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ソプラ二スタ岡本知高が語る、世界から絶賛された五輪閉会式での歌に込めた思い、コンサートに注ぐ情熱

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BSフジ

東京オリンピック閉会式で「オリンピック賛歌」を歌い、世界から絶賛される

岡本知高といえば、8月8日に行われた東京オリンピック閉会式で「オリンピック賛歌」を高らかに歌い上げ、国内の視聴者からはもちろん、世界中の人々から絶賛された。あの会場でどんな思いで歌い、何を感じたのかを岡本に振り返ってもらい、さらに9月1日に配信したデジタルシングル、ラグビーワールドカップのグローバル・アンセムとして世界中で親しまれている「World in union」について、さらに12月24日に開催する、山田姉妹と共演するコンサート「Concerto del Sopranista 2021」東京公演 について、インタビューした。

8月8日、東京オリンピック閉会式でオリンピック賛歌を歌った岡本へは、SNS上で世界中から「神々しい」「胸がスカッとした」「日本が世界に誇れるソプラニスタ」等、称賛する声が相次ぎ、大きな注目を集めた。世界中から注目を集める中、どのような思いで歌ったのだろうか。

「競技を毎日テレビで観て感動し、涙を流していました。オリンピックができた喜びと感動を表現しました」

「本番では選手の皆さんに囲まれて歌いましたが、僕はオリンピックを毎日熱狂的に観て、泣いていました。競技の楽しさもさることながら、競技が終わった後の選手たちの表情とか、各国の選手が『お互いよく頑張ってきたよね』ってお互いを讃え合っているように見えて、その姿に胸を打たれて泣いていました。ライバルとはいえ、同じように自分自身と戦ってきて、打ち勝った者同士だけがわかる心情というか、それが美しくて2週間毎日感動していました。だから開会式でのパフォーマンスではなくてよかったなって。開会式でもオリンピック賛歌は歌われますが、あそこで歌っていたら、また違う表現になっていたと思います。毎日競技を観て、世界がなんといおうと僕はオリンピックをやってよかったと思っています!という喜びと感激があったから、その気持ちを表現しました」。

「特別な緊張感はなかった。曲から伝わってくるものがエネルギーになった」

岡本はこれまで様々な場所で、国歌独唱を歌ったり、特別な場所で歌を披露する機会も多かった。オリンピック閉会式という誰でもが経験できない場所での歌は、やはりそれまでの歌とは違ったのだろうか。

「同じです。僕の中の日常でした。でもそこに立てた喜びとか、これ以上ないほどの栄誉なことだし、光栄でした。でもあの舞台だからという特別な緊張感とかはなかったです。オリンピック賛歌というは、とにかく選手たちのことを讃えている歌で、力の限りを尽くして世界中の大陸、島々も海を超えて、みんなが栄光の日のために集うんだ、ということが熱く語られている作品です。その曲の内容、歌詞から伝わってくるものが、僕の中で蠢く、湧き上がってくるエネルギーになりました。曲のエネルギーがすごいです」。

以前から歌っていた、ラグビーW杯のテーマソングとしておなじみの「World in union」を音源化

9月1日に配信したデジタルシングル「World in union」も、<勝っても負けても引き分けても みんなの心に勝者が宿る>と、勝敗に関わらず全ての人を受け入れリスペクトし、世界はひとつであるというスポーツマンシップを表現した、ラグビーワールドカップのテーマソング、アンセムとして世界中で愛されている。オリンピック賛歌と相通じるものがある。メロディはホルストの組曲「惑星」の第4番曲「木星(ジュピター)」の中間部をアレンジしたものが使用されている。岡本の圧倒的かつ繊細な歌が、オリンピック賛歌同様、全てのスポーツマンを“全力”で称える。そして聴く人全てに元気を与えてくれる。

