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THE SPELLBOUND 二人の音楽の求道者が出会い、音楽という魔法を通して放つ“救い”の光

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
中野雅之 小林祐介(写真提供/中野ミュージック)

BOOM BOOM SATELLITES中野雅之×THE NOVEMBERS小林祐介

BOOM BOOM SATELLITES中野雅之が、THE NOVEMBERS小林祐介を迎えて立ち上げた新バンド・THE SPELLBOUND(ザ スペルバウンド) 。1月13日に配信シングル「はじまり」でデビューした“新人”だが、その音楽はとてつもない強さと美しさを感じさせてくれる、まさに“大型新人バンド”だ。新人という言葉が妥当かどうかは別としても、BOOM BOOM SATELLITES中野雅之×THE NOVEMBERS小林祐介という文字を見ただけでも、音楽ファンは、そこから生まれてくるものへのワクワクが止まらなかったはずだ。

中野の“ボーカル募集”の声に手を挙げた小林

始まりは2019年4月の中野のSNSでのボーカル募集の発信だった。BOOM BOOM SATELLITESは2016年に最後の音源「LAY YOUR HANDS ON ME」を発表し、同年10月にメンバーの川島道行が逝去。2017年6月に川島不在の中、ラストライヴ「FRONT CHAPTER-THE FINAL SESSIONーLAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE」を行ない、20年間の活動に幕を下ろした。その後、“これまでのキャリアに囚われる事なく 様々なアーティストやプロダクションと共に自由に音楽制作活動をしていく「場所」として、”中野ミュージック”を立ち上げ、プロデュース、楽曲提供を精力的に行なっている。そして新たな音楽を共に生み出すためのボーカルをTwitterで募集したところ、「このツイートをみた時、根拠がないまま『これは絶対に自分がやるべきものだ』と強く思い、すぐに応募しました」と、意外だが“一般応募枠”から小林が応募し、合流した。

小林はTHE NOVEMBERSのフロントマン、ソングライターとして活動し、繊細で、前衛的で、強く美しいオルタナティヴロックの、その唯一無二の世界観には熱狂的なファンが多い。ロックミュージックを更新し続けているという共通点はあるが、世代も音楽性も違う、確固たる美意識を強く感じさせてくれる“職人”が手を組むのだから、その音楽はいい意味でひと筋縄ではいかない。

5か月連続リリースの第1弾配信シングル「はじまり」

5か月連続リリースの第1弾の「はじまり」は、頭のドラムからすでにその世界に引き込まれ、サウンドと歌が交差するとものすごい熱が生まれ、キャリアのある二人がどこまでも瑞々しく、希望を感じさせてくれる音楽を作りあげている。曲のインパクトも強烈だが、そのMUSIC VIDEO(MV)も注目を集めた。夜の病院を舞台に、大勢のナースが踊るという表現で、まるで全ての医療従事者の焦りや祈り、その思いを代弁しているようなダンスだ。監督はBOOM BOOM SATELLITESと長年交流のある映像作家・柿本ケンサク、振り付けはダンサーの辻本知彦が手がけた。

「この曲が生まれたことをきっかけにこのバンドが始まったといっても過言ではない」第2弾配信シングル『なにもかも』

2月に配信された第二弾「なにもかも」も、やはり“希望”を手繰り寄せるような期待感と高揚感が押し寄せてきて、没入感が強いサウンドとTHE NOVEMBERSの時とはまたひと味違う小林の伸びやかなボーカルは、不思議な力で包まれるようだ。小林は「この曲が生まれたことをきっかけにこのバンドが始まったといっても過言ではないくらい、僕たちにとって特別な曲です」とTwitterで紹介し、中野も「理想の世界を求めて歩き続ける人達へ、混沌とした世界の中で、力尽きて埋もれ消えてしまうのではないかという不安を持った人達に向けて寄り添う曲」とコメントしている。前作同様、柿本監督と辻本知彦の振付によるMVも二人のこの曲に込めた思いが、強烈なダンスと共に描かれている。

「このバンドの音楽性をよく表している」第3弾配信シングル『名前を呼んで』

そして最新作「名前を呼んで」が3月10日に配信され、やはり大きな注目を集めている。「高速ブレイクビーツとハイトーンボーカルが複雑に絡み合う、プログレッシヴかつ美しい曲で、このバンドの音楽性をよく表していると思う」(中野)という言葉通り、小林の超ハイトーンボーカルが、自ら紡いだ歌詞に強い光と影を纏わせ、その言葉が生み出すリズムと、強烈なビートミュージックとが交錯しながらひとつになっていく。繊細かつスケールの大きな音像は、言葉にできない感情を引き出してくれる。言葉にできないが敢えて言葉にしてみると、差してくる強烈な光が、気持ちいい――そんな感覚だろうか。でもこの感覚は聴き手によって様々だと思うが――。MVも前2作のスタッフが手がけ、こちらもダンスと歌、音が絡まるとなんともいえない熱い感情が湧き立ってくる。音源だけを聴いて感じること、MVを観て感じること、そこでの感情の“揺れ”を楽しむという聴き方もいいかもしれない。

THE SPELLBOUNDというバンドのその圧倒的な世界観には、どこまで広がっていくのだろうかという大きな可能性を感じると共に、冒頭でも書いたが、ただただワクワク感が増大していくばかりだ。同時にライヴで観たい、感じたい――二人の音楽を聴いた誰もがそう思っているはずだ。

THE SPELLBOUND オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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