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新井恵理那 「仕事を通じて幸せを届けられる、決して裏切らない、誰かのヒーローになりたい」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/Cent. FORCE Channel

『うたアナ』とは?

セント・フォース所属のアナウンサーが、楽曲紹介から歌唱までワンオペで行う企画『うたアナ』が話題だ。『うたアナ』は「歌うアナウンス」の略で、ラジオ番組をイメージして作られた動画で、セント・フォースのオフィシャルHP内のYouTubeチャンネルでは「語りと歌声」にフォーカスした”口元だけ”を映し出した独特のリップバージョンの映像を観ることができ(3ヵ月間アーカイブ視聴可能)、歌う表情はFC ver.で視聴することができる。

新井恵理那が宇多田ヒカル「FINAL DISTANCE」と緑黄色社会「Mela!」を披露

マンスリーリレー形式(毎月1日と15日更新)で各アナウンサーが担当する「うたアナ」に、最後の6人目として“日本一忙しい”フリーアナウンサー・新井恵理那が登場。12月1日に宇多田ヒカル「FINAL DISTANCE」(Vol.11)を歌う映像を公開し注目を集めた。さらに15日には緑黄色社会の「Mela!」(Vol.12)を披露し、美声を響かせている。新井にこの企画について、そしてこの2曲を選んだ理由、さらに毎日テレビで観ない日はないという多忙な中で、仕事をする上で常に心がけていることなどをインタビューした。

「今だからこそ『FINAL DISTANCE』の歌詞を届けたかった」

まず「うたアナ」のラストバッターということで、これまで登場した同僚・後輩アナの歌を聴いての感想を聞くと「みんなうまくてビックリしました。普段から発声や滑舌に気を付けていたり、言葉に対して意識を高く持っていたりするからか、上手な人が多いと思いました。その歌を聴いて私はどんどんやるのが嫌になっていきました(笑)。最初は気楽な感じで受けてはみたものの、どんどん恐怖が募っていきました」と、収録に臨む前の素直な気持ちを教えてくれた。

しかし選んだ曲は宇多田ヒカル「FINAL DISTANCE」。歌唱力が求められる難しい歌だ。

「宇多田ヒカルさんが大好きなのと、昔、家族でアメリカ・カリフォルニアに住んでいたのですが、照り付ける太陽の下を車で移動している時に、両親がいつも宇多田さんの1stアルバム『DISTANCE』(2001年)をずっと流していました。だからこの曲を聴くとその光景を思い出して、すぐにカリフォルニアに連れて行ってくれるからです。私はあまりカラオケに行かないので、この曲を歌うのは難しいとなんとなくは思っていましたが、実際に歌ってみると、あまりの難しさに最初は選んだことを後悔しました(笑)。でもこの曲の<いつの日かdistanceも抱きしめられるようになれるよ>という歌詞を聴くと、希望の光が心に差し込んでくるような気がして、気持ちがとっても軽くなります。今だからこそみなさんに届けたいメッセージだと思い、歌うことにしました」。

新井はYouTubeの人気チャンネル「いくちゃんねる」で活躍しているボイストレーナー・いくみさんに指導を仰ぎ、歌詞をきちんと伝えられるように練習したという。

「ブレスの入れ方、コブシの使い方、どういう風に気持ちを込めるのか、こと細かに指導していただきました。それを頭に入れて家で原曲を聴きながら、ひたすら練習しました。でも自分の感情を乗せすぎると言葉が違う意味合いになってしまうし、テクニックばかりに気を取られると気持ちが入っていない歌になって、難しかったです。大切な曲だからこそ丁寧に歌って、歌詞をきちんと届けられるように気をつけて、語っているように歌う感じを目指しました。宇多田さんとこの曲には熱い思いを持っているので、楽曲紹介の語りでそれを感じていただいて、歌を聴いていただけると、宇多田さんの曲ではありますが、また違ったものとして楽しんでもらえるかもしれないと思いました」。

「<こんな僕も君のヒーローになりたいのさ>という歌詞に共感しました。私も仕事を通じて誰かのヒーローになりたい」

もう一曲も緑黄色社会の「Mela!」という、難易度が高い曲を選んでいる。アップテンポながらせつなさも感じさせてくれる、緑黄色社会が大きく飛躍するきっかけになった人気曲だ。

