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トランプ米大統領は機密情報の重要性を判断できなかったとの指摘

立岩陽一郎InFact編集長
(写真:ロイター/アフロ)

トランプ米大統領が同盟国から提供された軍事機密をロシアに提供した疑いがもたれている問題。実はトランプ大統領が「機密情報」の重要性を判断できなかったとの指摘が出ている。大統領が「私にはロシアと情報を共有する事を決める絶対的な権限がある」などとツイートしたことから与党共和党の中でも懸念が広がっている。

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トランプ大統領は5月10日にホワイトハウスでロシアのラブロフ外相と会談した際に、ISイスラム国に関する高度な軍事機密を共有した疑いがもたれている。これについて16日の全米の朝のテレビは、引き続きトップニュースで伝えている。

このうちNBCニュースはCIA出身の専門家が出て、仮に事実であればその情報源の生命を危険にさらし、今後の作戦遂行に重大な懸念を生じると証言。また、情報を提供した同盟国との信頼関係は厳しいものになるとの見方を示した。

ニューヨークタイムズ紙は16日、問題の情報はイスラエルからもたらされたものだったと伝えた上で、イスラエル側から第三国との情報共有をしないよう求められていたとしている。更に、この情報がロシアを通じてイスラエルの敵国であるイランに渡る可能性も有るとしている。

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こうした中、トランプ大統領は、「私にはロシアと情報を共有することを決める絶対的な権限がある」などとツイートした。事実上、情報漏洩を認めたとも受け取れる大統領の言葉に、与党共和党からも懸念する声が出ており、事実関係を明らかにするよう求める声が強まっている。

ワシントンポスト紙が一報を出した段階で、イスラエルからの情報だろうとの見立てを話した元米国務省高官は次の様な驚くべき事実を語った。

「国務省に伝えられている話では、トランプ大統領は情報の重要性がわかっていなかったらしい。会談が終わって国家安全保障会議のメンバーが会談の記録を読んで慌てたという話だ」

(参考記事:トランプ米大統領弾劾求める声強まる ロシアに最高機密提供の疑いが浮上 ~トランプの米国とどう向き合うか? (91))

さらにイスラエルからの情報だったという点について次の様に話した。

「情報の提供先が割れたということは、会談での大統領による機密漏洩はほぼお間違いないのだろう。見立て通りだったと喜んでいる場合じゃない。イスラエルの情報だということは、これがかなり深刻な事態だということを意味している。イスラエルの情報機関モサドがもたらす情報は米国の安全保障に不可欠なものばかりだ。今後、イスラエルからの情報提供はかなり制限されるだろう。情報が来なくなれば米軍の活動が制限されるだけでなく、米国民の危険も増すことになる」

(参考記事:トランプ米大統領弾劾求める声強まる ロシアに最高機密提供の疑いが浮上 ~トランプの米国とどう向き合うか? (91))

更に気になることを加えた。

日本も無関係ではない。北朝鮮の情報というのはイスラエルからもたらされることもある。そういう情報はもう入ってこないということだろう」

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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