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米国で国の研究機関がコカイン使用者に研究参加を呼びかけ  保秘と報酬を約束

立岩陽一郎InFact編集長
コカインの使用者に協力を呼びかける広告を掲載した無料新聞「express」

世界有数の医療研究機関である米国の国立衛生研究所が、コカイン使用者に研究への参加を呼び掛けている。参加者のプライバシーは保護され、捜査機関への情報の提供も無く摘発される恐れも無いという。

コカインを使っていますか?

29日、若い男女の写真とともに、大きな見出しの広告が首都ワシントンで配られている無料新聞「express」に掲載された。

広告主はNIHとして知られる米国立衛生研究所。首都近郊にある世界有数の医療系の研究機関だ。日本からも含めて世界中の研究者が集って最先端の医療研究が行われていることで知られている。

米国でもコカインの販売、使用は違法だ。

しかし広告は、コカインを利用している18歳から55歳までの男女を対象として、研究への参加を呼びかけている。「秘密は守られるので直ぐに電話を」とも書かれている。目的は、脳への刺激がどのように脳の機能、人々の思考、人々の決断と、コカインの常用とに影響を与えるのか研究するためだとう

参加者は泊りがけのケースも含めて15日間拘束され、最大1240ドル、日本円にして約14万円の報酬があるとも書かれている。

NIHに詳しいワシントンのジャーナリストは次の様に話す。

「これは研究のために個人のプライバシーを守るということで、米国では研究機関を対象に認められている制度だ。捜査機関の問い合わせにも応じる必要はない。NIHの研究によってもたらされる成果の方が、何人かのコカイン中毒者を逮捕して得られる社会の安定よりはるかに大きいということだろう。これまでも行われていたのかもしれないが、この制度について批判を耳にしたことはない」

(参考記事:311緊急シリーズ「福島第一原発事故から6年」   「甲状腺がん多発 − 被曝の影響は本当に無いのか?」前編)

※NIH=National Institute of Health

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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