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伊東ゆかり 昭和~平成まで様々なジャンルの歌に挑戦し続け70年。進化する“ポップス・クイーン”の歌

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BS-TBS

レジェンドシンガーの“現在進行形の歌”に酔う

音楽番組『Sound Inn S』(BS-TBS)は、生演奏にこだわり続け、豪華なサウンドで音楽を届けるという意味で、地上波を含むあらゆる音楽番組の中でも最も贅沢で特徴的といえる。その5月20日(土)の放送回に、昨年シングル86曲を含める全138曲を収録した集大成的なオールタイム・シングル・コレクション『ポップス・クイーン』(6枚組)を発売した、今年歌手デビュー70周年、レコードデビュー65周年を迎える伊東ゆかりが登場。今でもコンサートで必ず披露するという思い出深い3曲を、キャリアを重ね醸成された美しく繊細な歌で披露した。

坂本昌之のアレンジで“始まりの歌”を披露

坂本昌之
坂本昌之

伊東は1974年~1981年まで放送された初期の『サウンド・イン“S” 』(当時)の三代目MCを務めた。そんな愛着ある番組に“里帰り”。大切な3曲を3人のアレンジャー、一流ミュージシャンとセッションし、現在進行形のレジェンドシンガーの歌を聴かせた。1曲目は、江利チエミが歌いヒットしたカントリーの名曲「テネシーワルツ」(1952年)を、坂本昌之のアレンジで披露した。

伊東は1953年、6歳で進駐軍キャンプのクラブで歌い始め、初舞台で歌ったのがこの曲だ。それ以来大切に歌い続けている曲を、坂本がハーモニカをフィーチャーしたジャズアレンジに仕上げ、伊東の柔らかで豊かな歌が広がっていく。

伊東の歌に憧れ、ポップスの道を志した名匠・船山基紀が、名曲「Love Letters」をアレンジ

船山基紀
船山基紀

2曲目は伊東の「憧れの名曲」という数々のジャズシンガーがカバーしている「Love Letters」(1945年)を、船山基紀のアレンジで披露。船山は伊東に憧れ、「恋する瞳」(1965年)に衝撃を受け、音楽家としてポップスの道を志したと語っている。そんな憧れのシンガーに船山は、どこまでも美しいストリングスと哀愁を帯びたフリューゲル・ホルンの音色が心に響くアレンジを作り上げ、伊東は情感豊かに歌った。

あらゆるジャンルの歌に挑戦し続けてきたが「本当は不器用」

伊東はジャズやアメリカンポップス、カンツォーネ、フレンチポップスなどのカバーポップスや、昭和の職業作家が手がけたポップスや歌謡曲、シンガー・ソングライターの手によるニューミュージックやアダルトポップスなど、あらゆるジャンルの歌にチャレンジし続けてきた。しかし本人は「私って器用に見えるみたいで、どんなジャンルの歌でも歌えると思われていたようで、それが一番困りました(笑)。だって本当は不器用で、何でもかんでも歌えないの(笑)」と語っているが、伸びやかな高音と上品な低音、感情過多にならない歌声はどんな歌でも美しい伸びを見せ、クールかつ深みを感じさせくれる。

思い出の曲「酒とバラの日々」は、斎藤ネコのアレンジで、名ピアニスト・市川秀男と共にセッション

齋藤ネコ
齋藤ネコ

市川秀男
市川秀男

ラストは『サウンド・イン“S”』で何度も歌った思い出の曲「酒とバラの日々」(1963年)を、斎藤ネコのアレンジで披露した。日本のジャズシーンを支えてきた名ピアニスト・市川秀男のピアノを中心に据え、幾重にも重なるストリングスが印象的なアレンジのサウンドに乗せ、伊東の艶やかな歌が胸に迫ってくる。市川の粒立ちのよいピアノの音色が作る豊かな響きが、歌の輪郭をさらに濃く際立たせる。

全てのセッションを終えた伊東は「今の時代に、この豪華なミュージシャンの生演奏で歌えるなんて本当に贅沢。これからも歌えることに感謝しながら声が続く限り歌い続けたい」と、生涯歌い続けていくと力強く語っていた。

放送100回を記念して、無料コンサートを開催。伊東ゆかり、上白石萌音、松崎しげる、三浦大知、Little Glee Monsterが共演

2015年に復活し、7月で放送100回を迎える『Sound Inn S』。それを記念した無料公開収録コンサートが6月28日東京国際フォーラムホールCで開催されることが決定した。ゲストは伊東ゆかり、上白石萌音、松崎しげる、三浦大知、Little Glee Monsterという豪華アーティストの共演が実現(チケットの一般抽選受付はTBSチケットで5月27日10:00からスタート。詳細は番組ホームページまで)。また公開収録されたコンサートの模様は7月29日19時から1時間スペシャルと、8月26日18時30分からの放送回でオンエアされる。

BS-TBS『Sound Inn S』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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