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Omoinotake メジャー初アルバムは多彩な音楽性、これまでとこれからを鮮やかに映し出した快作

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供(全て)/ソニー・ミュージックレーベルズ

極上の踊れて泣けるポップスが詰まった、新たな名刺代わりの一枚が完成

メジャー1stアルバム『Ammolite』(9月6日発売/通常盤)
メジャー1stアルバム『Ammolite』(9月6日発売/通常盤)

9月6日、Omoinotakeがメジャー1stアルバム『Ammolite』をリリースした。島根県出身の藤井怜央(Vo, Key/レオ)、福島智朗(B/エモアキ)、冨田洋之進(Dr/ドラゲ)はストリートライヴで自分達の音楽を少しずつ伝え始め、2021年「EVERBLUE」(TVアニメ『ブルーピリオド』主題歌)でメジャーデビュー。結成から9年が経っていた。インディーズ時代から素晴らしい作品をたくさん残してきたが、本人達もファンもまさに“待望”したのがこのメジャー1stアルバムだ。そのアルバムに『Ammolite』と名付け世に送り出した3人に、この作品に込めた思いをインタビューした。

彼らのライヴを初めて観たのは2019年9月。その時のことをSNSに「心を撃ち抜かれた。ポップネスの向こう側に色々な音楽の薫りを感じ、声、歌、曲が圧倒的にいい。アレンジ、演奏も素晴らしい。全ての要素が交錯して生まれる、あのクールでメロウで強くて優しいグルーヴはやみつきになる」と投稿した。彼らの音楽はすでにシーンでは話題になっていたが、4年前、興奮気味に書いたこの文章を読むと、その後の躍進を予感させてくれるエネルギーを感じたことを思い出す。

ライヴが評判になりファンを増やし、数々のタイアップソングでさらにファン層を拡大

Omoinotakeはライヴを精力的に行ない、ライヴの良さが評判になりファンを増やしていったが、一方で、数々のタイアップをきっかけにさらにファン層を拡大していった。この1st アルバム『Ammolite』には、最新曲「渦幕」(読売テレビ・日本テレビ系ドラマ「彼女たちの犯罪」主題歌)、「幸せ」(TVアニメ『ホリミヤ -piece-』OPテーマ)、メジャーデビューシングル「EVERBLUE」(アニメ『ブルーピリオド』OPテーマ)、「心音」(映画『チェリまほTHE MOVIE』主題歌)、「モラトリアム」(劇場アニメ『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』主題歌)など、数々の人気アニメとのコラボ作品が収録されている。さらに注目のYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」にインディーズながら出演し、話題を集めた「One Day」、今年3月にリリースした地元・NHK松江放送局90周年記念曲に選ばれた「オーダーメイド」、そして新録曲「Blessing」「Ammonite」「トートロジー」が収録され、彼らの多彩な音楽性と、これまでとこれからを鮮やかに映し出した一枚になっている。

「ベストシングル集のようなアルバムではなく、バンドとしてどう多面的に見せられるか」

「先発して出ているリード曲的な、タイアップで出させてもらっていた曲が多くて、全部知っている曲が並んでいる、いわゆるベストシングル集のようなアルバムになりがちだとは思うので、アルバム曲的な立場の曲を入れ、バンドとしてどう多面的に見せられるかを考えました」(福島)。

「今までEPが多かったので、アルバムという括りでまだ見せていない僕達の色を見せたいと思いました。何を入れるべきか考えた時に7割くらいが明るい曲で、でも僕はOmoinotakeの明るくない、切ない曲も好きなのでそういう曲を新たに作ろうと思いました」(藤井)

「配信でリリースした曲もあるので、こうやってCDになったのは嬉しいです。大切な1stアルバムだけど、僕自身としてはまだアルバムが完成したという実感が正直なくて。やっぱりライヴで演奏して見せ方が変化していったり、こういう聴かせ方ができるという解釈が深まっていくと思うので、それを経てから“作り上げた”っていう感覚になると思います」(冨田)。

