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iPhone Xは「ながら運転」がしにくいスマホ

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
アメリカではセレブの運転中のスマホ利用もパパラッチが追いかけています(写真:Splash/アフロ)

運転中のスマホ利用は、日本に限らず、各国で禁止されています。運転車が注意することはもちろんですがスマートフォンメーカーも、運転中に使わせないような配慮を機能として盛りこもうとしています。

そんな中で、最新のiPhone Xは、運転中に使ったらより危険なスマートフォンになっていました。Appleがそれを狙っているかどうかはわかりませんが、その理由についてまとめます。また、スマートフォンの「ながら運転防止策」について、考えていきましょう。

日本での「ながら運転」厳罰化

産経新聞は、政府は携帯電話などを操作しながら運転するいわゆる「ながら運転」について、厳罰化する方針であると伝えました。早ければ1月22日から開催される通常国会に、改正法案を提出するとみられています。

・産経新聞:スマホ「ながら運転」厳罰化へ 事故なくても懲役6月以下 道交法改正案

記事によると、改正法案は、携帯電話などを操作して交通の危険を生じさせた場合、これまでの3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金から、1年以下の懲役または30万円以下の罰金に引き上げるとしています。

加えて、軽微な交通違反に際して、反則金を納付すれば刑事訴追されない交通反則通告制度の対象から除外される他、交通の危険を生じさせない場合でも、現状の5万円以下の罰金から、6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金へと厳罰化されるとしています。

スマートフォンの画面に集中し、指で操作していると、かなりの集中力を取られてしまう。そんな経験は、誰もが感じているのではないでしょうか。歩きスマホですら、人や電柱を避けきれずぶつかってしまう危険に見舞われますくらいですから、運転中に削がれる集中力がいかに危険か思い知らされます。

とくに人気のスマホゲームが流行った際には、それに起因する事故が多く報告される他、普段の文字でのコミュニケーションであっても、文字入力と変換、送信、返信を読む、といった一連の動作は画面に視線を取られてしまいます。自分のみならず同乗者や周囲の人たちの安全のためにも、避けるべき行動でしょう。

アメリカでも禁止のルールが早くから

ながら運転は、日本だけで問題になっているわけではありません。クルマ社会のアメリカでは、ことさら問題が大きくなりがちです。

高速道路を走らせていると、屋外広告や交通状況を伝える電光掲示板に、運転中のText(ショートメッセージ)をやめるよう呼びかけるメッセージがしばしば現れます。

酒気帯び運転はDWI(Driving While Intoxicated of alcohol)と略されて当然ながら禁止事項ですが、これをもじってDWT(Driving While Texting)などと呼ばれ注意喚起がなされています。あるいは、「返信するか、この瞬間に交通事故で死ぬか、どちらか選べ」といった過激なメッセージも見られます。

筆者が住んでいるカリフォルニア州では、2009年1月から、使用内容やメッセージ送受信の有無にかかわらず、運転中に携帯型電子機器を使うことが禁止されました。

州によっては、メッセージのやりとりのみが禁止されていたり、初心者に対してはハンズフリー通話も禁止、スクールバスや商業車のドライバーに限って禁止したり、特定の都市内で禁止されている州もあります。

ルールに差はありますが、米国においても、運転中にはスマートフォンに触れない方が良いことには変わりありません。ただし、後述しますが、運転中のスマートフォン利用の完全禁止が難しい事情もあります。

iPhone Xは、より運転中に注意が取られる可能性

iPhone Xに採用されたTureDepthカメラで、顔認証Face IDを実現する
iPhone Xに採用されたTureDepthカメラで、顔認証Face IDを実現する

さて、Appleが2017年11月に発売したiPhone Xは、おそらく今までのiPhoneと比較して、より運転中に使うべきではないデバイスになっている可能性があります。その理由は、新たに採用された生体認証方式にあります。

Appleは指紋センサーを用いたTouch IDから、顔認証を用いるFace IDへと、iPhone Xのセキュリティ機能を刷新しました。

Face IDでロックを解除するには、画面をタップもしくはiPhone Xを持ち上げて画面を点灯させ、iPhoneを見ることで、瞬時に顔が認証される仕組みです。

iPhone Xを試してみると、日常生活の中でも、顔認証のための「気づかい」が必要となることが分かります。

iPhone XでFace IDを利用する場合、ロック解除しようとする人は、iPhone Xのインカメラに自分の顔が収まる位置へ調整しなければなりません。しかしFace ID認証画面にはどの範囲が収まっているのか、そのプレビューが表示されないため、認証が解除される位置に端末を動かしたり、顔を移動させたりする必要があります。

