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地球の持続可能性の取り組みを緩めない - テック企業とトランプ大統領の新たな対立

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
サンフランシスコ近郊の風力発電施設(筆者撮影)

米国のドナルド・トランプ大統領とシリコンバレー企業は、移民問題や米国内の製造業の問題で対立してきました。新たな火種は気候変動についてです。

オバマ政権時代、「気候変動は最大の脅威」として再生可能エネルギーへの転換などに取り組んできました。しかしトランプ大統領は選挙期間中から、気候変動に対して懐疑的な立場で、石油パイプラインや沖合石油掘削など、化石燃料を資源化して活用することに対して積極的で、「気候変動より米国内経済」という方針で動いてます。

トランプ大統領が気候変動に関する取り組みを見直す大統領に署名しました。

CNN: トランプ氏、気候変動対策見直しの大統領令に署名

これを受けて、米国のテクノロジー企業やウォルマートなどがこれに反対する声明を出しています。

https://www.bloomberg.com/politics/articles/2017-03-30/apple-wal-mart-stick-with-climate-pledges-despite-trump-s-pivot

これらの企業はオバマ政権時代のClean Energy Planに賛同し、ウォルマートは2016年のパリ協定にも参加している企業です。

Apple, Wal-Mart Stick With Climate Pledges Despite Trump’s Pivot

米国では、再生可能エネルギーについて、太陽光発電に対する投資額の3割を法人税から控除する優遇を受ける事ができています。Appleは新本社Apple Parkに17Mwの出力を誇る再生可能エネルギー施設を構築しますが、これもその税優遇の枠組みの中で作られたものと言えます。

テクノロジー企業の取り組み

ちなみに、Appleのボードメンバーには、気候変動について問うたドキュメンタリー映画『不都合な真実』で有名なAl Gore氏がおり、また、2016年3月のイベントで環境問題に関してステージに立ったAppleの副社長Lisa Jackson氏は、米国環境保護局(EPA)出身の人物でした。Appleは現在の再生可能エネルギーの比率について、全世界のAppleのビジネスにおいて93%と発表しており、100%を目指しているといいます。

最近ではサプライヤーのイビデンが、Apple向けの製造に関して、再生可能エネルギー投資を行い、エネルギー転換をすると発表していました。加えて、Appleは製品ごとの製造や使用に関する省電力性を高めることで、エネルギーの削減のインパクトを表現しています。確かに、年間2億台が販売され、それが稼動するiPhoneの電力消費が少しでも改善するだけで、インパクトは大きいわけです。

Apple - Environment - Climate Change

AmazonやGoogle、Appleも、データセンターの再生可能エネルギー化などを一挙に進めた背景には、もちろん気候変動が脅威であるという見方に賛同した側面はありますが、税の優遇措置もインセンティブになっていました。

Googleは、2017年に、再生可能エネルギー100%を実現しており、他の企業や官公庁と比較して圧倒的に多くの再生可能エネルギー買い、そうした購買活動によって、6年前に比べて、再生可能エネルギーのコストは風力発電で6割減、太陽光発電で8割減になったとしています。

Google - Environment - Projects

Amazonは、AppleやGoogleと比べて、インパクトのある数字を出せているわけではありません。2016年に40%、2017年に50%を再生可能エネルギーに転換するというゴールを、Amazon Web Serviceでは掲げています。現在は、米国の一般家庭24万件の年間電力をまかなう発電量を誇り、もちろんゴールは100%再生可能エネルギー化です。

Amazon Web Service: AWS & Sustainability

変わる政策と科学の対抗

2015年12月の省エネ税控除の延長には、共和党が求めてきた40年ぶりの石油輸出解禁も盛りこまれてきましたが、政権交代によって、再生可能エネルギーに対する税優遇が不公平だ、というバランスに変わったと考えられます。

ナショナルジオグラフィックは、昨年11月、トランプ氏が当選するなら、クリントン氏当選よりも、二酸化炭素が16%多く排出される、との試算を紹介しました。それでもトランプ大統領は、オバマ政権時代の気候変動を前提とした環境対策を「有害で不用」と切り捨てているのです。

ナショナルジオグラフィック: トランプ次期大統領が引き起こす気候変動の危機

米国の気候変動に関連する機関でも抵抗が続いています。特に活動が制限されているのは環境保護局(EPA)で、SNS投稿や講演の予定など、気候変動に関する情報発信ていたといい、活動が大きく制限される自体になりました。またEPAのページからは、気候変動に関する記述が削除されています。

ハフィントンポスト: 気候変動に懐疑的なトランプ政権、NASAや環境保護局に圧力 現場では必死の抵抗が続く

気候変動に肯定的な科学者も、今回のアクションに対して「オルタナファクト」などの言葉を使いながら反論しています。ただ米国の高等教育では。州政府の予算以上に、政府からの予算による拠出が大きく、こうした反論の声にはリスクが伴います。

政府は、足下の経済を強くするより短期的なゴールに対しての約束を果たそうとしています。企業は、特に始まったばかりのテクノロジー産業も含めて、4〜8年という現政権よりもより長期間の持続性を作り出そうとしており、もちろんそれらがブランドとして顧客の選択や価値判断に直結することを意識しています。そして科学者は、それぞれの立場で真実を貫こうとする。

こうしたなかで、消費者がどのように判断するのか。実際の消費者がなんらかのメリット、デメリットを感じる段階にはありませんが、それも含めて、注目して生きたいと思っています。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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