東京オリンピックが開幕し、日々選手たちの活躍が注目される一方で、選手たちへのSNSを通じた誹謗中傷の問題が深刻化していることが、日に日に明らかになってきました。

今回の東京オリンピックは、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点ともからみあい、開催の是非が政治的な議論の側面も持ってしまい、選手への誹謗中傷が多数生まれていることが問題視されていました。

特に5月の段階で池江璃花子選手が、ツイッターで苦しい胸の内を吐露する形で投稿していたことが、記憶に新しい方は多いのではないでしょうか。

ただ、その後は、開会式の関係者の問題の方が大きく注目されるようになった結果、オリンピック出場選手への誹謗中傷や炎上行為は、それほど大きなニュースになることはなかった印象でした。

しかし残念ながらここにきて、選手への様々な形での誹謗中傷が存在していることが明らかになってきました。

メダルラッシュと並行して注目される誹謗中傷

ここ数日で話題になった記事だけでも並べると、多くの選手が誹謗中傷の被害に遭っていることが分かります。

■7月28日 卓球の水谷隼選手がツイッターで誹謗中傷のDMが多数来ていることを告白

参考:卓球金・水谷隼「とある国」から誹謗中傷 「くたばれ」DM届くも...「1ミリもダメージない」わけ

■7月28日 サーフィンの五十嵐カノア選手がツイッターでの誹謗中傷についてポルトガル語で反論

参考:五十嵐カノア、SNSでの誹謗中傷に怒り「我慢できません」と反論

■7月29日 体操の村上茉愛選手がインスタグラムの誹謗中傷について言及

参考:村上茉愛もSNS中傷経験 「すごく残念、悲しかった」 取材エリアで大粒の涙

■7月29日 卓球の伊藤美誠選手のインスタグラムに誹謗中傷のコメント投稿が続く

参考:卓球・伊藤美誠 準決勝で中国人選手に敗れるも「日本のピエロ」と中国語の中傷コメント止まず

■7月29日 体操の橋本大輝選手がツイッターで誹謗中傷のメッセージについて言及

参考:アスリートへの誹謗中傷 橋本大輝も思い「少なくなることを願っています」

数日でこれだけのニュースが出てきたということは、おそらく、言葉にしないだけで、水面下にもっと無数の誹謗中傷を受けた選手がいるのは間違いないでしょう。

これらの報道を受ける形で、7月30日にはIOC(国際オリンピック委員会)も、24時間体制の相談窓口を設けてカウンセリング対応を行っていることを呼びかける流れとなっています。

参考:オリンピック 選手へのひぼう中傷相次ぐ IOCが相談窓口設置

一つ一つの誹謗中傷の事例は、オリンピック開催の是非の議論の矛先が選手に向かってしまったもの、競技の過程における結果に対する不満がぶつけられてしまっているもの、国同士の因縁のはけ口になっているものなど、原因が多様なため、簡単な解決策はありません。

ただ、こうした誹謗中傷から選手を守る為に、関係者の方々や私たちにもできることがありますので、こちらでご紹介しておきたいと思います。

■誹謗中傷が届きにくいSNSの設定に変える

まず選手や関係者の方に確認していただきたいのは、選手のSNSの設定です。

ツイッターやインスタグラムも、近年誹謗中傷対策には力を入れており、例えばツイッターではDMを受け取る相手の設定や、リプライをつけられる範囲を変更することが可能です。

水谷隼選手は、「1ミリもダメージない」と投稿するぐらいなので、あえてDMを誰からでも受け取れる設定にされているようですが、これは水谷選手のような強心臓で、ファンからの応援DMも全て受け取りたい人向けの設定です。

基本的には、フォローしている人からのDMしか受け取れない設定にするのが無難でしょう。

インスタグラムではDMを止めることは残念ながらできませんが、少なくともストーリーズに対する返信の設定を変えることや、投稿へのコメントの設定を変えることはできます。

不安な時や、批判が殺到した際には、設定を一度見直すようにして下さい。

参考:東京五輪論争で加害者にも被害者にもならないために、SNSで注意すべきポイント

■深刻な誹謗中傷をする相手には法的措置も検討を

また、選手の関係者の方々や、協会の方が真剣に検討したほうが良いと思われるのは、深刻な誹謗中傷を繰り返す相手に対する法的措置です。

ネットの投稿ぐらいで大袈裟な、と思われる方もおられるかもしれませんが、誹謗中傷を繰り返しているタイプの人は、他の選手にも同様の投稿をしている可能性があります。

水谷選手のような一部の選手は耐えられたとしても、全員がそうとは限りません。

逆にいうと、一人の誹謗中傷を止めることができれば、複数の選手を救える可能性もあると言えます。

為末大さんもツイッターに投稿していましたが、訴訟等の法的措置は当然アスリート一人一人が行うのは面倒ですので、組織としてのサポートが必須でしょう。

誹謗中傷が、人の命を奪ってしまうことがある犯罪行為であることは明確になっていますし、過去にはネット上で誹謗中傷を繰り返しつづけていた人物が、最終的に刺殺事件を起こしてしまったケースもあります。

