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松本明子発『#アイドルうたつなぎ』がコンサートに「37年目にしてやっとステージに立てます」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BSフジ

コロナ禍でのステイホーム期間中に広がりを見せた、松本明子発「#アイドルうたつなぎ」

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新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が出され、誰もが“ステイホーム”になった時、アーティストは自分も含めて人々に元気と勇気を与えるべく、SNS上で様々な“エンタメ”をアップし、楽しませてくれた。その中でも大きな広がりを見せ、注目を集めたのが「#アイドルうたつなぎ」だ。松本明子がデビュー曲「♂×♀×Kiss(オス・メス・キス)」をアカペラで歌った動画をインスタグラム(4月10日)とツイッター(4月11日)に投稿しスタートした。デビュー同期生らに声をかけて歌のバトンリレーを始めたところ、80年代の豪華アイドル陣から世代を超えて多数の新旧アイドルが参加。そのバトンはどんどん繋がり、ついに来年1月16日、『松本明子presents 黄金の80 年代アイドルうたつなぎ~うれしなつかし胸キュンコンサート~』(東京・かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール)を開催することが決定した。松本はキュレーターとして、コンサートの構成からMCまで担当し、もちろん歌手としてもステージに立つ。「#アイドルうたつなぎ」をどんな思いでスタートさせたのか、そしてどんなコンサートになりそうか、松本にインタビューした。

「おうち時間を少しでも楽しんでほしい、楽しみたい、という思いから始めました」

――まず「#アイドルうたつなぎ」を始めたきっかけから教えて下さい。

松本明子
松本明子

松本 忘れもしない私の54歳の誕生日前日の4月7日、緊急事態宣言が発出されて、不要不急の外出禁止が続き、私も気持ちが落ち込みました。今のようにコロナウイルスに関しての詳しい情報がそこまで入ってこなくて、これはおうち時間が長引くのかなと思っていたら、息子の大学の入学式も中止になって、私の仕事も全部リモートになって。どうしようと思った時に、きっとみなさんも同じ気持ちなんじゃないかと思ったので、おうち時間を少しでも楽しめることないかなと考えました。それで、こんな時は歌っちゃえと思って、家でアカペラでデビュー曲を歌った動画を撮ってアイドルに繋げようと。私一人でSNSで配信しても面白くともなんともないし、私の曲なんて誰も知らないんだからって思ったのがきっかけです。まずは83年デビューの同期の木元ゆう子ちゃん、小林千絵ちゃん、桑田靖子ちゃんにこんなことやりたいんだけどちょっと協力してくれないかなって相談をして、動画を繋いで欲しいというお願いからスタートしました。

――ご自身を元気付ける意味もあったんですね。

松本 そうです。私も元気になりたいし、同じように気持ちが落ち込んでいる人にも、見てもらったらちょっとでもほっこりしてもらえるんじゃないかと思いました。

「予想を超える反響があって、昭和~平成~令和のアイドルに繋がっていきました」

――大反響で、バトンがどんどんつながっていきました。

松本 そうなんですよ。本当にびっくりしました。Twitterの方はまず森口博子ちゃんに連絡をしたのですが、私も含めて昭和生まれはSNSに強くないので、博子ちゃんも投稿に悪戦苦闘したみたいです(笑)。インスタの方は1年先輩の「花の82年組」の松本伊代さん、早見優さんにも繋がって、博子ちゃんはTwitterで荻野目洋子ちゃんに繋げてくれたり、西村知美ちゃん、元おニャン子クラブ・渡辺美奈代ちゃん、元シブがき隊・ふっくん(布川敏和)など、どんどん繋がって盛り上がっていきました。色々なテレビ番組やメディアも取り上げてくださって、ふと思い立って始めたことが予想を超える反響があって嬉しかったです。皆さんにも応援していただいて、昭和~平成~令和のアイドルにも繋がっていきました。

――昭和世代が苦手な(笑)SNSの威力を、目の当たりした感じですよね?

松本 “アイドル″って繋がるんだってびっくりしました。我々の時代とは違いますね。私の場合は83年の同期は当時は現場で会えば仲良く話をしていましたが、ケータイもないので連絡先さえ知らなかったです。5年位前にある番組でみんなで顔を揃える機会があって連絡先を交換し、そこから急速に仲良くなりました。

