岡本知高 稀代のソプラ二スタがコロナ禍の中で感じた、歌へのさらなる“希望”

写真提供/BSフジ

10月25日「関ジャム」に出演。SNS上で「歌、鳥肌!」「感動」の声が飛び交う

10月25日オンエアの人気音楽バラエティ番組『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系) は、「知られざる男性声楽家の世界」特集として、4人のトップ男性声楽家が登場。彌勒 忠史、秋川雅史、大沼徹、そして岡本知高が、声楽家の声の種類やそれぞれが専門とする 音域での実演、歌い方のテクニック、練習法などを紹介し、その圧巻の歌声を披露した。

ソプラニスタ岡本知高は今年、他のアーティストがそうだったようにコンサートが延期に なり、自粛期間中はこれまで感じたことがない感情が沸いてきたという。しかしようやく 11月27日に「岡本知高Concerto del Sopranista 2020」東京公演が行われることが決定し(東京・紀尾井ホール)、気持ちを新たに表現活動を行っていく。コンサートのオフィシャルサイトには「過去に味わったことのない苦い思いでこの半年間を過ごして参りました。しかし、芸術や舞台エンターテインメント界の灯びは決して消えることはありません。それは私たちアーティストの情熱が、「観たい! 聴きたい! 楽しみたい!」と心待ちにしてくださる皆様のお気持ちのおかげで、コロナに負けることなくまだまだ燃えたぎっているからです」とファンに向けられた、熱を帯びた岡本のメッセージが掲載されている。岡本に表現者としてコロナ禍の中で変わった 思い、変わらない思いを聞いた。

「自粛期間中はとにかくパフォーマンスがしたい、パフォーマンスを観ていただきたいという気持ちが募っていきました」

「自粛期間中は、とにかくパフォーマンスがしたい、パフォーマンスを観ていただきたいという気持ちがどんどん募っていきました。日々練習するのはそれまでと変わらないのですが、でもそれを見ていただく場がないというのが、もう息苦しくて仕方ありませんでした」。

お客さんの前で歌い、拍手をもらいそれをエネルギーとして、生きる糧としてさらに表現を磨いてきた「場所」がなくなってしまったことに、動揺した。

「一人でも聴いてくれる人がいてくださるのなら駆け付けて、そこで歌いたいと思いました。一人のお客様の重みをより感じました。その人の人生のどんなポイントで、僕のコンサートに来てくださって、どんな思いを抱いてまた生活に戻っていったのかが、すごく気になりました。テレビを観て来ましたという人もいらっしゃれば、病気で戦っている方とかも結構いらっしゃってくださっていたので、おひとりおひとりという意味が、自分の中で変わりました」。

自粛明け、他のアーティストとのリハーサルでは「生きている音楽とはこういうことなんだ、音楽ってこんなにも楽しいんだって、魂が喜んでいました」

これまでもそうだったが、これまで以上に歌を、声を一人ひとりに届けたい、届けなければ、という思いにが高まってきたと同時に、改めて音楽というものに向き合い、その思いが深く深化していったという。

「この間リハーサルで泣きそうになりました。他のアーティストの方とのリハーサルだったのですが、自分以外の方の音っていうのが、あまりにも刺激的でした。セッションしてみると高揚するというか、いつもは自分でピアノを弾いてそれを録音したのものに合わせて歌うのが僕の練習で、自分と全く違う音楽性の人が同じ曲を演奏すると、また違うものを感じました。生きている音楽というのはこういうことなんだなって。自分で何度演奏しても絶対毎回違いますが、それが対別人格っていうだけで、こんなにも音楽って楽しいんだって魂が喜んでいました。そういうことを実感できたのって、大学四年の時以来だと思います。その時の先生に「こうやって音楽っていうのは楽しむんだぞ、演奏は毎回毎回違うんだぞ」って言われたのですが、最初意味がわかりませんでした。毎回同じようにミスがなく、完璧に演奏できることが素晴らしい音楽だって思っていたので、それが毎回違ってもいいんだ、楽譜通りじゃなくていいんだって実感できたあの時のような、フレッシュな喜びでした」。

「生きることと死ぬことが歌を歌う時の自分の中の大きなテーマ。今回のコンサートでより掘り下げて表現することになる」

11月27日の紀尾井町ホール公演は、お客さんにとっても久々の生音、生歌を心と体で感じることになる。岡本はどんなテーマ、思いでコンサートに臨もうとしているのだろうか。

「普段から、生きることと死ぬこというのが、歌を歌う時の自分の中の大きなテーマなんですけど、今回はそれをより掘り下げて表現することになると思っています。日々の練習の中で、心が震える箇所が変わってきたというか、一つひとつの言葉の捉え方が、例えば年齢を重ねていくと変わっていくことはあると思いますけど、コロナ禍の中で変わりまし た。この状況が、自分の歌を作り上げていく上では、びっくりするようなエッセンスになったのかもしれません。もちろんコンサートでもコロナのことに触れないわけにはいきませんが、 生きることと死ぬこと、というテーマが“もろ”じゃないですか。だからそこは意識せざるを得ないと思います。今回、わざわざコンサート会場に足を運んでくださるお客様は、この状況下の中でものすごくありがたいですし、だけど活力を持っている方々という風にも捉えています。セットリストも、たぶん日本語の歌が多くなると思います。でも決して押し付けるのではなく、キャッチしてくださる言語で、詞の味わいというか、それぞれ大人の皆様が、自分の人生の今日というポイントでキャッチしてくれる言葉を、優しく投げたいと思っています。学校コンサートでも、子供たちに『相手がキャッチできないことは投げちゃダメだよ』ってよく言っています」。

岡本がライフワークにしている学校コンサートも、以前と同様の状況には戻ってはいない。しかし岡本は「オンラインが日常になってきたので、地方の子供達とオンラインでやりとりして、一緒に歌ってみたいです」と、弾けんばかりの笑顔で語ってくれた。

「歌手という仕事がもしこのままできなくなったとしても、僕は歌うだろうし、お客さんの前で歌いたいと思うはず」

コンサートでは、今まで歌ってきた曲も岡本自身も違う捉え方になり、伝える言葉も違った伝わり方をして、聴き手は聴き手で、違う聴き方になり、違う感じ方をするかもしれない。お互いの思いが交錯して素晴らしい時間、空間になりそうだ。

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「この状況になって、やっぱり自分の中で歌は変わりました。大きなものが音を立ててひっくり返っていくような感覚が歌の中にあって、きっと心のバランスを崩したのだと思います。でもバランスを崩したらそれなりの歌い方があるというか、どんな楽しみ方ができるんだろうという、自分との向き合い方が大切だと思いました。たぶん成長できたのだと思うし、自分で変わった気がします。考えられない状況になっても、それでもやっぱり歌うんだな、届けたいって思うんだなって。自分が今まで頑張って続けてきたことは変わらずそこにあって、でもこんな状況でゴロンゴロン転がされまくっていますけど、自分にとって大事なものは変わらなかったというか。もう辞めようと思ったこともないし、歌手という仕事がもしこのままできなくなったとしても、僕は歌うだろうし、お客さんの前で歌いたいと思うだろうし、それが確信に変わりました。今までそんなことを考えたことなかったけど、きっと僕は歌い続けるんだなって」。

BSフジ「岡本知高 Concerto del Sopranista 2020 東京公演」特設ページ