「この曲は私自身が励まされた曲なんです。不安な時や落ち込んでいる時に何度も聴いて元気づけてもらいました。でも歌ってみるとやっぱり難しくて、この曲も選んだことを後悔しました(笑)。曲がいかにして成り立っているのか、どんなテクニックで歌われているかが全然わかっていなかったので、プロの歌手の方は本当にすごい!と改めて思い知らされました。この曲は爆発力が凄いので、エモーショナルに歌いたいと思いました。<こんな僕も君のヒーローになりたいのさ>という歌詞があるのですが、私も幼いころ『セーラームーン』が憧れのヒーローでした。今仕事をする時に心がけていることは、正しい情報や素晴らしいものを届けることで、人のためになりたい、誰かの生活が豊かになって欲しいということです。それってヒーローに近いところがあると思っていて。私が多くの方のヒーローになりたいと思っているので、この曲を届けたいと思って、難しかったですけど強い気持ちで歌わせていただきました。カラオケとは違って、ちゃんと人に聴いてもらうということを意識して歌ったのは、今回の2曲が初めてかもしれません」。

この「うたアナ」という企画は、登場するアナウンサー一人ひとりの“届けたい”という強い思いが聴く人に伝わって、感動が生まれている。

「私達は歌のプロではないのでうまくない分、気持ちを込めて伝えるということは、いつも仕事で、様々な現場で心がけていることなので、そこは力を発揮できているのかもしれません」。

「自分の指針になる、裏切りのない存在だからヒーローっていいなと思うし、私も最終的にそんな“光”のような人間になりたいです」

新井恵理那の姿をテレビで観ない日はないというくらいのレギュラー番組を抱え、ラジオでも活躍し、加えてYouTubeチャンネルも積極的に更新している。多忙を極めていて疲れているはずだが、インタビューに答えてくれた彼女はハッピーオーラを湛え、エネルギーに充ち溢れていた。

「よく心配していただくのですが、至って健康ですし、楽しみながらやらせていただいています。もちろん遊ぶ時間が削られたり、失ったりしたものも多いかもしれませんが、落ち込んだり淋しくなったりした時は音楽に救われました。毎日自分の気持ちをキープするために音楽を聴いていると言ってもいいかもしれません。私がやっている仕事と、プロの歌手の方が歌を届けることは、舞台は違いますが、届けるということでは地続きなのかもしれないと思うようになりました。でも歌手の方はアーティストとも呼ばれて、そこにアートの部分が入ってきて『作品』になるということなので、そうなると全く違うお仕事だということも今回歌ってみて実感しました。先ほどヒーローになりたいと言いましたが、ヒーローっていつも逞しくて、強くて優しくてピュアで、でも本当は何か苦悩を抱えていると思うんです。でもそこを見せない強さを持っていて、その人がいるだけでみんなが励まされたり、力になったり、安心できたり、そういう存在ってすごくカッコイイじゃないですか。自分の指針になる、裏切りのない存在だからヒーローっていいなと思うし、最終的にそんな“光”のような人間になりたいです」。

「コロナ禍で自分を見つめ直すことができました。いらないもの、嫌いなことは切って、やりたいこと、必要なことを純粋に極めていきたい」

コロナ禍のこの2年で「伝える」ということについて考え方やその捉え方に何か変化はあったのだろうか。

「コロナ前も後も“伝える”ということ対しての思いは変わらないと思います。でも辛い状況になっている人が多くなっているので、孤独を感じたり、自分と他の人を必要以上に比べてしまったり、負の感情を抱いている人は増えていると思います。だからこそフェアでありたいと思う気持ちがより強くなりました。みんな一緒なんだという気持ちで何事にも向き合いたいです。こうして働けているだけで幸せなんだという思いも日に日に強くなって、なんでも楽しんでやろうと思えるようになりました。そしてその楽しさを伝えたいです。コロナ禍では家で過ごす時間が多かったので、逆に少しゆとりが生まれて、改めて自分を見つめ直すことができました。いらないもの、嫌いなことは切って、やりたいこと、必要なことを純粋に極めていこうという気持ちに切り替わりました」。

「色々なことに興味を持って、世界をどんどん広げていきたい」

必要なこと、好きなことを“純粋に極めていく”と気持ちを切り替えた新井恵理那は、来るべき2022年はどこに向かうのだろうか。希望と野望を聞いてみた。

「今までは5年後10年後にやりたいことはって聞かれても、何もなかったのですが、少しずつ出てきました。YouTube(新井恵理那channel)は趣味の延長線上なので、もうそこではやっているのですが、アートにもっと切り込んでいきたいです。アートを体感すると、生活が豊かになったり、自分自身の見方が変わったりして人生を豊かにしてくれます。アートも音楽も、もっと色々なアーティストに話を聞いて、そこで感じたことをみなさんに伝えたいです。今YouTubeで、自分でも耳飾りやネックレスを作ったり絵を描いたりしているので、何かをずっと作り続けて、いつか個展を開いてみたいという野望があります。世界をどんどん広げていきたいです」。

セント・フォース 新井恵理那 オフィシャルページ

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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