「このアルバムが聴き手にとって時間と共に色みを変えていく存在であって欲しいと思いました」

アルバムタイトル『Ammolite』に込められた意味。ファンに届けたい思い。

「このアルバムは陰から陽、結構起伏の激しい色々な表情を見せるものになると思ったので、見る角度によって色々な色に見えるという意味で、最初に構造色というワードが浮かびました。色々な曲が入っているから、ということでもありますが、例えば自分の青春時代に出会ったアルバムを、時間が経って今の自分が聴いても、その時の自分によって聴こえる角度がどんどん変わっていくのがすごく面白いなって思って。このアルバムも聴き手にとってそうやって時間と共に色みを変えていく存在であって欲しいと思いました。アンモライトはアンモナイトの化石が時を経て色々な光を持った宝石に変わっていったものなんです」(福島)。

「Ammonite」はアルバムの最後のピース

冨田洋之進(Dr)、藤井怜央(Vo, Key)、福島智朗(B)
冨田洋之進(Dr)、藤井怜央(Vo, Key)、福島智朗(B)

「Ammonite」は3人の強い思い、これまでもこれからも音楽を響かせ、多くの人に希望を届けるんだという確固たる思いが、ボーカルから真っすぐに伝わってくる。

「この曲はメジャーデビュー直前、3人で初めて合宿をやった時にできた曲の中のひとつで、3人で何をやるべきかとか制作スタイルを見直してみようかとか、深い話をするいい機会でした。今回アルバムを作っていく中で、タイアップという立場の曲でもなく、なおかつこのアルバムの最後にハマるワードを集約させる、ある意味自由に作ることができるという部分で、この曲がいいんじゃないかと。すごく深いところで考えた、内省的な曲になりました。でもアルバムを象徴するというか、最後にハマったピースにはなり得る曲だと思います」(福島)。

「Ammonite」が生まれた背景

この曲が生まれた背景には、合宿をしている時にテレビで観たあるスポーツ選手のストーリーが存在している。

「合宿した施設のテレビがBSしか入らなくて、そこでJFLというサッカーのJ3の下部リーグの試合を観ました。サッカーだけでは生計を立てられない、働きながらサッカー選手を続けている人達で、その選手たちと僕らが重なったというか。僕らも頑張ってるけどなかなか結果が出ない時期が続いて、同じような状況だなって。その番組と一緒に、サッカーチームのエース格の選手のドキュメントもやっていて、その選手が僕らと同い年で、その方もバイトしながらJFLの選手をやっている姿を追いかけたもので、3人でひどく感情移入してしまいました。でもそれがきっかけで、ああいう気持ちをまた共有できたし、それをテーマに作ってみようよというあのメロディが出来ました」(福島)。

この大切なアルバムに入るため、完成させるために存在した曲、という捉え方もできる。

タイアップソングとそうではない曲への向き合い方

「Ammonite」のように内省的な曲、タイアップとしてその作品との相乗効果を考える曲、どちらもOmoinotakeの曲であることに変わりはないが、制作時の向き合い方は全然違うのだろうか。

「作る難しさは変わらないし、タイアップをたくさんやらせていただいた時はひとつ一つの作品の世界観と向き合って没頭して、でも一方でそこから離れてこういう曲が書きたいなって思うこともある。そうするとまたタイアップソングを書きたいという気持ちが湧き上がる。本当に両方の気持ちがあって、結局いつもないものねだりなんだなって思っています」(福島)。

「僕は歌う時にその違いをすごく感じていて。タイアップソングを歌う時は、キャラクターの顔や出演される俳優さんのキャラクター、思い描けるものが具体的にあるのでそれを思い浮かべることもあります。例えば『幸せ』という曲は、いつもより口角を上げて歌っていると思うし、それは本当に温かい気持ちを伝えたかったからです。アニメの堀(京子)さんと宮村(伊澄)君というキャラクターの存在が、より温かい気持ちにさせて歌わせてくれるのだと思います」(藤井)。

