Yahoo!ニュース

渡辺真知子 船山基紀、園田涼と代表曲を一夜限りのアレンジでセッション。名曲に新たな息吹を吹き込む

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BS-TBS

デビュー45周年の渡辺真知子が、代表曲3曲をセッション

毎回一組のアーティストと、日本を代表する編曲家・ミュージシャン達が生演奏にこだわり、その日限りのアレンジでセッションする音楽番組『Sound Inn S』(BS-TBS)。上質なサウンドを追求し、そこから生まれる“熱”を届け続けている。10月15日(土)放送回は、デビュー45周年を迎え、9月21日にその記念シングル「二雙の舟/カナリア」をリリースした渡辺真知子が登場。代表曲3曲を「渡辺真知子に不可欠」と渡辺が敬愛する名匠・船山基紀と、園田涼が一夜限りのアレンジを作り上げ、スペシャルバンドと共にセッションを楽しんだ。その歌は聴いた人に元気、エネルギーを届けてくれる。

園田涼
園田涼

「かもめが翔んだ日」×園田涼

1曲目は自身最大のヒットになった2ndシングル「かもめが翔んだ日」(1978年)を園田涼のアレンジで披露。コードを斬新に変え、エレキシタールなどを加えリアレンジし、渡辺のボーカルにさらに光を当てる。伸びやかで迫力がある変わらないボーカルが、歌をドラマティックにしていく。園田は「真知子さんは歌いだしの“ハーバーライトが”のハの部分を、とても大事にしていらっしゃると感じました」と語り、渡辺も「そこをきちんと生かしてくださいましたし、2022年の『かもめが翔んだ日』を感じました」とそのアレンジを絶賛。この曲は、渡辺が初めて作詞家(伊藤アキラ)が書いた歌詞に曲を付けたもので、プロが作った歌詞に興奮したと教えてくれた。また、一度完成したが当時のディレクターの、幕開け感が欲しいというリクエストで、冒頭の<ハーバーライトが〜>の部分がプラスされたと、制作秘話も語ってくれた。

「唇よ、熱く君を語れ」「迷い道」×船山基紀

2曲目は「唇よ、熱く君を語れ」を、オリジナルでもアレンジを担当した船山基紀のリアレンジで披露。この曲は1980年の幕開けと共に『カネボウ レディ‘80』のCMソングとしてオンエアされ、大ヒットを記録。そして2020年には40年振りに同CMで起用された(カバーバージョン)。力強くキャッチーなメロディのこの曲は、渡辺のライヴでは欠かせない“鉄板”の盛り上げ曲になっている。今回船山は、ストリングスとホーンセクションをさらに厚くし、渡辺もノリノリで歌い、いつも以上にパワーを感じさせてくれるボーカルになっている。歌い終えた渡辺は「気持ちよかった」と笑顔を見せ、船山は「声が楽器に負けていない」とその変わらないボーカルパワーに脱帽していた。当時「ロックっぽいものを歌いたかった」(渡辺)というように、それまでの渡辺の作品としてはガラッと変わった曲調で、アレンジを手がけた船山も「それまでとは全然違うすごくポップな曲で、アレンジをしていてとても楽しかった」と当時を思い出し、語っていた。

続いても船山のアレンジでデビュー曲「迷い道」(1977年)を披露。デビュー曲にして80万枚を超えるヒットになったこの曲は、お互いにターニングポイントになった曲で、思い入れが強い一曲だ。船山は「この曲がヒットしたことで、プロの編曲家としてやっていける目処が立った」と語っていた。

渡辺は高校生の時(1975年)にヤマハの『ポピュラーソングコンテスト』に出場。この年は中島みゆきや八神純子、庄野真代など、錚々たる顔ぶれの“アマチュア”が出場している。そこで「オルゴールの恋唄」というオリジナル曲で特別賞を受賞した渡辺は、デビューのチャンスを掴み、77年に『迷い道』でデビュー。「人間の泣き笑い、“機微”を歌いたいと思った」(渡辺)。そのアレンジを手がけたのが船山だ。そこからこの日歌った曲を始め、数々のヒット曲を生み出した“盟友”だ。

船山基紀
船山基紀

「迷い道」の、オリジナルアレンジのイントロで印象的なピアノは、ハネケンこと名手・羽田健太郎(1949〜2007)。二人にとって忘れられないピアニストだ。渡辺のライヴの初代バンマスでもあり、船山サウンドには欠かせないミュージシャンだった。「『迷い道』のイントロも、ハネケンさんがピアノを弾く指先が思い浮かんでできたフレーズ」と語っていた。ピアノ、チェンバロ、美麗なストリングスがこの曲の世界観をより美しく彩る。名曲の2022年バージョンが完成した。

渡辺は「私にとって不可欠で、渡辺真知子の根本を作ってくれた方」と語る船山とのセッションを、心から楽しんでいた。船山も「新しい発見があったセッション」と充実した表情を見せていた。

渡辺のパフォーマンスが楽しめる『Sound Inn S』(BS-TBS)は、10月15日(土)18時30分からオンエアされ、さらに番組放送終了と同時に「Paravi」で未公開映像と共に独占配信される。

BS-TBS『Sound Inn S』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

田中久勝の最近の記事