米トランプ政権のイスラム国への攻撃は市民の犠牲覚悟か?
ISイスラム国への攻勢を強めているトランプ政権。しかし米軍の攻撃で一般市民が犠牲になるケースが多発しているとの指摘が出ている。このため、市民の犠牲を回避するとした従来の戦術を米軍が転換したのではないかとの懸念が拡がり始めている。
米軍がその事実を認めた3月17日のモスル近郊での空爆では、多くの一般市民が犠牲になったことが付近の住民の証言などで明らかになっている。ワシントンポスト紙は、救出作業にあたっているイラク政府の担当者の話として、破壊された一帯から、女性や子供を含む多くの遺体が収容されたと伝えている。
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この他にも米軍の攻撃で市民が巻き添えになるケースが増えているという報告が後をたたない。英国に拠点を置きイラク、シリアでの空爆による犠牲者の数を検証している団体「エアワーズ」は、3月だけで市民約1000人に犠牲が出ていると指摘。過去最悪の数字だとしており、トランプ政権になってから米軍の空爆は明らかに一般市民を巻き込んだものになっているとしている。
米軍は3月17日の空爆について事実関係を調査しているが、このほかにも、トランプ大統領が就任して最初の軍事作戦となったイエメンでの特殊部隊による襲撃で子供を含む市民に犠牲者が出たとことが指摘されている。
トランプ大統領は就任以来、オバマ前政権のイスラム国への対応が生ぬるいと批判。市民を巻き込まないといった配慮が米軍の活動に制限を加えていないか国防総省に対して検討するよう求めているとされる。このため、米軍がイスラム国への攻撃を強化するために、市民を巻き込まないという従来の方針を転換させたとの懸念が拡がっている。
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28日、イラクで米軍の指揮を執るステファン・タウンゼント准将が国防総省担当の記者団の取材に応じ、「市民を巻き込まないという従来の方針を変えた事実はない」と述べて、懸念の払しょくに努めた。
しかし、ワシントンポスト紙が、「市民に対する大規模な殺りくという疑惑」という言葉を使うなど、トランプ大統領が進める対テロ作戦に対する疑問の声が大きくなっている。