「“83年組”はみんな売れていないからそこライバルじゃないし、今も仲良しです」

――よく「花の82年組」と比較されていましたよね、83年デビュー組は。

布川敏和
布川敏和

松本 そうなんです。私達は「不作の83年組」と言われて、シブがき隊や中森明菜さん、小泉今日子さん、堀ちえみちゃん達の82年組と比較されていました。当時テレビで「芸能人水泳大会」という人気番組があって、82年組はちゃんとプールサイドで歌うシーンがあるのに、私達は競技をやっている間の小さなワイプの中で歌うというBGM的扱い。あれはシュールでした(笑)。でも私達は今も仲がいいんですよ(笑)。みんなが売れていないからこそライバルじゃないし、もちろん変わらず定期的に会っています。2018年には、83年デビューの大沢逸美、木元ゆうこ、桑田靖子、小林千絵、徳丸純子、森尾由美、私の7人で銀座博品館劇場で2日間ライヴをやりました。会場を押さえるところから全部自分達でやった手作りライヴなんですが有り難いことにチケットは即完で、ファンの皆さんもすごく喜んでくださって、親衛隊の法被を着てハチマキをして、団扇を作ったりペンライトを振ったり本当に盛り上がってくれました。その熱狂ぶりが嬉しかったです。

――そういう盛り上がりを見ているので、今回のコンサートにもつながったのでしょうか。

森尾由美
森尾由美

松本 それもあります。「#アイドルうたつなぎ」はみんなに明るい気持ちになって欲しいと始めたものですが、私がアイドルの皆さん、ファンの皆さんからたくさん元気をいただいたので、今回は恩返しの意味を込めて、何かこれを形にしたいと思いました。昭和のアイドル、平成のアイドル、令和のアイドルが一同に会するステージをやるのが今の夢です。今回はまず80年代アイドルというくくりですが、今後も色々な形でやり続けたいですね。

「それぞれのヒット曲はもちろん、例えば80年代の名曲をコラボしたり、ファンの方からリクエストを募っても面白そう」

――今回は松本さんと布川敏和さん、森尾由美さん、浅香唯さん、西村知美さんという顔ぶれです。

浅香唯
浅香唯

松本 みなさん快くOKしてくださいました。それぞれのヒット曲はもちろん、今考えているのは80年代のヒット曲、例えば出演者も大好きな松田聖子さんの曲をみんなでコラボするとか、ファンの方からも歌って欲しい曲をリクエストするのもいいかもしれません。もちろんトークも楽しみにしていてください。今だからこそ言えるアイドル裏話やテレビで言えないようなネタも出てくるかもしれません(笑)。一日2回公演なので、昼と夜で内容も少し変わると思います。この日一日、この場所だけは80年代を完全復活させます。なので私たち世代の方はもちろん、もっと上の世代の方、80年代当時を知らない若い世代の方にも足を運んでいただきたいです。

――「#アイドルうたつなぎ」のきっかけとなった「♂×♀×Kiss」も聴けそうですね。

西村知美
西村知美

松本 もちろんです。自分でアイドル衣装も常に用意していたのですが、発表する機会がなかったので、もういいよ松本って言われるくらい、アイドル衣装を着てガンガン歌いたいです。

「遠回りしましたが、デビュー37年目にしてやっとコンサートができることになって本当に嬉しいです」

――松本さんはTwitterで“アッコ、歌ってるね。”を続け、本当に色々な曲のカバーに挑戦していますが、80年代当時の曲と、今の曲の大きな違いはどういうところに感じますか?

松本 歌ってみてわかったのですが、今の曲はとにかく難しいです。昭和時代の我々がやってきたリズムの取り方、譜割りとは全然違います。アイドルは本当に進化してるんだなと感じました。今回、平成のアイドル、令和のアイドルに繋がって、彼女たちの動画を観てみると歌唱力もあるしダンスもできて、本当に尊敬します。私も歌に対する思いは強いので、カバーさせてもらうときは、まずオリジナルのMVを何度も観て、歌詞も実際に書いてみて、譜面に起こしてみて歌っています。一人カラオケでも練習します。マネージャーいわく巷では「松本明子楽曲派説」みたいなのも流れているらしく(笑)。昔は歌える場もなくて、バラドルと呼ばれ、モノマネしたりレポーターをやったり、遠回りしましたが、デビュー37年目にしてやっとコンサートができることになって本当に嬉しいです」。

「ステイホームの期間中家族の結束が一層強くなりました」

――ステイホーム中に始めたことが、今回のコンサートのような大きな企画になって、これもコロナ禍の中での大きな出来事だと思いますが、松本さんの中で、考え方や仕事や家族に対しての思いで一番変わった部分を教えてください。

松本 家族の結束が一層強くなったです。反抗期が長かった息子が動画撮影に協力してくれたりするようになりました。夜な夜な母親が歌っているのを見て本当に歌が好きなんだなって呆れてますけど(笑)、でもそういうことを思うと、ステイホームの時間も悪くはなかったなって思えます。

BSフジ『黄金の80年代アイドルうたつなぎ』特設ページ

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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