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パリ協定の対応めぐってトランプ政権内で意見分かれる 

立岩陽一郎InFact編集長
娘婿のクシュナー氏らを従えてホワイトハウスを歩くトランプ米大統領(写真:ロイター/アフロ)

世界各国が温暖化の防止に取り組むとしたパリ協定への対応が注目されるトランプ政権だが、政権内で意見が分かれているようだ。ワシントン・ポスト紙が15日伝えた。

パリ協定をめぐっては、トランプ大統領は科学者が指摘する温暖化のメカニズムについて否定的な見解を示しており、今後、米国がどう取り組むのかが注目されている。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (18)~静かに、だが確実に広がりを見せている反トランプの動き)

ワシントン・ポスト紙は15日、アル・ゴア氏との電話でのインタビュー内容を掲載。その中でゴア氏は、「トランプ政権は現在、パリ協定についてどうするかを考えている最中だろう」と話し、「トランプ政権がパリ協定に残る判断をする可能性は現実的に高い」との見方を示した。ゴア氏はクリントン政権の副大統領として、温暖化防止の最初の本格的な取り組みである京都議定書の締結に尽力したことで知られる。

記事は、ホワイトハウス内の議論に詳しい複数の関係者からの情報として、協定への対応をめぐってトランプ政権内で意見が分かれているとしている。それによると、大統領の判断に強い影響力を持つスティーブン・バノン上級戦略官は協定に残ることに否定的な意見を持っているという。しかし、レックス・ティラーソン国務長官は協定残留派だという。そして実は、最もトランプ大統領に影響力を持つと言われる長女のイバンカ・トランプ氏とその夫で外交問題のアドバイザーを務めるジャレッド・クシュナー氏は協定に残るべきだと主張しているのだという。

(参考記事:いよいよ始まった米トランプ政権の脱「温暖化防止」政策(40))

ただ、ゴア氏はトランプ政権が協定に残る可能性が高いと考える具体的な根拠を示してはいない。

パリ協定は先進国も途上国も参加して温暖化の防止に取り組むことを決めたもので、温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減や輩出しないための技術開発が求められている。また、各国は削減目標を国連に提出しており、米国は2025年までに2005年比で最低26%削減するとしている。協定に残る以上、その目標を達成する義務がある。

トランプ大統領は今週中にドイツのメルケル首相と会う他、来月には中国の習近平国家主席と会うことになっている。両国ともパリ協定の締結で中心的な役割を担っており、首脳会談の際に議題になる可能性が高い。

(参考記事:311緊急シリーズ「福島第一原発事故から6年」「甲状腺がん多発 − 被曝の影響は本当に無いのか?」前編)

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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