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ブラザー・コーン 目指すはシンガーとプロボウラーとの二刀流 心技体揃った67歳の“魂”が込められた歌

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

自叙伝的ベストアルバム『魂信。~My Life is in Destiny~』

『魂信。~My Life is in Destiny~』(2022年12月7日発売)
『魂信。~My Life is in Destiny~』(2022年12月7日発売)

今年40周年を迎えるバブルガム・ブラザーズ。そのアニバーサリーイヤーを前に、メンバーのブラザー・コーンが自叙伝的ベストアルバム『魂信。~My Life is in Destiny~』を2022年12月7日に発売。このアルバムには昨年11月に亡くなった、数多くのヒット曲を手がけた作詞家・松本一起さんから託された作品の中の一曲「My Life is in Destiny」が収録されている。新曲3曲を含む33曲を収録したこのアルバムについて、さらにプロボウラーを目指して現在ボウリングに打ち込んでいる67歳のシンガーの現在地をインタビューした。

昨年ボウリングのプロテストを受験。「67歳でプロボウラーになったらギネスもの。それくらい大変」

アーティストとプロボウラーの二刀流を目指しているブラザー・コーン。昨年プロテストを受けたと教えてくれたが、何がそこまでブラザー・コーンをボウリングへ向かわせるのだろうか。

「去年初めてボウリングのプロテストを受験しましたが、落ちました。今年も受けようと思っていますが、合格するのはまず無理だと思います。15ゲームを4日間、計60ゲームでアベレージが200を超えなければいけないというのは不可能に近くて、ましてや僕は67歳(笑)。67歳でプロボウラーになったら、たぶんギネスものだと思います(笑)。レーンのオイルコンディションが会場や気候によって変わるので、それに対応するためにボウルも変えなければいけない、そのボウルの研磨の度合いとか、とにかく奥が深いスポーツで、たかがボウリングされどボウリングで、やめられなくなりました」。

「ボウリングをやっているから気力・体力が充実。やめたら急に老人化しそう(笑)」

自身の名前を冠したボウリング大会を開催したり、そのボウリング熱はますます高まるばかりで、都内7か所のボウリング場に2個ずつ、地方にも2か所にマイボウルと靴をキープして、現在も週に何日も投げている。

「ずっとゴルフにハマっていましたが、左肩を痛めてしまい右手でできるボウリングに変えました。元々凝り性なので見事にハマって、ずっと特訓状態で両足の肉離れ、ばね指になって注射で治したり、ケガも多かったですが今はいくら投げても大丈夫になりました。手話もそうです。友達に手話の先生がいたので教えてもらって、ポンポンと3級までとりました。とにかくひとつのことに集中して凝ってしまう自分がどこかにいるんでしょうね。でも歌を特訓することはなくて(笑)、本当はそっちをやるべきなのに…(笑)。ボウリングで体を動かすことが大事だし、たぶんボウリングに行きたくなくなったら、なんの意欲もなくなるっていうのが自分でわかっています。そういう気持ちがあるからこそ、色々なものに挑戦できていると思うし、それがなくなった時に老人化しそう(笑)」。

心も体も充実している現在「より気持ちを込めて歌えるようになった」と語ってくれ、今回『魂信。~My Life is in Destiny~』に収録されている新曲『ITSUMO』、『My Life is in Destiny』、『ハナウド~夏の終わりに咲く花~feat.本間愛花』でも、さらに強度を増した声で繊細な表現力を披露している。他の曲とこの3曲を聴くと声の“深化”をより感じることができるはずだ。中でも作詞家・松本一起さんの遺作で、アルバムのサブタイトルになっている「My Life is in Destiny」は本人にとっても大切な一曲だ。

2022年に亡くなった作詞家・松本一起さんから託された歌詞に、中西圭三が曲を付けた「My Life is in Destiny」

「一起先生とはバブルガム・ブラザーズがデビューした時からのお付き合いで、2021年に『コンちゃんにどうしても歌ってほしい歌詞を書いたので、会いたい』と連絡をいただいてお会いしました。先生は7作品も書いてくださって、どの曲も僕の年相応の内容で、僕も言いたかったことが詰まっていました。社会風刺の効いたシニカルな部分とか、でも愛が溢れているものばかりです」。

