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JUJU 3年振りの「ジュジュ苑」は生配信で感動を届ける「大切な人への思いを重ねながら聴いて欲しい」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

3年振りの「ジュジュ苑」は原点の場所で、“あなたの心を震わせた「俺のリクエスト」”をテーマにオンライン開催

オンラインライヴのいいところは、家や好きな場所で、好きな環境でゆっくりお酒でも飲みながら一緒に歌ったり、声を出して笑ったり、そして歌に色々な思いを巡らし、涙が溢れてきたときに、人目を気にせずに泣けるところだ。涙は結果的に幸せな時間を提供してくれる――10月10日に行われたJUJUの「ジュジュ苑スペシャル『俺のRequest』」のオンライン生配信を観て改めてそう感じた。

本来ならばJUJUはこの日、「YOUR STORY」ツアーの、さいたまスーパーアリーナのステージに立っていた。しかし新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け開催中止となり、渋谷duo MUSIC EXCHANGEでカヴァーライヴ「ジュジュ苑」を開催。JUJUにとって同ライヴハウスは「ジュジュ苑」の原点だ。2008年に同会場で12ヵ月連続でスタートしたこのライヴは、歌って欲しい曲をリクエストでき、ステージ上でJUJUと一緒にデュエットできるコーナーがある参加型のライヴとして人気を集め、チケットは毎回争奪戦となっている。2012年日本武道館、2015年さいたまスーパーアリーナ、2016年代々木第一体育館、そして2017年には横浜アリーナ(『-ジュジュ苑スペシャル- スナックJUJU アリーナツアー』)で行い、その規模を拡大させてきたが、12年の時を経て、3年ぶりの開催となる今回は原点の場所が選ばれた。今回のテーマは、“あなたの心を震わせた「俺のリクエスト」”。

「レコーディングすることをラブレターを書くことだと思っていて、皆様にお会いできないならば、ラブレターをたくさん書けばよいと考え、夏からレコーディングをしておりました」。10月21日、自身初の男性アーティストカヴァーアルバム『俺のRequest』をリリース

9月30日にリリースされた40枚目のシングルでは、スキマスイッチ「奏(かなで)」、久保田利伸「LA・LA・LA LOVE SONG」をカヴァーし、10月21日にはカヴァーアルバム『Request』シリーズ第4弾、自身初の男性アーティストカヴァーアルバム『俺のRequest』をリリースと、ライヴも含めて、男性アーティストの楽曲をJUJU流の表現で届ける。

ライヴはJUJUの“俺のリクエスト!”という言葉を合図にスタート。一曲目はオフコースの名曲「YES-NO」(1980年)。小田和正作詞・曲の、オフコースの作品の中でも特に人気の高い曲だ。石成正人のギターが、聴き慣れたイントロのフレーズをより印象的なものに仕立て、カルテットが奏でるストリングスがJUJUの切ない歌声を彩る。

「私は常々、レコーディングすることをラブレターを書くことだと思っており、こうして皆様にお会いできないならば、ラブレターをたくさん書けばよいと考え、夏からレコーディングをしておりました。そして10月10日、JUJUの日にやるならば、新作『俺のRequest』を踏まえて、『ジュジュ苑スペシャル』ができたらと、本日を迎えました」と語った。

「奏(かなで)」「アイ」「エイリアンズ」…多くの人から愛される名曲を、JUJUの目線で捉え、圧巻の表現力で“伝える”

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そしてここからはさらに“切ない”セクションへ。「みなさんも大好きな曲」とスキマスイッチの「奏(かなで)」(2004年)を披露。やはりストリングスの音色が切ないメロディをさらに切なく映し出す。スキマスイッチの大橋卓弥はJUJUがカヴァーした同曲について「自分のパフォーマンスも含め今までで一番切なく聴こえました」とコメントしているように、JUJUの声の成分の特徴でもある、独特の細かいビブラートが、歌詞の切ない世界観をより立体的に届けてくれる。「アイ」(秦基博/2010年)もそうだ。秦基博の歌とはまた違う切なさを運んできてくれる。多くのアーティストがカヴァーしているキリンジの代表曲「エイリアンズ」(2000年)では、音域が広く、街の情景と心情とがあぶり出され描かれる、“クセ”の強いこの極上のバラードを、圧巻の表現力で聴かせてくれた。Mr.Childrenの「くるみ」(2004年)は<希望の数だけ失望は増える それでも明日に胸は震える><出会いの数だけ別れは増える それでも希望に胸は震える>という強い歌詞が、恋人や家族、仲間、「大切な人への思いを重ねながら聴いて欲しい」という今回のセットリストに込めたJUJUの思いが重なり、胸に響く。この4曲はニューアルバム『俺のRequest』にも収録されている。

「初めて聴いた時涙が止まらなかった」曲を、フジファブリック山内総一郎とコラボ

山内総一郎(フジファブリック)
山内総一郎(フジファブリック)
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「ジュジュ苑」の名物コーナー、じゃんけんで勝ったお客さんとステージで歌うことが今回は叶わないため、「俺(JUJU)のリクエスト」で、レーベルメイトでもあるフジファブリックの山内総一郎が登場。「初めて聴いた時涙が止まらなかった」というフジファブリックの「手紙」(2018年)を披露。一番を山内が高く伸びやかな声で歌い、二番をJUJUが切々と歌い、最後は一緒に歌い、素晴らしいハーモニーを聴かせてくれた。「最高!」と絶賛するJUJUは、さらに「俺(JUJU)のリクエストで、アルバムには入っていないけど、山内さんが来てくれるならどうしても歌いたかった」と「そして僕は途方に暮れる」(大沢誉志幸/1984年)をリクエストし、山内とバンドがキーの打合せをするシーンも。打ち込みがメインの原曲とは違う、スーパーバンドの生演奏でガラッと違う表情の歌になる。抜群の相性の二人の声が重なり、素晴らしいパフォーマンスに。歌い終わると山内は「気持ちいいー!」と叫び、ステージから去っていった。「帰っちゃった…」と寂しそうなJUJU。「誰かと一緒に歌うのが大好き。初めてカラオケで歌った時に、歌ってなんて楽しんだろうって思って、その原点を大事にしたくて、カヴァーを大切にしている」と、初期衝動を忘れないためにこのライヴ、そしてカヴァー集をライフワークとして、丁寧に紡いでいると教えてくれた。