加えて、標準設定では「注視」機能が有効となっています。この機能は、ロック解除したい人がiPhoneを見つめているかを検出しています。つまりロック解除が行われる時には、必ずiPhoneを見ていなければならず、その分だけ注意が奪われます。

iPhone 8まで搭載されてきたTouch IDは、見なくてもホームボタンを手探りで見つけることができ、そのまま指紋認証でロック解除することができます。その後の操作には画面に注意を取られる点は同じですが、少なくともロック解除のプロセスでiPhoneを見る必要はありませんでした。

そうしたことから、iPhone Xを運転中に操作する事は、今までのiPhone以上に危険である、といえます。

運転中にどうしても必要なスマホ

運転中のスマートフォン利用の禁止と厳罰化が進む流れと逆行し、運転中にスマホを必要とする人も増えています。特にアメリカで普及しているUberやLyftといったライドシェアサービスのドライバーは、アプリで顧客からの呼び出しに応じます。そのため、常にスマートフォンを操作したり注視しながら運転することになるのです。

多くのドライバーが空調の吹き出し口やフロントガラスにスマホホルダーを取り付け、手に持たなくても情報が確認できるようにしていますし、UberやLyftのアプリのインターフェイスもシンプルでタップ以上の操作をさせない仕組みを取り入れています。それでも、運転中のスマホ操作からは逃れられず、完璧な対策とはいえません。

また、中古車市場が活況な米国においては、多額のコストをかけて内蔵ナビを取り付けるぐらいなら、スマートフォンのナビゲーションで済ませてしまおう、という人がほとんどです。車にナビ機能がついていても、渋滞情報を加味した賢いルート案内を得るため、Googleマップを利用し、目的地までの到着時間を短縮しようとする人も少なくありません。

音楽やPodcastなどはスマホのアプリで楽しむ人が増えているため、結果として運転中のスマホ利用は拡大していく一方、というのが現状です。

運転中モードで対策

iOS 11で刷新されたAppleの地図アプリでは、車線表示を含むナビゲーションの強化が行われている。
iOS 11で刷新されたAppleの地図アプリでは、車線表示を含むナビゲーションの強化が行われている。

Appleは、運転中のスマホ使用に対する対策に乗り出しています。

最新のiOS 11の地図アプリでは、Googleマップのように、走行車線を案内する仕組みを取り入れ、曲がりそびれ、高速の出口を逃すといったリスクを抑えようとしています。そうした便利な機能に加えて、運転中の着信や通知を伝えない「運転モード」を取り入れました。

iOS 11「設定」アプリから、おやすみモード設定画面で、運転中モードの設定が行える。
iOS 11「設定」アプリから、おやすみモード設定画面で、運転中モードの設定が行える。

運転モードは、iPhoneのセンサーを活用して、運転中であることが検出されると、自動的に通知をオフにし、新着メッセージが着信したことをドライバーに伝えないモードになります。これは、夜寝ているときに通知が届かないようにする「おやすみモード」と同様で、あらかじめ設定した相手からの着信などは許可することもできます。

iMessageやSMSをメッセージアプリで着信した場合、「現在、運転中の通知を停止をオンにして車を運転しています。目的地に着いてからメッセージを読みます。」というメッセージが自動的に返信されます。しかし、相手が「至急」という文字を追加して送った場合は通知される仕組みです。

この機能をONにしていると、バスに乗っている時など、自分で運転していない時にも通知がオフになるため、もしクルマにBluetooth接続機能がある場合は、この機能の有効化の条件を「車載Bluetooth接続時」に設定しておくと良いでしょう。

車載機との連携も

iPhoneをクルマのUSBポートに接続して利用するCarPlay。iPhoneの一部の機能を画面のタッチもしくはSiriから利用できるようになる。
iPhoneをクルマのUSBポートに接続して利用するCarPlay。iPhoneの一部の機能を画面のタッチもしくはSiriから利用できるようになる。

また、AppleはiPhoneでCarPlayという名前で、GoogleはAndroid Autoという名前で、クルマの車載機とスマートフォンを連携させる機能を整備しています。

車載機側が対応していなければなりませんが、USBでクルマとスマートフォンを接続すると、スマートフォンの地図機能や音楽再生を車載ディスプレイで利用したり、スマートフォンのメッセージアプリを音声でのみ操作する機能が利用できます。

米国ではこれらの機能に対応する車載機が幅広いラインアップで選択できるようになりましたが、日本のメーカーでも、CarPlayやAndroid Autoを利用できるモデルが拡大しています。

Apple CarPlay対応ブランド

Google Android Auto

スマートフォンを車載ディスプレイと声で操作することになり、AppleならSiri、GoogleならGoogleアシスタントが活躍することになります。こうした対応も、クルマとスマートフォンを活用する上での安全対策として、今後より重要になっていくでしょう。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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