「前から歌っている曲で、ようやくレコーディングできました。湧き立つ気持ちを、オリンピック賛歌のように、あれは完全に選手たちに向けて歌いましたが、この曲は僕の中では割と淡々と語ってる感じなんです。ただ曲が派手なので、元気になってもらえたら嬉しいです。ラグビーワールドカップのテーマソングとしてもおなじみで、世界中の人から愛されている曲です。ホルストのオリジナル楽曲のメロディの素晴らしさを生かしているからこそ、たくさんの人に受け入れられているのだと思います。普通クラシックの楽曲をクロスオーバーに仕立てる場合は、メインになるメロディが少しあって、あとは新しいメロディを加えたりしてつながなければいけないことが多いです。それは決して悪いことではないのですが、ホルストの「ジュピター」の場合は、メロディそのものが完結しているので、手を加える必要がありません」。

「今はたくさんのルールの中でコンサートを行なって、みんなで楽しんで、まるでスポーツみたい」

岡本は現在全国ツアー『Concerto del Sopranista2021』を行なっている。コロナ禍で他のアーティストもそうだったように、岡本もコンサートが中止や延期になった。コンサートに対する気持ちにも大きな変化があった。そんな年の締めくくりのコンサートで何を語り、歌うのか、聞かせてもらった。

「お客さんって、みなさんというひと括りではありません。お一人お一人が海を越え、陸を越え、集結してくださったという感覚なんです。だからお一人お一人に全身全霊でお届けしなければいけないんです。僕が知らないその方の人生があって、毎日の暮らしがあって、その中で『よし、岡本知高のコンサートに行こう』と大きな決断をして、会場に来られているはずなんです。音楽、特に歌は人の心に寄り添えると思っています。音楽の役割がここにもあったという新しい発見も僕の中にはあったし、僕自身も他のアーティストのコンサートで音楽を聴くと、救われます。今はできる限りの感染症予防対策をとって、たくさんのルールの中でコンサートを行なっています。歌手もお客さんもルールを守ってその場を楽しむって、まるでスポーツみたいですよね」。

12月24日、双子ソプラノデュオ・山田姉妹と初共演。3ソプラノでクリスマスの夜を彩る

山田姉妹 麗(妹)、華(姉)
山田姉妹 麗(妹)、華(姉)

コロナ前も、コンサートに足を運んでくれるだけで、感謝の気持ちでいっぱいだった。たくさんのルールを守らなければいけない今、それでもコンサートに足を運んでくれるお客さんには、大きな感謝しかないという。それはファンも同じだ。不安な中での生活を強いられる中、岡本の歌に希望を求めてやってくる。岡本とその歌に、感謝の気持ちでいっぱいのはずだ。『Concerto del Sopranista2021』の東京公演は、12月24日東京・紀尾井ホールに双子ソプラノデュオの山田姉妹をゲストに迎え、3ソプラノという豪華なステージになる。

「クリスマスで、しかもクラシックの殿堂・紀尾井ホールなので、粛々と宗教曲を歌うというのもいいと思いましたが、それでは岡本らしくないかなと。『World in union』をこのままのアレンジで歌いので、前半はマイクなしで紀尾井ホールの響きの素晴らしさをみなさんに堪能していただいて、後半はマイクありという贅沢なことをやらせていただきます。僕はずっと生で歌える歌手でいたいと思っていますが、でもやりたいのクロスオーバーなんです。山田姉妹とは今回初めての共演で、ソプラノが3人も揃うので、僕も楽しみです。コラボレーションは、今の山田姉妹に出せる味わい、美しさがあると思うのでそういう部分を引き出していきたいです。今年はオリンピックにたくさんの感動と元気をいただきました。仕上がりまくったこのエネルギッシュな気持ちを、パワフルな歌声に込めて響き渡らせたいと思っています」。

「歳を取ってからの歌っていいんですよ」

奇跡の歌声と称される岡本知高の声。年齢を重ねるごとに自身でもその声を「楽しんでいる」。

「声の高さのカテゴリーでいうと、テノールとソプラノは、短距離走なので、瞬発力を必要とします。だから声やテクニックが衰えてくることは仕方がないことなんです。でもそれを楽しまない手はありません。色々な先輩方がその時その時で素晴らしい歌を聴かせてくださって、いいお手本になってくれています。逆に歳を取ってからの歌っていいんですよ」。

その圧巻の歌声は、より繊細さと説得力を増し、聴き手の心に幸せを届けてくれる。

BSフジ 岡本知高特設サイト

岡本知高オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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