参考:木村花さんの悲劇から1年。誹謗中傷を減らすために私たちができること。

現時点では組織委員会は声明を出す予定も、アクションを取る予定もなく、大会後の各所属団体に任せる意向のようですが、現在の誹謗中傷行為を放置すると大会後半に向けて過激化していくリスクもあります。

参考:組織委、声明出す予定なし 選手SNSへの中傷で〔五輪〕:時事ドットコム

若い選手の未来を守るためにも、早期の対応が必要であると思います。

■誹謗中傷投稿を見たら「通報」を

また、選手のファンや、一般のSNSユーザーの方々にお願いしたいのは、誹謗中傷投稿を見たら「通報」をするということです。

ツイッターでもインスタグラムでも、投稿や投稿主を「報告する」という機能が「・・・」という点が3つ並んだサブメニューの中に存在します。

この「報告する」のデータを、プラットフォーム側は、自動、もしくは手動で判別し、該当の投稿や投稿主をプラットフォームから削除する判断の基準に使っているのです。

当然一人や二人が通報しただけでは、簡単にその投稿が削除されることはありません。

ただ、我々の目から見て明らかに誹謗中傷と思われる投稿であれば、それを目にした我々全員が「報告する」メニューから通報をすることによって、早期にプラットフォーム側に異常に気がついてもらうことは可能です。

悪質な誹謗中傷投稿を見つけたら、見て見ぬ振りをしたり、反論をするのではなく「報告する」ボタンを押しましょう。

■選手への応援やあたたかいメッセージで埋め尽くそう

なお、自分が応援しているアスリートの投稿に、ひどい誹謗中傷の投稿を見つけると、ついその投稿に反論したり、その投稿を晒すためにリツイートしたくなるかもしれません。

ただ、それは誹謗中傷投稿をより世の中に拡散してしまうことになりますし、投稿主を過激にして、さらに選手への誹謗中傷を続ける原因になりかねません。

そうなってしまっては誹謗中傷をしている相手の思うつぼ。

かえって選手を傷つける結果になりかねません。

水谷選手も、今回の誹謗中傷問題が白日のもとにさらされるきっかけとなるツイートを最終的には削除されているように、対立を煽る行為は、その瞬間は溜飲を下げられても必ず反発が戻ってきてしまいます。

我々が誹謗中傷に対して反撃できることは、誹謗中傷投稿の「通報」一択です。

法的措置などの反撃は、選手の関係者にお任せし、我々選手のファンは選手の投稿のコメント欄に、応援のメッセージやあたたかいコメントを書き込むことで、誹謗中傷投稿が選手の目に触れにくくする選択をしましょう。

皆さんの声は、きっと誹謗中傷で傷ついた選手の心を癒やしてくれる要素の1つにもなるはずです。

誹謗中傷のリスクを取ってくれる選手への感謝を

SNSでの誹謗中傷や炎上が嫌なのであれば、SNSをやめれば良いじゃないかという意見もあるでしょう。

私はSNS推進側の立場ですが、もちろん選手が辛いのであれば、SNSから距離を取ることも大切だと思います。

向いていないと思うのであればSNSをやめてしまうのも当然1つの選択肢でしょう。

ただ、逆にいうと、選手たちは誹謗中傷を受けるリスクがあるにもかかわらず、SNSを通じて私たちに想いや感謝を届けようとしてくれているということでもあります。

それによって、私たちはテレビやネットのメディアを通じてだけでなく、SNSを通じて選手本人から生の声を聞くことができているわけです。

今回の東京オリンピックは、本当に開幕まで様々な問題が注目されたオリンピックですので、SNSの誹謗中傷問題もその影響を受けているのは明らかです。

ただ、実はSNSの誹謗中傷問題に関しては、3年前の平昌オリンピックにおいては、韓国の選手と激しく接触したカナダの選手に1時間で1万件のコメントが殺到し、カナダ側が代表選手の安全確保に動いたり、警察が処罰に動いたりという非常に大きな事件がありました。

参考:平昌オリンピックの炎上騒動から、東京五輪を迎える私たちが学ぶべきこと

現在の東京オリンピックの誹謗中傷問題は、3年前の平昌オリンピックでの事件に比べると、まだ小さな問題で済んでいると考えることもできるのです。

東京オリンピックを、SNSの誹謗中傷問題が深刻化した大会として振り返ることになるか、SNSの誹謗中傷問題への断固とした対応の仕方が明確になった大会として振り返ることになるのかは、まだこれからのオリンピック関係者や競技団体の関係者の方々と、私たちの対応次第だとも感じます。

選手の方々が、SNSの誹謗中傷に悩まされることなく、競技に集中していただけるようにするために、私たちにもできることがあるはずです。