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宇野実彩子(AAA)がずっと求めていた、ファンとの「共感」を深める“絶対的な場所”とは?

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/エイベックス・マネジメント、THECOO

「女性が憧れる女性」

まっすぐで、美しくてしなやかな女性――宇野実彩子(AAA)にインタビューして強く感じた印象だ。アーティストとして、ファッショニスタとして、そしてその飾らない性格や生き様が「女性が憧れる女性」として高い支持を得ている。そんな宇野が「CEO(社長)に就任」と話題になったのが、ファンコミュニティ「Fanicon」内にオンラインサロン『MISAKO UNO Inc.』を開設したというニュースだ。常々「自分が歌を届けているファンのことをもっと知りたい」という宇野の「理想の場所」として、すでに多くのファンが宇野とのコミュニケーションを楽しんでいる。この『MISAKO UNO Inc.』について、そして様々なフィールドで活躍している彼女の表現者としての理想の形をインタビューした。

AAA、ファンへの思い

まずは改めて、今年で活動休止することを発表したAAAへの思いを教えてもらった。

「活動休止とはいえ、AAAというグループは存在するし、これまで残してきた作品は変わらずあって、それをこの後どうやって守っていくべきか、そこが課題です。コロナの影響で、ライヴも含めて色々なことが制限されてしまったので、ファンの方は「足りない」という気持ちもあると思います。その部分をどうカバーし、つながっていくかを考えています」。

「できないということを決めないで、とにかくやれることをやってみる。それが私らしいやり方」

AAAとしての活動、そしてソロアーティストとしてはもちろん、女優、モデル、ファッションブランドのプロデュースと、その活動は多岐に渡っているが、デビュー当時から歌だけではなく、色々なことに挑戦してみたいという思いは持っていたのだろうか。

「最初は漠然と歌手になりたいと思っていました。そこを目指して色々なレッスンを積んでいく過程で、演技のお仕事や雑誌の撮影など、様々な経験をさせていただきました。その時から、自分を知っていく、自分を表現する上で、色々な選択肢はあればあるだけいいなと思っていました。様々なフィールドに立つことで、私のことを知っていただける場所が増えるということと、色々な表現の仕方を学んだ時に、ひとりの女性として、こういう時にどう思うんだろうとか、どういう表現の仕方があるんだろうって、自分の中の女性像が広がっていくと思います。それは例えば歌を歌っていても、作詞をしていても、ライヴをしていても色々な女性になれるということです。経験が多ければ多いほど、仕事の環境が多ければ多いほど、色々な女性を知ることができて、私も変われるし、自分とは違う女性になり切れたり、自分の振り幅を知ることができるので、どの分野のお仕事も相乗効果はあると思います。できないということを決めないで、とにかくやれることをやってみようというのは子供の頃から思っていたことで、それが私らしいやり方なのかなと思います」。

YouTubeチャンネルでの、話題曲のカバーが話題

旺盛なサービス精神と、負けず嫌いの性格、そして豊かな感性が道を切り拓いていく。「ファンとスタッフが一番望んでいることに応えるのが私のやり方」と、客観的な意見もしっかり取り入れ、「でも手あたり次第にやるのではなく、その時に合ったやりたいことを自分らしいやり方でやっています。今は20代の時とは違って、自分のペースで進めて無理のない範囲で、色々な人の意見を聞きながらやっています」と教えてくれた。7月に立ち上げた「初心者なので色々な人のアドバイスを聞いて」様々なコンテンツを仕掛けるYouTubeチャンネルもそのひとつだ。「香水」(瑛人)、「夜に駆ける」(YOASOBI)、そして『白日』(King Gnu)という話題曲の“歌ってみた”動画は、その圧巻の表現力と独特の雰囲気でカバーし、素晴らしい歌を披露。宇野の歌唱力と声質、テクニックには「私のファン層とは違うところで、世界中の方がアプローチできる世界なので、改めて歌手としての私を知ってもらう機会になったら嬉しい」という言葉通り、多くの人の心に刺さり絶賛の声が飛び交っている。

