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噂のシンガー・遥海、世界へ向けいよいよメジャーデビュー 「唯一無二の存在になりたい」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供 ソニー・ミュージックレーベルズ/アリオラ・ジャパン

「海外でも通用するシンガーになりたい」

1stシングル「Pride」(5月20日発売/初回生産限定盤)
1stシングル「Pride」(5月20日発売/初回生産限定盤)

4オクターブの音域を操り、その圧倒的な歌で注目を集めている世界基準のボーカリスト・遥海(はるみ)が5月20日、4曲入りシングル「Pride」でソニー・ミュージックレーベルズ/アリオラジャパンからメジャーデビューする。これまでも作品を発表してきたが、彼女は常々「ひとりでも多くの人に、私の歌を聴いて欲しいですし、海外でも通用するシンガーになりたいです」と語り“メジャーデビュー”を目指してきた。これまでの活動を“点”と考えるなら、彼女の中でそれが太い“線”になることがメジャーデビューであり、スタートだと捉えている。以前インタビューした際、「最近は、例えばフォロワーの数が人気やその人のパワーの判断基準になっているような気がして。でもそうではなくて、どういうアーティストであるべきかを明確にして、誰も真似できない、唯一無二の存在になりたい」という、彼女の強い気持ちを改めて世の中に向け、発信していくスタートラインに立った。希望を胸に、燃える、遥海にインタビューした。

「この曲でデビューできてよかった。この曲があったから強くなれた」

表題曲「Pride」(TVアニメ『波よ聞いてくれ』(MBS、TBS、BS-TBS)EDテーマ)は、<胸に勇気を 明日に夢を つまづいたって 立ち上がって 光を探す どんな言葉も どんな嵐も 邪魔できない私の未来 守りたいもの マイ・プライド>という歌詞に、彼女の“決意”とこれまでの心情を鮮やかに映し出している大切にしている曲だ。デビュー曲はこの曲と、本人の中では決めていた。「この曲でデビューできてよかったです。この曲があったから強くなれたし、今世界中がこういう困難な状況だからこそ聴いて欲しい。私は強くなれたから、先が見えないこんな不安な中でも、冷静でいられるというか、希望を持って過ごすことができています。数年前の私だったら不安しか口にしていなかった思う」。

世界的なオーディション番組『X FACTOR UK 2018』に出場し、英ウェンブリーアリーナの大舞台で、3000人の観客と審査員を総立ちにさせる

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これまで何度か彼女にインタビューしたが、曲の話をしていくうちに、その背景にあるストリーに自分自身を重ね、涙ぐむことも多々あった。ライヴでも時折感極まって、泣いてしまったり、緊張から焦ってしまい、本来の歌をきちんと伝えることができないシーンもあった。しかし世界的なオーディション番組『X FACTOR UK 2018』で、イギリス・ウェンブリーアリーナの大舞台で、3000人の観客と審査員を総立ちにさせるパフォーマンスができる集中力と爆発力を持ち合わせる。喜怒哀楽の激しい性格も含めて、全てが彼女の魅力だし、強くなった彼女が歌にしっかりと反映されているのが「Pride」だ。

「『answer』は喜怒哀楽が全て出ている歌」

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強く優しい「answer」も、ライヴで大切に歌ってきた作品だ。この透明感を湛える曲もデビューシングルに絶対に入れたかったという。「喜怒哀楽が全部が出ている曲です。この曲が愛おしすぎて、レコーディングの時は歌頭、歌詞の一行目<どんな時でも笑顔でいれば>のところから涙が止まらなくて歌えなくて、時間がかかりました(笑)。この曲と英語詞のM3「Hearts Don’t Lie」の曲間の秒数にこだわりました。以前はライヴ中も、曲と曲の間に“間”ができると不安で怖くて、すぐに次に歌に入ったりしていましたが、でも今は曲間の余韻を楽しめるし、聴く人にも気持ちの切り替えが必要なんだなということがわかりました」。