名手達と名シンガーが作り出す、極上の時間

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「リクエストでダントツで1位だった」という中西保志の名バラード「最後の雨」(1992年)を「色々な思い出を胸に聴いて下さい」と、しっとりと、かつ情熱的に歌う。続く久保田利伸「LA・LA・LA LOVE SONG」(1996年)は、スタイリッシュで、ソウルフル。観ている人がリズムを取り、一緒に歌っている姿が目に浮かぶ。「Paper Doll」(山下達郎/1978年)はタイトな演奏がJUJUの色気のある歌を、さらに“薫らせる”。この日素晴らしい演奏を聴かせてくれた、名手が揃ったバンド、石成正人(G)、SOKUSAI(B)、天倉正敬(Dr)、草間信一(P)、本間将人(Key, Sax&Flute)、牛山玲名(1st Violin)、島内晶子( 2nd Violin)、村田泰子(Viola)、越川和音(Cello)のソロプレイをフィーチャー。

JUJUが今も憧れている音楽番組の、憧れの歌を披露

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時折チャットをのぞきながらコメントを拾い、楽しんでいるJUJU。数字の「8」が拍手を表していることを知り「私も使おう」と喜んでいた。JUJUの人生の教科書は「ジャズとユーミン」と語り、「ジュジュ苑」にも『今月のユーミン』というコーナーがあり、必ずユーミンの曲をカヴァーするのが恒例になっていたが、今回は男性アーティストの作品のカヴァーがテーマということで選ばれたのが、松任谷由実作詞、桑田佳祐作曲の名曲「Kissin’ Christmas(クリスマスだからじゃない)」(2012年)だ。「この曲は、いまも憧れている『Merry X’mas Show」(1986~87年)という音楽番組があって、そのテーマソングで“ひと聴きズキューン”だった。ユーミンや桑田さん、アン・ルイスさん、泉谷しげるさんとか色々なアーティストが出ていて、私も大人になったらこの番組に出たい!って思っていたら、2回で終わってしまいました』と語り、披露した。雪が降る演出で、早くもクリスマス感を感じさせてくれ、最後は「Merry Christmas&Happy New Year!」とメッセージ。そして、サザンオールスターズの「Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)」を情感豊かに歌い、感動が広がっていく。

「ずっと大好きな曲。いつかレコーディングしたいと思っていた」山崎まさよし「One more time, One more chance」

「ずっと大好きな曲。いつかレコーディングしたいと思っていた」という、アルバム『俺のRequest』にも収録されている山崎まさよしのバラード「One more time, One more chance」は、「どんなに言葉を尽くしても、思いの全てを誰かに伝えるのは難しいと思う。でもそんな時もこういう曲を始め、色々な音楽に出会い、それが側にあるときっといい人生になると思う」と語り、静かに歌い始める。そして感情がどんどん乗っていき、まさに熱唱。熱気と切なさの余韻を残し、本編が終了。

この日唯一のオリジナル曲「あざみ」を、万感の思いを込め、歌う

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この日ここまで紡いできた歌の“残り香”が心地よく漂う中で、JUJUはチャットでアンコールの声を確認し、この日唯一のオリジナル曲で、4月に発売したベストアルバム『YOUR STORY』に収録されている「あざみ」をセレクト。ここで「私、整えるので石成さんしゃべってていただけますか」と、バンマスに無茶振りする一幕も。そして「私にとって大切な曲です」と、大きな愛を描いた歌詞と叙情的なメロディを、思いを込めて歌う。歌手人生という旅の途中で出会ったこの曲は、今だからこそ表現できる壮大かつ深淵なバラードだ。「大切な誰かのことを思いながら聴いて欲しい」と語っていたJUJU。最後は感極まり、涙を拭うシーンも。全ての人の心に響く名演だった。「次回は直に会えるように、その時を待っています」とメッセージを贈り、まさに大団円。

名曲の数々を、艶が増した素晴らしい歌と、そして最高の演奏で聴かせてくれ、改めて音楽の素晴らしさ、楽しさを伝えてくれた。そして誰かのことを歌に重ねて聴くことで切なさに包まれ、涙が溢れてきて、でもその涙は明日への活力につながる、ということを教えてくれる。終演後、SNS上には「感動」という言葉が飛び交っていた。とても“芳醇”な時間だった。誰もがそう感じたはずだ。

なお、このライヴは10月17日(土)23:59まで視聴することができる(視聴チケットの販売は、10月17日(土)21:00まで)。

【SET LIST】

1. YES-NO

2. 奏(かなで)

3. アイ

4. エイリアンズ

5. くるみ

6. 手紙

7. そして僕は途方に暮れる

8. 最後の雨

9. LA・LA・LA LOVE SONG

10. Paper Doll

11. Kissin’ Christmas

12. Ya Ya(あの時代<とき>を忘れない)

13. One more time, One more chance

14. あざみ

ジュジュ苑スペシャル「俺のRequest」特設サイト

JUJU オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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