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日本を担う次世代のエース本多灯は世界水泳福岡で世界の頂に挑戦する

田坂友暁スポーツライター・エディター
写真:高須力

 東京五輪と世界水泳ブダペストでメダルを獲得し、日本のエースと呼ばれるまでになった本多灯。世界水泳福岡ではエースの名に恥じぬ泳ぎで少しでも良い色のメダル獲得を目指す。

世界でメダル争いができる

エースへと成長を遂げる

 常に明るく、笑顔が絶えない。いろんな選手と分け隔てなく話し、その言葉からはネガティブな要素は見当たらない。本当に『元気』という言葉がピッタリな男こそ本多である。

 ジュニアの日本代表をステップに、あっという間に日本の200mバタフライの第一人者に駆け上がった本多。その勢いをさらに加速させ、2021年4月の日本選手権で当時の自己ベストを出して2連覇を果たし、東京五輪への切符を手にした。

 初めてのシニア代表にもかかわらず、物怖じすることなく五輪に挑んだ本多は、200mバタフライで8レーンから大逆転劇を見せて銀メダルを奪取。

 さらに2022年の世界水泳ブダペストでも落ち着いた泳ぎを見せ、同種目で銅メダルを獲得した。

「メダルを目標にしていたので、すごくうれしいです。課題もありますけど、自分らしい思い通りのレースができたと思います」

写真:高須力
写真:高須力

 本音を言えば、2年連続のメダル獲得のうれしさよりも、このレースで敗れたクリストフ・ミラーク(ハンガリー)、レオン・マルシャン(フランス)に対しては「2歩くらい後ろを走っている感じ」と悔しさが先に立つ。

「今回はラスト50mでバテてしまった。バタフライの体力はまだまだですし、タイムもベストじゃない。しっかり一からトレーニングし直します」

 現状に満足することなく新たな明確な目標を立て、そこに至る道と辿り着いた自分をイメージし、何をすれば良いかを考え、実行する。本多が世界チャンピオンになるべく歩みを進めるさまは、まさに日本のエースにふさわしい姿である。

 2000年代には北島康介から入江陵介に、世界で常にメダル争いができる選手の証拠であるエースの称号が渡り、2010年代に入るとそれは萩野公介や瀬戸大也に引き継がれた。それが今、2年連続で世界大会のメダルを手にした本多に受け継がれたのである。

自分が良い波を持ってきて

日本を大いに沸かせたい

 今年の日本選手権で200mバタフライを4連覇したことについてどう思うか聞かれたとき、本多はこう答えた。

「僕はずっとチャレンジャーであると思っていて。日本選手権で1位を獲り続けてきていることは良いことですけど、まだ日本記録も出せていないし、世界に比べたらまだまだちっぽけです。だから僕はこれからもずっと、いろんなものに挑戦し続けていきたいと思っています」

 今本多が取り組んでいるチャレンジは、パリ五輪での金メダル獲得だ。そのためにも、まずは世界水泳福岡で1分51秒台を出して日本記録を更新しておきたい。

「それができれば、前回大会よりも良い結果を出せると思いますし、金メダルの可能性も出てきます。さらに、その先のパリ五輪での1分50秒台と金メダルも見えてくる」と意気込む。

写真:高須力
写真:高須力

 世界水泳は、初日に400m個人メドレーが行われる。ここでまずは思い通りの泳ぎで狙った記録を出すことができれば、自分にも日本チームにも勢いをもたらすこととなり、さらに3日目に待ち受ける、本命の200mバタフライを良い流れで迎えることができる。

 底抜けの明るさと、選手としての強さを持ち合わせたエースは、きっとその泳ぎとコメントで日本を盛り上げてくれることだろう。

世界水泳福岡2023ガイドブックで担当執筆した原稿の抜粋、加筆修正版です。記事の全文、そのほか世界水泳情報は本誌でさらにお楽しみいただけます

スポーツライター・エディター

1980年、兵庫県生まれ。バタフライの選手として全国大会で数々の入賞、優勝を経験し、現役最高成績は日本ランキング4位、世界ランキング47位。この経験を生かして『月刊SWIM』編集部に所属し、多くの特集や連載記事、大会リポート、インタビュー記事、ハウツーDVDの作成などを手がける。2013年からフリーランスのエディター・ライターとして活動を開始。水泳の知識とアスリート経験を生かして、水泳を中心に健康や栄養などの身体をテーマに、幅広く取材・執筆を行っている。

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