このアルバムの制作から制作環境を大きく変えたという。レオの歌録りを自宅のスタジオで行うようになり、その影響が歌に出ているのでは、とメンバーは分析している。

「圧倒的にリラックスできて、休憩しようとリビング行くと愛犬もいるし、オン・オフの切り替えが瞬時にできるのが最高だと思いました。曲作りもそこでやっているし、歌入れも同じ場所でやっていて、制作の延長線上で歌を録ることができるので、よしレコーディングだ、という気負うこともないのでそれもいいなと思います。テイク選びやエディットも、自分の歌なので一番気になる部分は自分自身がわかっているので、その作業もできるこの環境に変えてよかったと思います」(藤井)

「今までスタジオで音録りをして、さあ歌入れだってなるとかなり遅い時間からの作業になるし、歌って曲の一番大切な顔の部分なのに、扱いが酷いなと思って。体育会過ぎたなって反省しました(笑)」(福島)

メロディの圧倒的な強さと多彩な音楽性がOmoinotakeというバンドの強さ

オープニングナンバーの新曲「Blessing」は、ゴスペル風の厚いコーラスが印象的な、アンセムのような高揚感を感じさせてくれる、まるでOmoinotakeのテーマソングのような、ライヴで盛り上がりそうな楽曲だ。

「よく覚えていますが、この曲を初めて聴いたのは自宅のキッチンで、すごく多幸感を感じて、聴いた人全員がああいう感情になって欲しいと思いました。鳥肌が立ってくるようなあの感覚を、ライヴで是非感じて欲しいです」(冨田)。

この曲も含めてOmoinotakeの音楽に共通しているのは、圧倒的に強いメロディが、真ん中にあること。どんなビートでも、どんなジャンルの音楽でも、音数が少ないアレンジでも壮大な曲でも、自由自在に繰り出し、でもOmoinotake節が常に輝きを放っている。それを改めて感じさせてくれたのがこのアルバムだ。

「いつもそうありたいと思っているので、めちゃくちゃ嬉しいです」(藤井)。

記念すべきメジャーデビューシングル「EVERBLUE」の存在

代表曲のメジャーデビューシングル「EVERBLUE」も、アルバム中に入るとまた違う光の当たり方、感触がして、大きな存在の曲だと再認識できる。

「確かに今回アルバムでこの曲を聴くと、いつもライヴでイントロが流れた時に、みなさんから伝わってくる高揚感を感じることができるので、まだライヴに来たことがないという人にも、あの高揚感が伝わるといいなと思いました」(福島)。

「あのバン!って感じ。ライヴであのイントロが流れると、お客さんの感情の波のようなものがステージ上でも感じ取れて、さらに自分もテンションが上がって、信じられないくらいいいプレイになる日もあるので、そういう意味でも大切な曲です」(冨田)。

3年前、コロナ禍真っ只中で書いた「One Day」。「10年後、この曲をこのアルバムで聴いた時どんな思いが心に湧き上がってくるのか」

2020年、コロナ禍で書いた「One Day」は、当時の葛藤や胸の内を真っすぐに描いた作品。この曲を聴くと色々な思いが込み上げてくる。

「少しずつコロナ禍以前の生活に戻っているとはいえ、ダメージが残っている人、亡くなってしまった人、廃業したお店もあって、まだコロナ禍であることは変わらないです。そういう意味でも、このアルバムにはあるべき曲だと思いました。10年後、この曲をこのアルバムで聴いた時どんな思いが心に湧き上がってくるのか、自分でも気になります」(福島)。

新曲の「トートロジー」はエモアキが、詩人で作家の寺山修司の言葉に着想を得て歌詞を書いた、多くのリスナーが共感できる言葉が並んでいる楽曲だ。

「寺山修司さんが書いた<思い出さないで欲しいのです/思い出されるためには忘れられなければならないのがいやなのです>という言葉があって、確かに思い出すということは一度忘れるっていうことでもあるので、そういう考えって今までなかったのでハッとさせられて。忘れること、思い出すということも立体的に考えてこなかったんだなって思って歌詞を書きました」(福島)。