その中の一曲「My Life is in Destiny」はシンガー・ソングライター中西圭三に作曲を依頼。壮大なバラードができあがった。

「(中西)圭三君が快く引き受けてくれました。難しい曲ですが(笑)、気持ちを込めて何度かライヴで歌っていると、自分の歌になってきた感覚があります。結果的に一起先生の遺作になってしまいましたが、大切に歌っていきたい。託していただいた作品は、CDとして出す出さないは別として全部に曲を付けて、ライヴで歌っていきたいと思っています」。

新曲「ハナウド~夏の終わりに咲く花~feat.本間愛花」

『魂信。~My Life is in Destiny~』に収録されている新録曲の一曲、「ハナウド~夏の終わりに咲く花~feat.本間愛花」では、シンガー・ソングライターの本間愛花とのデュエット。本間の歌に優しく寄り添うような歌を聴かせてくれる。作詞・曲は本間、アレンジをブラザー・コーンが手がけた。

「6年くらい前にイベントで初めて彼女の歌を聴いて、歌心があるシンガー・ソングライターだなって思いました。その後連絡を取り合うようになって、僕のライヴでも歌ってもらいました。「ハナウド~」は彼女の知り合いが亡くなった時に作った曲で、だからこれだけ気持ちを込めて歌えるのだと思いました」。

妻への感謝のメッセージ

『魂信。~』は6つのInterludeが収録されている。インストではなくブラザー・コーンの語りで次の曲の世界へといざなう。その中に妻への感謝を語ったパートがある。妻には伝えていなかった思いを、魂を込めたこのアルバムに残した。

「城達也さん(現在は福山雅治)の番組『ジェットストリーム』をイメージしましたが、一生残るアルバムなのに、その場その場でくだらない話をしゃべっちゃって(笑)。カミさんには僕が40代で腎不全を患ったとき、生体肝移植手術で片方の腎臓をもらった恩もありますし、今まで色々迷惑をかけてきて…。本当に感謝の気持ちしかなくて、でも何もしてあげられないなっていう気持ちがずっとあったので、面と向かって何か言うのも照れくさいので、このアルバムを作ろうって思った時に、ずっと残るものなのでメッセージとしてInterludeに入れようと思いました。もちろんカミさんには内緒だったので、聴かせた時はビックリしていました。このアルバムを作って改めて思ったのは、行き着くところは全て“感謝”ということです。最初、『感謝』というタイトルにしてもいいと思いました。『魂信。』の“信”は僕の名前の信秋の“信”。その“魂”がこのアルバム。「。」を付けたのは、こうするととんでもなくいい画数になって、僕は昔からすごく縁起を担ぐタイプの人間なので、そこはこだわりました。ヤンチャなイメージが強いかもしれませんが、むちゃくちゃ古風なんです(笑)」。

「『WON'T~』は孝行息子、今までサボっていた他の子(曲)達を起こして、ランドセルを背負わせて送り出したのがこのアルバム」

このアルバムを聴いていると、ずっと歌っていくんだという決意表明のようなものを感じる。

「作った曲は全部自分の子供だと思っていて、でも今までヒット曲というものがほとんどなかった。よくライヴで言うんですけど『WON’T BE LONG』君は大出世して帰ってきてくれたけど(笑)、他の子たちはどこで何やってるかわからない。だから今回のアルバムでサボっていた子どもたちを起こして、仕切り直してランドセルを背負わせて送り出したような感覚です。果たして何曲が成長して帰ってきてくれるか。僕が生きてるうちに帰ってきてくれよって(笑) 。この仕事の一番いいところは自分の声が残っているということ。音楽は目に見えないけど、でも口ずさんだり歌ったりしてもらうことで残ります。そうなってくれたら曲達も嬉しいと思います」。

「お客さんからパワーもらっているライヴはやめられない」

67歳、5人の孫と過ごす時間が何より楽しいという。ボウリングで体力と気力を鍛えながら今年も精力的にライヴを行なう。

「今年は『魂信。~』ツアーもあるし、バブルガム・ブラザーズも40周年なので何かしら動きます。ライヴってやっぱりお客さんからパワーをもらっているような気がして、だからやめられないし、アドレナリンが出まくるのでライヴの後っていまだに朝まで眠れないんです」。

otonano ブラザー・コーン『魂信。~My Life is in Destiny~』スペシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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