“伝える”ということに真正面から向き合い、自身のアイデンティティを追求し続けてきた

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日本語詞が2曲、英語詞が2曲という構成は、日本人の父と、フィリピン人の母を持つ遥海のアイデンティをきちんと伝えよう、知って欲しいという思いの表れでもある。フィリピン生まれの彼女は、2~3歳の時に、教会のクワイアに入って歌ったことが、音楽の原体験で、家では家族が聴いていたホイットニー・ヒューストンのカセットテープを繰り返し聴き、一緒になって歌っていた。姉と一緒にロックやビヨンセ、ジェニファー・ロペス、R・ケリーなどアメリカのヒットチャートを賑わせている音楽を聴き、それが血となり肉となっている。そして13歳で日本に来て、宇多田ヒカルを初めとしたJ-POPに触れ、これもまた体の中にしっかりと入っている。日本に来て間もない頃は、言葉の壁に躓き、周りとうまくコミュニケーションをとることができず、葛藤し続けた。この時の経験が「言葉で歌を伝える」という強い思いになり、“伝える”ということに真正面から向き合い、自身のアイデンティティを追求し続けてきた。「感覚的には、英語の方がしっくりくるというのが正直なところですが、だからこそどんな時も言葉の壁をぶち壊して、伝えたいと思っているし、逆に日本語の美しさをより感じることができ、伝えることができると信じています」。

「“ひと聴き惚れ”した『Hearts Don't Lie』は、今だからこそきちんと表現できる歌」

1stシングル「Pride」(5月13日発売/通常盤)
1stシングル「Pride」(5月13日発売/通常盤)

「Hearts Don’t Lie」は今の遥海だからこそ歌い、表現ができる曲だという。「『Don’t Break My Heart』(配信限定EP『MAKE A DIFFERENCE EP』(2019年4月)に収録)と同じように、“ひと聴き惚れ”した曲で、『MAKE A DIFFERRENCE EP』にどちらを収録するかってなった時、あの時点では、メンタルの部分でも実力の部分でも歌いこなすことができませんでした。今なら自信を持って歌えるし、聴いて欲しいと思いました」。

「強い、ワイルド系の歌を歌う人、という限定したイメージを持たれたなくて、『Fever Dream』では浮遊感を感じてもらえるように、優しく表現しました」

「Fever Dream」は彼女の繊細な表現力が堪能できる一曲だ。「これまでの私はどちらかと、ビヨンセのカバーなどで、“強い”歌を歌う人、というイメージがあると思いますが、それだけ、そういう歌しか歌えないと思われるのが嫌でした。だからこの曲は優しく、浮遊感を感じてもらえるようにエアリーに歌い、表現することを心がけました。強い、ワイルド系の歌しか歌えないというイメージを払拭したかった」。

この「Ferver Dream」もそうだし、ライヴでも感じるのは、圧倒的なボーカルパワーというのは、ダンスナンバーの時の凄まじいエネルギーになるのはもちろん、バラードやミディアムテンポの曲を歌う時に感じる、儚さや切なさを表現するときに、その威力をより発揮することを、彼女の歌は教えてくれる。

『色々な番組に出演後、“歌うま”って言われたり書かれたりするのがすごく嫌だった』

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遥海は、2014年に出演したテレビ番組『関ジャニの仕分け∞』で女子高生チャンピオンとして話題を集め、さらに2018年1月に出演した『第5回全日本歌唱力選手権 歌唱王』(日本テレビ系)でビヨンセの「Listen」を歌い、惜しくも優勝は逃したものの、その歌は視聴者に感動を与え大きな話題になった。さらに『行列のできる法律相談所』(同)にも出演し、その歌で共演者を驚かせ、またも視聴者をくぎ付けにした。しかし周囲の盛り上がりをよそに彼女の心は複雑だった。「2019年は“歌うま”って言われたり、書かれたするのがすごく嫌だった。まだまだ実力が伴っていないのに、テレビに出演したり、取り上げられたりして、本当に歌がうまい人と比べられるのが、心から嫌だった」と素直に吐露してくれた。しかしそんなプレッシャーにも押しつぶされることなく、様々なハードルをクリアし、葛藤と戦い、勝ち、そして自信を手にして、満を持してメジャーデビューを果たした。

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そんな今、彼女が『X FACTOR UK 2018』のウェンブリーアリーナのステージで歌い切り、ステージを降りてきたときに語ってくれた言葉が忘れられない。「色々考えている自分を捨てることができた。その瞬間、気持ちが解放されて、まるで金色の羽が生えていて、羽ばたいている自分が想像できました」――規格外のシンガー・遥海は、その歌で、世界中の人々の心を震わせる、日本が世界に誇るアーティストとしての未来に向け、すでに歩み始めている。

遥海 オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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