「日本の英語力は53位」というデマ報道が流れ出す季節になりましたね。

「日本の英語力は49位!英語力がまた下がった!タイにもベトナムにも負けている!」という記事をインターネット上で目にしたことが一度はあると思います。

 

この「日本の英語力は××位!○○共和国は××位!(以下略)」という話は、ほとんどの場合、信頼がおけないデータに基づいているので騙されてはいけません。また、文筆業の人は絶対に手を出してはいけません(能力を疑われます)。また、学生の方もレポートや卒論に入れ込むのはやめましょう(最悪の場合、留年します)。

怪しいEF英語能力指数

近年ネット上でバズる英語力ランキング記事の多くが、「EF英語能力指数」なるデータに基づいています。これは、EFという留学斡旋企業・教育企業が発表しているものですが、調査としてまったく信頼性・妥当性がありません。この調査を、PISAやTIMSSといった信頼性の高い国際学力テストのランキングと同系統のものだと思ったら大間違いです。

11月は、EF英語能力指数の最新版が発表される時期です。どうやらEF社は、プレスリリース等で営業攻勢をかけるらしく、バイラルメディアがこぞって「ニュース」にするのが11月です。そして、案の定、2019年版がつい先日発表されてしまいました

「日本の英語力が××位!」という話がバズるたびに、わたしはヤフーニュースでこのデータがいかにいい加減かを真剣に(ときにふざけて)発信してきました(記事は下記)。ただ、毎回、後手後手に回っている感は否めないので、先回りして記事を書きたいと思いました。

あらためて言います。「日本の英語力は53位!」という話はデマです。EF英語能力指数には信頼性・妥当性がありません。

これまでヤフーニュースで書いた記事

これまでの記事が以下です。いずれもなぜ信頼性・妥当性がないかをある程度文字数を割いて論じています(特に1つ目と2つ目)

「日本の英語力は49位」という朝日新聞の報道について

→ 昨年はバイラルメディアだけではなく全国紙がこのデータに手を出してしまった。その危機感から、丁寧に問題点をまとめた記事。

最近よく見かける「日本の英語力××位!」という調査はいったい何なのか?

→ 同じく、問題点を3年前に書いた記事。EF社の営業メールが生々しい。

英語ができると、幸福になる、GDPが上がる、南北回帰線から離れる…!?

→ EF社は、EF英語能力指数をもとに、「英語ができれば金持ちになる」と煽っているが、その浅薄さを統計漫談風におちょくった記事。

 

わざわざリンクをたどって読まない人のための問題点の要約

EF 英語能力指数の問題点の要点を以下にまとめます。

  • 代表性はない。EF社独自のオンライン英語力診断テストを受けた人の結果に過ぎない。(英語がよくできる人は「診断」テストを受けるはずがないし、まったくできない人・興味がない人も診断しようとは思わないわけで受けない)
  • 数値が乱高下している。点数が毎年大きくブレており、この点からも信頼性の乏しさは一目瞭然である。(たとえば、EF英語能力指数によると、日本は2015年までは香港よりも英語ができる国だった。下記のグラフ参照)
  • 営利目的。このランキングは、EF社がプロモーションの一環としてやっているものであり、調査のために作られたものではない。
グラフはEF社レポートをもとに筆者が作成したもの
グラフはEF社レポートをもとに筆者が作成したもの
データに欠損のない81の国・地域の推移。筆者作成。
データに欠損のない81の国・地域の推移。筆者作成。

追記(11月9日22:00)

この記事を読んで「この筆者は、日本人が英語ができないことを認めていない!日本の英語力が低いなんて世界の常識でしょ!」(大意)と吹き上がっている人がいます。決めつけも甚だしいです。どこにもそのようなことは書いてありません。

日本は完全な典型的非英語圏国です。イギリス・アメリカの植民地になった経験はない点、母語話者人口が非常に大きい点、大学教育・大学院教育の教授言語は自国語である点、貿易依存度は世界最低クラスである点、英語圏との人の移動は比較的小さい点、そして、エリート(官僚・ビジネスエリート)は主として国内の名門大学から供給される点。こうした特徴を持つ社会で英語力が低いのは当たり前です。

本記事の主張は、「EF英語能力指数によるランキングは信頼が置けない」以上でも以下でもありません。もう少し一般化した話、つまり、そもそも英語力ランキング自体が眉唾ものであることは、こちらの記事(「日本の英語力は49位」という朝日新聞の報道について)で論じています。