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成田実生は初の世界水泳という大舞台で 素直な強い心を武器に世界と戦う

田坂友暁スポーツライター・エディター
写真:高須力

 高校2年生になったばかりの16歳の成田実生。憧れを捨て挑む世界の舞台で、成田はどんな泳ぎを見せてくれるのだろうか。

五輪選手ふたりを破り

個人メドレー2種目を初制覇

 今年の日本選手権で、200m個人メドレーでは東京五輪金メダリストの大橋悠依を、400m個人メドレーでは東京五輪代表の谷川亜華葉を破って2冠を達成し、今年の日本チャンピオンとして堂々と世界水泳福岡の代表入りを果たしたのが、16歳の成田だ。

 バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、自由形と4種目とも穴がなく、まさにオールラウンダーという言葉が当てはまる成田。得意なレース展開は、後半から徐々に追い上げていき、最後の自由形で逆転するパターンだ。

「日本選手権で優勝できたことはすごくうれしいです。200mと400m個人メドレーで代表に入ることができたので、感謝の気持ちを持って、自信に満ちあふれた泳ぎができるように頑張りたいと思います」

 また、世界水泳とはどういう舞台かと尋ねられた時の成田の返答が興味深い。

「憧れ、というよりは、目標という感じの舞台なので、しっかり結果も残したいと思います」

 憧れを持ってしまうと、それ自体が大きな壁となり乗り越えられなくなることは多い。しかし、成田は世界最高峰の大会を目標にする舞台である、と答えた。世界水泳で自分がどういう結果を出したいのかが明確で、その先へと進む準備がすでにできあがっている心の強さがあるから導き出せた答えである。

プレッシャーもなんのその

自分を貫き目指すは自己ベスト

 昨年はジュニアパンパシフィック水泳選手権、世界ジュニア選手権の2大会に代表入り。ジュニアとはいえ、成田にとって初の国際大会だったが、どんな大舞台でも全く物おじせず、マイペースを貫く強さは健在だった。

「緊張はしましたが、ピリッとした独特の雰囲気は楽しめました」と、先に行われたジュニアパンパシフィック水泳選手権で200m、400m個人メドレー2冠を果たす。

 その後の世界ジュニア選手権でも、移動疲れがあったが2冠を達成。2大会で2冠を果たし、その名を世界に轟かせた。

写真:高須力
写真:高須力

 今大会では、ジュニアの国際大会で活躍した成田に世界も注目することだろう。だが、成田本人はそんなプレッシャーなど全く意に介する様子は見受けられない。むしろ、遠足に行く前の小学生のようなワクワク、ドキドキした表情を見せる。世界水泳福岡でクリアしたい課題は、すでに分析済みだ。

「もっと前半を今よりも楽に速く泳げるように、バタフライを強化していきます。しっかりとベストタイムを目指して、観客の皆さんの前で、格好良い姿で泳げたらな、と思います」

 パリ五輪、そしてロサンゼルス五輪に向けた、成田の快進撃は福岡から始まる。その物語の序章を見逃す手はない。

世界水泳福岡2023ガイドブックで担当執筆した原稿の抜粋、加筆修正版です。記事の全文、そのほか世界水泳情報は本誌でさらにお楽しみいただけます

スポーツライター・エディター

1980年、兵庫県生まれ。バタフライの選手として全国大会で数々の入賞、優勝を経験し、現役最高成績は日本ランキング4位、世界ランキング47位。この経験を生かして『月刊SWIM』編集部に所属し、多くの特集や連載記事、大会リポート、インタビュー記事、ハウツーDVDの作成などを手がける。2013年からフリーランスのエディター・ライターとして活動を開始。水泳の知識とアスリート経験を生かして、水泳を中心に健康や栄養などの身体をテーマに、幅広く取材・執筆を行っている。

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