最新曲「渦幕」で提示した新機軸のポップス

最新曲のドラマ『彼女たちの犯罪』主題歌「渦幕」は、疾走感の中にストーリー同様スリリングさと緊張感が漂うサウンドと、登場人物の心模様、心の襞の部分を炙り出しているようなメロディと歌詞が交差し、ドラマの世界観を底上げしている。

「ずっとドリル(強いベースと高速リズムが特徴で、不穏な雰囲気を纏うヒップホップのジャンル)というビートを曲に落とし込みたいと思っていて、ドラマの脚本を読ませていただいた時『いける』と思いました。(藤井)。

「“ままならなさ”がテーマで、いわゆるサスペンス系の曲って今までどういうものがあったかを振り返って研究して、例えば平井堅さんもそういう名曲が多いじゃないですか。“ままならなさ”をどう描くかを試行錯誤して出来上がった曲です」(福島)

スローな流れから、サビでテンポが上がり「ままならない思い」を描いたドラマのダークな世界観と華やかな空気が融合し、斬新でスリリングなポップスができあがった。

どこか懐かしさと“蒼さ”を感じる心地いいメロデイと、煌びやなシンセサイザーが印象的なラブソング「幸せ」も、TVアニメ『ホリミヤ -piece-』の世界観とマッチし、アニメファンからも絶賛されている。

「ピアノで刻む曲ってあまりなかったし、前に向かってぐいぐいドライブしていくリズムも気持ちよくて、またいい曲ができあがりました。一度だけライヴで披露させてもらったのですが、いい感じのノリだし、温かさもあるしお客さんの笑顔が印象的でした」(福島)。

地元・島根県の若者500人からの手紙を元に歌詞を紡いだ「オーダーメイド」

「オーダーメイド」は、Omoinotakeの地元・島根のNHK松江放送局開局90周年を記念した楽曲で、島根県の若い人たちからの手紙を元に歌詞を紡いだ。500人の生々しい感情を、美しいストリングスがさらに際立たせる。

「12/8のビートの曲は今までやったことがなかったのですが、若い人の手紙から感じたエネルギーがあったからこそ書けた曲です。エモアキが500通の手紙の、何をどう吸い上げて歌詞にするんだろうという期待と不安が大きかったです(笑)」(藤井)。

「10年後の自分に書いた手紙なので、本当に心を曝け出した内容で、逆にこんなところまで見せてもらっていいのかなという思いがありました。僕らが育った街でもあって、田舎特有の閉塞感とかも正直に全部書いてくれました。この街にいていいのか、10年後どうなっているかもわからないとか、共感できる部分がたくさんあったので、みんなの思いを歌詞に昇華できました。この曲も最新曲の『渦幕』も他の曲も、僕らなりに“幸せ”についてを、様々な角度や視点から考えたアルバムといえるかもしれません」(福島)

Zeppツアー開催

このアルバムを引っ提げたZeppツアー『Omoinotake ONE MAN TOUR 2023 “Ammolite”』が9月22日の名古屋を皮切りにスタートする。ストリートライヴで培った、人の心深くまで最短距離で届けることができる歌と音、数々のアニメや映画、ドラマに寄り添う作品を作り続けてきたことで掴んだ自信、豊かなクリエイティビティ、全てがひとつになり、極上の踊れて泣けるポップスが完成した。1stアルバムにして瑞々しくも濃厚な一枚になった。その世界観と思いを全国のオーディエンスに届ける。

「今回新録した曲が6曲、ライブのセトリも新陳代謝できて、そういう意味でもこのツアーは新しい気持ちで臨めると思うのですごく楽しみです」(冨田)。

Omoinotakeオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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