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スターバックスがシアトルにオープンした「夢のコーヒー焙煎所」

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
スタバの焙煎所付き最新店舗 All photos by Starbucks

スターバックスの最新の旗艦店は、焙煎所付きカフェでした。

米国スターバックスは、シアトル・キャピタルヒルに「Starbucks Reserve Roastery and Tasting Room」をオープンしました。

大きな工場に作られた世界最大のスターバックスの店舗。焙煎機が置かれ、せっせとコーヒー豆を焙煎する風景が見られます。そのすぐ横で、スターバックスの高級ラインとなる「Starbucks Reserve」の豆を楽しむ事ができる、そんな店舗です。

シアトルの広大な建物に作られた、夢のようなコーヒー焙煎所。
シアトルの広大な建物に作られた、夢のようなコーヒー焙煎所。

何しろ広大なスペースです。焙煎機を中心とした工場、2つのテイスティングバーの他に、図書室、独立したレストランまでが、1つの屋根の下にあります。新しい時代のスターバックスのブランドを発信する、重要な店舗になることは間違いありません。

焙煎所と2つのテイスティングバーに加え、独立したレストランも併設。
焙煎所と2つのテイスティングバーに加え、独立したレストランも併設。

地元の新聞Seattle Timesは「スタバの未来」として紹介しており、Fast Company Co.Designは「コーヒーのWilly Wonka」と紹介しています。

Willy Wonkaとは、「チャーリーとチョコレート工場」が最初に映画化された際のタイトル。邦題は「夢のチョコレート工場」。これだけの広さと充実ぶりはコーヒー好きとしてはぜひ行ってみたい「夢のコーヒー焙煎所」といえるでしょう。

この高級ラインの豆のみを提供する店舗は今後、世界的に拡大していく予定で、2015年にはシカゴ、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ワシントンD.C.といったコーヒータウンを網羅し、2016年にはアジアにも展開するとのことです。

カウンターから伸びるドリップバーなど、最新のコーヒー機材が揃えられている。
カウンターから伸びるドリップバーなど、最新のコーヒー機材が揃えられている。

クルミ材のテーブル、銅をあしらった内装は、オランダのデザイナーLiza Muller氏によるもの。そしてコーヒーを楽しむには、エスプレッソマシーンや、サイフォンに加え、Modbarのカウンターにビルドインしたドリップマシーンやエスプレッソマシーンを使い、多彩なコーヒーの楽しみ方を体験することができます。

スタイルだけでなく、本質的なサードウェーブの発展を

この店舗の本質は、スタバ自身が扱うコーヒー豆の変化にあると考えられる。
この店舗の本質は、スタバ自身が扱うコーヒー豆の変化にあると考えられる。

今までのスターバックスとは全く違うスタイルの店舗が、Starbucks Reserveのブランドで世界に広がっていく。スターバックス自身は、「スーパープレミアム」のコーヒーをこのブランドで目指していることから、1杯の値段も今までの1.5倍から2倍以上になるかもしれません。

そして、焙煎所とカフェを併設する、天井の高いウッディーな空間は、サンフランシスコ周辺で広がるサードウェーブコーヒーカルチャーのアイコンにも一致しています。

簡単に言えば、「スタバが巨大な資本でサードウェーブをキャッチアップする」という位置づけになります。スターバックスが習うのは見た目だけではありません。

サードウェーブの本質である、コーヒー豆の流通にも、影響を与えていくことになりそうです。

サードウェーブでは、ファースト、セカンドが必要とする流通量に合わないような、スモールバッチと呼ばれる、少ない流通量のコーヒー豆が扱われます。稀少豆も含まれますが、中には生産量が少ないために廃れてしまった品種もあります。サンフランシスコ周辺のカフェはこれらの豆に目を向け、「農園に投資をする」といった活動が広がっています。

今回、既存のサードウェーブ系焙煎所とは比べものにならないほどの資本を持つスターバックスが、こうしたスモールバッチに目を向け、取り扱いをはじめたことは、農産物としてのコーヒーの地位向上と、価格の安定などに、大きな貢献をすることになるのではないでしょうか。

そういう意味も含めて、「夢のコーヒー焙煎所」として、期待したいと思います。

All Photos by Starbucks

Story by茶太郎豆央(Facebook)|chataromameoh.com

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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