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月より輝く自分を福岡で見せる 自信を持って世界に挑む

田坂友暁スポーツライター・エディター
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 過去を振り切り、練習に前向きに取り組めるようになったことが、今井月の止まっていた時間を動かした。平泳ぎで挑む世界水泳で、今井はさらに高みを目指す。

止まっていた平泳ぎの時間を

動かしたメンタル面の成長

 中学1年生で初めて出場した日本選手権の200m平泳ぎで3位に入った今井。当時から、大好きな平泳ぎで日本を引っ張っていくような存在になりたい、と思っていたが、その後は平泳ぎの記録を思うように伸ばすことができずに月日が流れていく。

 だが、今井は平泳ぎだけではなく、クロールやバタフライなどほかの種目のレベルも高かった。そういうポテンシャルを持っていたからこそ、新しいチャレンジとして取り組んだ個人メドレーで、あっという間に日本トップクラスに登り詰めた。リオデジャネイロ五輪、2017年の世界水泳も、個人メドレーでの代表入りとなった。

 平泳ぎが伸び悩む中でも世界と戦えるチャンスを与えてくれた個人メドレーは、今井にとって大切な種目でもあったが、どこか物足りなさを感じていたのも事実であった。

「ずっと平泳ぎで日本代表になりたいな、という思いがあったんです」

写真:高須力
写真:高須力

 その悲願を遂げるべく、大学4年生となった昨年、思い切って練習環境を変えた。そこで変わったのは、練習内容ではなく、練習に取り組む自分の姿勢だった。

「今までは試合でも練習でも常にネガティブなことばかり考えていたんですけど、環境を変えたことで吹っ切れたというか。苦しくても、もうやるしかない、と前向きに練習を頑張ることができていました」

 メンタル面の改善が記録にも表れ、昨年のインカレ水泳で200m平泳ぎの自己ベストを7年ぶりに更新。そして今年、平泳ぎで初めて世界への代表権を獲得したのである。

「今までの自分を超えるというか、新しい自分を見せたい。月よりも輝いている自分の姿を、福岡の会場で皆さんに見せれるように頑張りたいと思います」

 大好きな平泳ぎで挑む6年ぶりの世界水泳は、楽しみしかない。

世界水泳福岡2023ガイドブックで担当執筆した原稿の抜粋、加筆修正版です。記事の全文、そのほか世界水泳情報は本誌でさらにお楽しみいただけます

スポーツライター・エディター

1980年、兵庫県生まれ。バタフライの選手として全国大会で数々の入賞、優勝を経験し、現役最高成績は日本ランキング4位、世界ランキング47位。この経験を生かして『月刊SWIM』編集部に所属し、多くの特集や連載記事、大会リポート、インタビュー記事、ハウツーDVDの作成などを手がける。2013年からフリーランスのエディター・ライターとして活動を開始。水泳の知識とアスリート経験を生かして、水泳を中心に健康や栄養などの身体をテーマに、幅広く取材・執筆を行っている。

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