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LightningコネクタとiPad mini - ちょっとした心理について

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
結局購入したLightning-Dock変換アダプタ

いよいよ11月2日は、iPad miniの発売となります。これに先立ち、先日Apple Storeで、Lightning- 30pin Dockアダプタを購入しました。米国で$29、日本の価格は2800円。決して安くない、というよりはむしろ高い金額です。

これまでDockコネクタを搭載してきたiPadのSDカードリーダーや、家に束のようにあるDockケーブルを有効利用したいと言うことで、変換アダプタを購入しましたが、これを決めるまで、この「むしろ高い金額」が、微妙な心理を誘っていました。どちらかというと、財布に悪い方向です。

DockコネクタはAppleデバイスの顔だった

これまでAppleは、iPod以来、この30pin Dockコネクタを搭載してきました。iPod、iPhone、iPadに対応し、同期や充電だけでなく、音声やビデオ出力にも対応するため、外付けのスピーカーや外部マイクの接続などにも利用できました。独自形式という批判もありますが、iPodやiPhoneらしさの一部をになっていた存在であったことは間違いありません。

製品を買い換える度に新しいケーブルが付属してきます。夫婦でiPhoneを使っていて、さらにiPadもあると、家にはまだ使い始めていないケーブルが3本余っている状態になります。旅行でなくしても、断線して使えなくなっても、「換えがあるからまあ良いか」という思っていました。

ところが、9月に発表・発売されたiPhone 5以降、30pin Dockコネクタは使われなくなり、変わってLightningコネクタを搭載するようになりました。これまでよりも省スペースになり、横幅の変わらないiPhone 5では、マイクとスピーカーの開口部が拡大し、これまで端末上辺にあったイヤホンマイクのジャックも底辺に移動してきました。

そこで困ったのが、これまでストックしてきた30pin Dockケーブルと、Dockに対応したアクセサリの処遇です。もちろんそのままでは利用できず、新しいケーブルを買うか、冒頭に紹介したLightningと30pin Dockの変換コネクタを挟むしかありません。

この変換コネクタは2800円、LightningのUSBケーブルは1880円。ケーブルの方が安いじゃないか、と思われるかも知れませんが、何本も余っているDockケーブルやアクセサリを有効活用するなら、と高いコネクタを買うことにしました。1000円弱の差が、なんだか悔しいところです。

Lightning登場!ケーブルやコネクタを買うべきか悩まされる

しかし今後、iPad mini、iPad Retinaディスプレイモデル、iPod touchと、新しいデバイスは全てLightningコネクタで登場してきます。これまで通りデバイスを買えばケーブルが1本付いてくることを考えると、ケーブルだけを買うのはなんだかもったいない気がしてしまうし、さらに言うと変換コネクタですら、いらないんじゃないか、と何度もためらってしまいました。

1880円でケーブルを買う、2800円で変換コネクタを買うなら、他のアイディアが出てきます。12800円のiPod nanoを買えばiPhoneの電池を気にせずに、あるいはトレーニングの時により軽快に音楽が楽しめるし、28800円のiPad miniに興味があるなら、ケーブルを買わなくても良いだろう、と思ってしまいます。

しかししかし、それはiPhone 5以外に、Lightningコネクタ搭載のデバイスを買うことが前提の思考であることに、ふと気付かされます。よく考えれば、ケーブルやコネクタの5〜10倍の金額を、ホリデーシーズンに使いそうになっていることに気付き、慌てて変換コネクタを購入して事を収めました。少し大げさな話ではありますが。

Dockの頃のように、Lightningコネクタでもまた、iPhoneやiPad、iPod独自のエコシステムを構築してデバイスそのものの魅力を高めるよう努めていくことになるでしょう。同時に、規格が変わるタイミングで、むしろ高いと感じるコネクタやケーブルの価格設定と、毎回ケーブルが付いてくると言うiPod以来のこれまでの刷り込みが、狙っている、狙わざるを問わず、巧妙なマーケティングツールになっているように感じました。

もしAppleが、汎用性の高いmicro USBコネクタを採用していたら、こんな悩みは発生しなかったのに、とは思いますが。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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