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WeWork利用者から見た、コワーキングスペースのフィットネス参入

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
筆者の仕事場、WeWork Berkeleyの5Fのラウンジ。

Quarzによると、170億ドルの企業価値に成長したコワーキングスペースのグローバルブランド、「WeWork」が、ニューヨークからフィットネスに参入すると伝えています。WeWorkの求人情報から明らかになったものです。WeWorkにはソフトバンクも投資しており、日本でも複数のロケーションで準備されているという話題も耳にします。

WeWorkはすでに、「WeWork Wellness」のブランドで、ニューヨークなどのいくつかのロケーションで、ヨガやダンス、キックボクシング、瞑想(メディテーション)などのクラスを用意し、専用アプリから予約できる仕組みを作っています。

私が利用しているWeWork Berkeleyでも、会議室でのメディテーションのクラスが用意されたり、5Fのラウンジに組み立て式の室内アスレチック器具を持ち込んで、即席のフィットネス・アクティビティを用意したりしています。メンバーに登録して利用している人は、これらのアクティビティに無料で参加できます。

今回、ニューヨークには、常設のジムを設置するようで、メンバーが自由に利用できる場所として、人気を集めそうです。

ライフワークに注力する「Do what you love」コンセプト

WeWorkのメンバーになると、黒いカードキーが渡されます。その裏に書いてあるキーワードが、「Do what you love」。あなたが好きなことをやりなさい。そんなメッセージこそ、コワーキングスペースWeWorkのコンセプトです。

また、単にコスト面で有利なシェアオフィスを提供するだけでなく、仕事に行きたくなる場所を作ることに注力していることも特徴です。

普通、金曜日を迎え、1週間を無事に終えられて感謝するという意味の「TGIF」(Thank God, It's Friday.)が一般的ですが、WeWorkではその逆、「TGIM」(MはMonday)というキャッチフレーズもあります。

例えばWeWork Berkeleyでは、月曜日の朝、ヨーグルトバーをロビーに出すなど、お楽しみを企画し、TGIMを盛り上げます。もちろん、「自分の仕事をしに行くことが楽しみで仕方ない!」という気持ちで仕事をしようぜ、という場所なので、あくまでちょっとしたきっかけに過ぎないわけですが。

仕事中心の生活をあらゆる面でサポートするWeWork

WeWorkは、毎日通いたくなる素敵な仕事場の提供だけではありません。メンバー間の交流を促進するイベントや、オンラインでのコミュニケーション、仕事の受発注に人探しと、リアル・オンラインを織り交ぜて、「それぞれ働く、けどみんなで頑張る」という環境を作り上げています。

同時に、大半が個人や小規模な企業が入居している事情に合わせて、WeWorkはメンバー向けに、福利厚生を提供しています。仕事に関わるソフトウェアやクラウド、会計、人事といったツールの割引にはじまり、健康保険、旅行時のホテルやレンタカーの割引優待などが取り揃えてあります。

その中に、フィットネスクラブの優待も既にラインアップされています。Equinoxというおしゃれなフィットネスチェーンと組んで、メンバーは、割引価格でジムやスパを利用できます。ちなみに最近、バークレーにもEquinoxがオープンしたばかりです。

またWeWorkは「WeLive」という住居にも取り組み始めました。このことからも分かるとおり、WeWorkで仕事に打ち込む人の生活を、様々な角度からサポートしていこう、という姿勢が表れています。

前述の通り既にフィットネスクラブの優待が福利厚生に含まれていたくらいですから、WeWorkが自前のジムを持つことにも、さほど大きな違和感はありません。

米国における「ジム」

少し視点を拡げて、WeWorkはコワーキングスペースとしてジムに取り組み始めるわけですが、米国の不動産業者がジムを活用して、不動産価値を高める手法は珍しくありません。

少し新しい集合住宅であれば、住人が無料で使えるジムが設置されていないほうが珍しいです。シアタールームやバーベキューのスペース以上に、ジムは重要なアイテムとなっています。

Equinoxなどもそうですが、ジムがWi-Fi完備のリラックススペースを用意したり、健康食にこだわったカフェを配置するといったこともまた、これまで行われてきていることです。

親和性のある施設を併設することで、利便性と価値を高める、そんな1つの方法論を、WeWorkも取り入れたとみてよいでしょう。

バークレーの場合…

WeWork Berkeleyは、高速鉄道BARTのDowntown Berkeley駅から徒歩3分ほどの位置にある7階建てのビル一棟まるごとシェアオフィススペースになっています。1階部分にはBlueBottle Coffeeに続いて、ラーメン屋のIppudo(一風堂)が6月はじめにオープンします。

残念ながら、WeWork Berkeleyの建物の中にジムを併設するのは難しそうです。ただ、前述の通り、Equinoxが新たにでき、より駅前に近いところにはYMCAのジム・プールがあり、UC Berkeleyの大学ジムも利用できます。24時間フィットネスもちょうど良い間隔で配置されています。

仕事の前に、あるいは合間、仕事の後にジムによって汗を流す、というライフスタイルは、実はかなりやりやすい環境と言えるでしょう。

ただ、ジムはみんな黙々とワークアウトに励んでおり、会話が生まれるような雰囲気ではありません。WeWorkのジムは、オフィスのラウンジスペースさながらの、もう少しオープンな雰囲気になるのかもしれませんね。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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