「テレビのチャンネルがいくつもあるように、宇野実彩子の中にチャンネルがいっぱいあっても、観る人が好きにチョイスしてくれれば、楽しんでもらえると思う」

SNS時代の、そしてコロナ禍の中で自身の表現方法を、試行錯誤しながら追求している現状を冷静に分析している。

「人と会う、つながる、会話する、自分を表現する、そんなことが難しくなる時が来るなんて思ってもいなかったですけど、自分も臨機応変に対応していかなければいけないと思いました。この状況の中で、一回潜って焦ってっていう時間はありましたけど、それがあったから、どうにかそれでも食らいついていこう、上がっていこうという気持ちになれました。私って生きる力は強いんだなって思えたし、どうにかしてやろう、みたいな(笑)。流れに身を任せるのではなく、勝ってやろうって、どこか負けず嫌いなんですよね。そんな自分の強さも改めて感じました。今を生きるということは、その流れを見極めることだと思うので、YouTubeひとつとっても、これから新しい時代に向かって色々なコンテンツが次から次へと生まれていて、どれが自分らしくて、どれが今必要なのかという情報も収集しなければいけません。それをやってみて、トライアンドエラーを楽しみながらやるしかないと思っていて、その中でどれが一番自分らしい表現の場所、つながれる場所なんだろうというのは、いくつあってもいいと思いました。テレビのチャンネルがいくつもあるように、宇野実彩子の中にチャンネルがいっぱいあっても、観る人が好きにチョイスしてくれれば、それはそれでより楽しめるのかなって思っています。今の人達は感度がいい“選ぶ眼”を持っていると思うので、好きなタイミングで、好きな規模感のものを選んでもらえるように提示していくことは、当たり前のことなのかなと思います」。

「私が歌を届けている人のことを、もっと知りたい。どんな家に住んで、どんな生活をしていて、どんな恋愛をして、どんな友達がいるのか…とか」

その言葉通り、YouTubeは不特定多数の人が訪れ、間口を広げるプロモーションができる場所、InstagramやTwitterはファンと宇野に興味がある人が、そしてファンクラブは当然支持者が集まり、さらにFaniconで展開している『MISAKO UNO Inc.』は、クローズドということもあり、コアファンが集まり、そこで宇野は熱くて濃い、しかしざっくばらんにコミュニケーションを楽しんでいる。

「サロン名を『MISAKO UNO Inc.』にした理由は、
「サロン名を『MISAKO UNO Inc.』にした理由は、"大切な社員を守りたい社長さんのような存在"でいたいなって思ったのでInc.をつけました」

「ファンの人と強くつながれる場所をずっと探していて、Instagram、Twitterは今までの私のツールでしたが、YouTubeをやろうってなった時にやっぱりずっと応援してくれているファンの人に対して、何か特別な、満足してもらえるコンテンツを用意したいと思って。そんなことを想像しながら生活をしていたら、コロナの影響でこういう状況になり、よりつながれる場所で話せる場所、感じられる場所が必要だなって強く思いました。それでFaniconに辿り着きました。あえてクローズドにすることによって言えることとか、その場所のルールとか雰囲気も特別で、そういう自分の中で“絶対的な場所”っていうのは、私自身も長年この世界で活動している中で、帰ってくる場所じゃないですけど、そういう場所が必要でした。自分のチーム、Inc.って付けたのも自分の会社、自分の仲間を作りたいという思いは昔からずっとあったからです。私は誰のために歌っているんだろう、私の歌を聴きたいって言ってくれている人に歌っているのに、なんでそのファンのことをあまり知らないんだろうって思いました。その人がどんな家に住んでいて、どんな生活をしているのかを知らないで、なんで歌が歌えるんだろう、歌詞が書けるんだろうって。どんな友達がいて、どんな恋愛をしてるんだろうとか、そういうところまで知りたかった。ファンの方たちは思っている以上に私のことを知ってくださっているので、さっきも少し出ましたが、実際に色々な意見を聞きながらものを作っていきたいという気持ちが強いので、その際、心強い目線になってくれますし、その場所がFaniconという感じです」

「私とファンの人が、お互い絶対的な関係性を感じ合えている場所」

宇野は自身が書く歌詞の中でも、色々なインタビューの中でも「こういうことあるよね」と常にリスナーに問いかけるスタイルで、「共感」を得ることをとても大切にしている。『MISAKO UNO Inc.』でも“CEO”として、チームのみんなと共感しながら絆を深めていく。そうしてできあがる絆から生まれる、圧倒的な信頼関係の仲だからこその“ナイショ話”も、この場所ならではだという。

