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世界初のSiri対応車は高級車にあらず - シボレーのコンパクトカー、ソニック

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
2013年モデルのシボレー・ソニック。低燃費とハイテクで若者への訴求を強める。

シボレーのテレビコマーシャルで、世界初のSiri対応車が紹介されていました。そのクルマは高級車ではなく、約150万円から購入できるコンパクト・カー「Sonic」への搭載でした。ここに、新しい米国ブランドの展開を見ています。

クルマの詳細はこちら。そのCMはこちら。

クルマのハンドルにボタンが内蔵されており、iPhoneユーザーはこのボタンからSiriを呼び出し、音声でスマートフォンを操作したり、新着メッセージを読み上げてもらったり、電話をかけたりできるという仕組みです。ボタンが内蔵され、明確にSiriをサポートしたという点で世界初、ということです。

一応、ブランド名として「Siri Eyes Free」と名付けられており、シボレーのウェブサイトからAppleのSiriのFAQのページへリンクが張られています。

ちなみに、AppleはWWDC2013でiOS 7の新機能として、クルマのディスプレイとより深い連携を取れるようにするiOS in the Carを発表しています。ナビゲーションやメッセージなどの機能をクルマのディスプレイに呼び出して利用する仕組みを披露しています。

今回の対応は、その前段階、という位置づけになるのではないでしょうか。

高級車でなく、コンパクトカーから対応

世界初のSiri対応車がラインアップの中で最も安い車種からスタートした点は、面白いと思っています。

もちろん高級車は、搭載するデバイスにもこだわりを持たせ、競争するポイントになっている点はあります。テクノロジーサイドの新機能を安い車に入れていく点は、こうしたコストを下げることにもつながるでしょう。

一方で、新しい米国ブランドの代表となったAppleを上手く取り込もうという戦略は、米国内の若者に対してだけでなく、世界中の若者に対しての訴求に役立つのではないでしょうか。iPhoneユーザーのみを対象とするため市場を狭めてしまいそうです。しかしターゲティングとブランディングを済ませた層を捕まえることにもなります。

現在、Appleとともに米国から世界へ羽ばたいた新しい米国のブランドにStarbucksがあります。クルマとスタバを混ぜるのはちょっと難しいかも知れませんが、マーメイドとリンゴマークが当たり前のライフスタイルを送る人たち、という「パス」ができあがっているのではないでしょうか。

自動車に限らず、米国の各企業がこうした「パス」をどのように生かしていくのか、注目してみたいと思います。また、こうしたブランドをいかに育てるかは、日本にとっても課題となるでしょう。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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