「日本を愛していた」父を思い涙

 突然の涙だった。

 15日に開幕し、第2節を迎えた男女V1リーグ。今季初のホームゲームで大分三好ヴァイセアドラーに連勝を飾った、ウルフドッグス名古屋のクリス・マクガウン新監督は、新主将のバルトシュ・クレクと共に笑顔で会見場に現れた。

 まず対戦相手の大分三好を「非常にいいチームで、非常にいい試合となった」と称えた後、自チームが集中力で勝ったこと。マクガウン監督が目指すバレーボールのシステムと、選手の長所や取り組み方がどうマッチしていくか、これからが楽しみだと笑顔で質問に応じていたが、かつて父のカール・マクガウン氏も日本のNECブルーロケッツで指導に携わっていたこと。その同じ日本で自身も監督を務めることについて問うと、顔を覆い、言葉を詰まらせた。

 2016年に79歳で他界した父を思い、数十秒に及ぶ涙と沈黙の後、マクガウン監督が噛みしめるように言った。

「彼(父)のことを毎日思います。彼のアドバイスが恋しい。私が今、日本で指導できるのはとても素晴らしく、特別なことです。父は日本のこと、日本の人たちのことをとても愛していました。家に戻ってくると、いつも日本の素晴らしいことを楽しそうに話してくれて、それを聞くのがとても楽しかった。家族の伝統を、このような形で引き継ぐことができたことを、とても、嬉しく思っています」

 ごめんなさい、と涙を拭い、再び笑顔で続けた。

「世界中で知られている通り、日本のバレーボールは基礎的な技術のレベルがどの選手も非常に高い。さらに素晴らしいのは、身体の強さ、大きさに頼ることができない分、技術を磨き、素晴らしい技術があるにも関わらずさらに向上させようとすること。私たちのチームの選手も、技術はもちろん、ダイナミックにプレーできる強い身体、ジャンプ力、機動力を持ち合わせた選手ばかりですよ」

新主将はポーランド代表のクレク「監督を信頼している」

 ウルフドッグス名古屋は2013年からクリスティアンソン・アンディッシュ氏が監督に就任、15/16シーズンにVリーグ初優勝を遂げた。17年から昨季まではトミー・ティリカイネン氏が指揮を執り、Vリーグで準優勝。通訳を挟まず、選手と監督が英語で話し、コミュニケーションを取りながら掲げられるコンセプトを理解、体現してきたチームだ。

 リードブロックやスパイカーの打点を活かした攻撃、ブロックとディフェンスのシステムはこれまでも築かれてきたが、今季からはマクガウン監督が指揮を執り、また新たなスタイルが構築されようとしている。

 セッターの前田一誠は言う。

「クリス監督の理想とするバレーボールがあり、僕たちの個性、特徴がある。どちらに傾きすぎてもいけないし、1つ1つコミュニケーションを取りながら、ここはこうしたほうがいい、と折り合いをつけていくこと。セッターに対しては、監督からは“スパイカーがしっかり打てるトス”を要求されていますが、中にはスピードを武器とする選手もいるので、監督のプライオリティと選手の個性をうまく組み合わせられればいいと思うし、お互いの意見を尊重しながら、長いリーグを戦って行けたら、と思います」

 まだ始まったばかり、とはいえ、選手やスタッフとの信頼関係も着々と築かれており、新主将となったクレクも「個人的にもアメリカのバレーボールに触れるのは初めての機会」と述べ、クリス監督への信頼を寄せる。

「それぞれの国にカルチャーがありますが、私は彼自身、そして彼のバレーボールがとても好きです。チームに浸透させるのはその都度プロセスがあり、時間もかかることですが、今も少しずつ浸透している。私も、チームメイトも彼を信頼しています」

 ウルフドッグス名古屋のマクガウン監督のみならず、今季はジェイテクトSTINGSのフェデリコ・ファジャーニ監督、大分三好のムレイ・ポール監督、堺ブレイザーズの千葉進也監督と、Ⅴ1男子は10チーム中4チームで新監督が就任した。

 それぞれの哲学、理想とするスタイル、コミュニケーションの取り方。そして、涙するほどの思い――。

 1つ1つがどのようにチームとフィットし、それぞれの手腕がいかなる形で発揮されるのか。

 さまざまな“変化”が楽しみだ。