線”で活躍するようになるがリーダー作は当時あまり注目されず、そうこうするうち、1963年に麻薬の過剰摂取で亡くなってしまった。まだ31歳という若さだった。

トランペットとアルト・サックスにピアノ・トリオの組み合わせは、ビバップを軸にアンサンブルとアドリブのバランスを整えて発展したハード・バップの典型的な編成。言うなれば、“ジャズってどんな音?”と問われたときに“こんな音”と答える代表例にしてもまず間違いないものだ。ジャズは幅広く多種多様なので、パッと聴いただけでは“これがジャズ?”というものも多いのだけれど、この『クール・ストラッティン』の編成を聴いてジャズ以外の音楽を想像する人はまずいないだろうーーというぐらい、ひとつのジャズのスタイルを極めていると言っていい。

とりたてて実験的でも先進的でもない内容ながら、リリースから半世紀以上を過ぎてもなお愛され続ける名盤になりえたのは、このアルバムが発している“ジャズらしさ”のせいなのではないだろうか。

昼休みの気まぐれがもたらした名ショット

そしてまた、ジャケットのすばらしさも、愛され続ける理由のひとつだろう。

アルバム・タイトルになっているのは、ソニー・クラークのオリジナル「クール・ストラッティン」という曲。ちなみに“struttin'”は“strut”=「気取って歩く」の現在分詞の省略形で、“cool”は俗語では「かっこいい」を意味している。

ジャケット・デザインについてあれこれ考えていたプロデューサーのアルフレッド・ライオンとデザイナーのリード・マイルスが打ち合わせの途中で昼食をとろうということになり、アシスタントの女性をひとり連れて近所のレストランへ向かう道すがら撮られたのが、このジャケットの写真だったとのこと。場所はニューヨーク五番街、ロックフェラー・センターのプラザの前のようだ。

かくして“かっこよく気取って歩く”というタイトルをそのまま写真に収めたこのアルバム・ジャケットは、ジャズを象徴する名盤の“顔”として現代でも輝き続けているというわけ。

そのジャケット写真からモデルが飛び出してきて動いたというのだから、長生きはするものだ(笑)。

リーダーのソニー・クラークはもちろん、たまたま撮れた写真をジャケットに使おうと決めたプロデューサーやデザイナーも、今回のMVにはビックリしているに違いない。

♪史上初「クール・ストラッティン」MV登場!~解答編「美脚はこの人」 #ジャズの100枚。

See You Next Time !