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「あの場所は、毎日LINEをするようにみんなで会話して、普段は見せない写真を見せたり(笑)、生配信もクローズドなので私もオフな雰囲気でやったり、本当に距離感は近いです。まだ言えないないナイショのことも、『企業秘密ね』って言うと本当にみんなナイショにしてくれて、その時の写真は今まで一枚も外に出ていないし、配信の様子も一切出ていないし、みんなで決められたルールの中で、絶対的な関係性をお互いが感じ合えていると思います。仲間だからこそできる会話がここで成立するのは、距離感をわかってくれているから、裏切れないなって思ってもらえているのだと思います。私もそうですし、ファンの人もこの場所を守りたいなって思っていて、そのチーム力というか信頼関係は、ものすごくいいグルーヴだと思います」。

「『MISAKO UNO Inc.』ではファン同士、横のつながりを持って欲しい」

グループチャットにもCEOは度々登場し、「降臨」とファンは盛り上がって、宇野CEOとの会話を楽しんでいる。ファンとの“距離感”の大切さを改めて実感している

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「不思議な感覚ですよね。リアルタイムで同じ時代、時間を共有していることを感じることができる、共感し合えるところがもっとリアルというか。ファンの方も『宇野ちゃんはこんなに夜を持て余してるんだな』とか、『疲れて帰ってくるんだな』とか、想像がより具体的になって楽しいじゃないですか。共感の仕方がより具体的で、共感してくれる人がたくさんいれば自分も安心したり強くなれると思います。『MISAKO UNO Inc.』では共感がより共感になるというか、それがファンの方との関係性を構築する上で大切な事です。それから私を理由に、ファンの人同士が横のつながりを持って欲しいってずっと思っていて。例えばライヴに来る理由も、私に会うためだけではなくて、友達やファン同士で会うのが楽しみで、という感じがどんどん増えていったらすごく強いチームになると思っていて。そういう“場所”を提供するのは私だと思ったし、待ち合わせする場所になったらいいなと思って『MISAKO UNO Inc.』を作りました。チャットも私がいなくても、みんなで話し合って色々決めてねっていうのは、常々言っています。横の関係性ができていくといいなって勝手に思っています(笑)」。

「年齢的にも若い世代につなげていく世代、育てていく世代に入りつつある。だから自分の生き方を改めて大事にしたい」

コロナ禍の中で様々なことを思い巡らし、その中で出した結果のひとつが『MISAKO UNO Inc.』だったが、表現者としてコロナ前と後で一番変わった考え方、思いを教えてもらった。

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「日常がまたいつ変わるかわからない中で、やはり人との繋がりを大切にしたいと改めて思いました。それは仕事でもなんでも、その一つひとつについて、“誰”と一緒にやるかが重要だなって。色々なことをやりたいと思っていても、誰かれ構わず付き合えばいいというわけではないし、明日どうなるかわからないからって、打算的になるのも違うと思うし、やっぱり信頼できる人たちと、深く強くつながって、自分らしく表現することが一番大切だと思います。それと、みんなそれぞれが人間力を問われている中で、私の人間力ってなんだろうって考えました。やっぱり人が人らしく生きていないと、どこかで無理が生じると思うので、リアルに人間として何を伝えたいのかということと向き合いました。変わっていく時代、次の時代の人たちに、何を教えてあげたくて、何を受け継いでいってほしいか。年齢的にも若い世代につなげていく世代、育てていく世代に入りつつあるなと思っていて、自分の生き方を改めて大事にしたいと思いました。ファンも私より若い人もたくさんいるので、その人達にこの後どういう生き方をしていって欲しいかなとか、どういう時代を築いて欲しいかなとか、前向きになれるメッセージを伝えていくのが、私の役割だと思うようになりました。私も尊敬できる目上の人と話をして、そういう生き方があるんだ、そんなこと気づかなかったなとか、大事なことをたくさん教えてもらって、自分の生き方を修正しながらここまでやってきたので、私もそういう人にならなければいけないってすごく思いました」。

新曲『Stand UP!』は「きっと大丈夫という、自分の背中を押してくれる言葉を書きたかったのだと思う」

そんな中、7月17日から配信がスタートした新曲「Stand UP!」には彼女の一番新しい「言葉」がつまっている。

「私がまず最初にできることは、歌でメッセージを伝えること。今この時代の中で生きているアーティストという意味では、ちゃんと“今”を残しておかなければいけないと思うし、忘れてはいけないと思う。そういう思いを込めてこの曲を作りましたが、歌に乗せて、きっと大丈夫という、自分の背中を押してくれる言葉を書きたかったのだと思います。今はトンネルの中だけど、もうすぐ光が見えてくるはずだし、私もそこに向かいたくて、もうすぐ見えてくるんじゃないかなという願いも込めました」。

『MISAKO UNO Inc.』

宇野実彩子 オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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