FENCE OF DEFENSE デビュー33年、変わらないメッセージ、進化する音楽

写真提供/ソニー・ミュージックダイレクト

30周年アニヴァーサリーアルバム『HDIIIX』に新曲を加えた“完全版”を、ファンのリクエストに応え、アルバム『Primitive New Essence』として発売

『Primitive New Essence』(2月19日発売)
『Primitive New Essence』(2月19日発売)

1985年、西村麻聡(Vo/B)、北島健二(G)、山田わたる(D)の三人により結成され、1987年にアルバム『FENCE OF DEFENSE』、シングル「フェイシア」でデビューしたFENCE OF DEFENSE(以下FOD)。2017年にデビュー30周年を迎え、2018年にアニヴァーサリーアルバム『HDIIIX』をアナログ盤+写真集という形で発表。しかしオフィシャルサイトとライヴ会場のみでの販売だったとこともあり即完売し、入手できなかったファンのために、新曲を追加した“完全版”として、アルバム『Primitive New Essence』を2月19日に発売した。

圧巻のテクニックと自在な表現力が迸るこのアルバムについて、そしてFODの今について、現在拠点を置くアメリカから帰国したばかりの西村麻聡にインタビューした。

「30周年というアニバーサリーがあったので、何かやろうよという話になって、何もやらないと何もないバンドですから(笑)、『HDIIIX』というアナログレコードを作りました。アナログレコードって、やっぱりパッケージとしての存在感がある一方で、どうしても容量の制限があるので曲も大分カットしなければいけないし、本来やりたかったことが正直二の次になっていた部分はありました」。

まずは『HDIIIX』を、アナログレコード作品として制作したいきさつを聞かせてくれた上で、その内容、仕上がり、世界観の部分に関して実は「もやもやしていた」と教えてくれた。

「サウンドは進化しても、メッセージはデビューから変わらない」

「ファンの人からもアナロクレコードではなく、CDで出して欲しいという要望という名のクレームに近いものが多く寄せられて(笑)。そんな中で、今回の『Primitive New Essence』の企画が持ち上がって、やりたいことを全部詰め込むことができました。FENCE OF DEFENSEというバンドは、1枚目の『FENCE OF DIFENSE』と2枚目の『~II』で世界観が完成していて、それ以降も色々やりましたが、基本的なスタイルと、メッセージは、ほとんどそこで固まっていました。それを敢えて変える必要はないし、逆に今の時代だからこそ、その時に思っていたことをもう一度メッセージとして伝えていくということが大切だと思いました。だからその部分では変わってない、だけどやっぱりそこから30年という時間が経てば、僕らが聴いている音楽も変わるし、もちろんレコーディングスタイルも変わる、そういうところから少しずつサウンドの面では変わってきていると思います」。

伝えたいことはひとつ。でもそれをいつも新しい形で出したいというバンドの思いが『Primitive New Essence』というタイトルには込められている。FODのデビューは鮮烈だった。腕利きのスタジオミュージシャン3人が、圧倒的なテクニックを駆使して繰り出す骨太なロックと打ち込みという、当時は他にないスタイルで一躍注目の的になった。

「当時は僕らのような音楽をやるアーティストは他にいなかったから、逆に『これロックじゃねーよ』とか言われることもあったけど、ああそうですかって(笑)、じゃあロックってなんですかって逆に聞きたくなるというか。僕らはセンセーショナルなことをやろうとか、そういう感じではなく、3人で何ができるんだろうというシンプルなところからスタートしました。だから売れようとかそういうことは全然考えてなくて、できることでカッコいいことをやろうよという感じでした」。

「聴き終わった後、映画を一本を観たような感覚になってくれれば嬉しい」

『Primitive~』は一曲目のインストナンバー「祈誓」、そして「Shot in the Bomb」、「Starfall Daydream」、「ASAHI」、「天才 バガボンド」、「輪廻-Original Aboriginal」という新曲が6曲収録され、2018年発売の『HDIIIX』に収録されていた曲達と溶け合い、変わらないけれど進化している最新型のFODの世界観が提示されている。シニカルな言葉で社会を風刺した歌、そして希望を感じさえてくれる歌、そのどれもが熱を帯びた“芯”の存在を感じさせてくれ、オープニングから最後まで一本の映画を観ているようで、サントラ盤のような作品だ。

「それは非常に嬉しい感想です。僕もサントラ音楽をたくさん作っているので(映画『黄龍-イエロードラゴン』、『自殺マニュアル』『キル・鬼ごっこ』他))、サントラが大好きなんですよね。FODのアルバムも、インスト曲だけではなく、そういう映画を一本観たような感覚になってくれればいいなという思いは毎回あります。インストから始まるというのは僕の癖なんですよね。すぐ歌に入りたくないというか、いきなり走り出すのではなくて、歌に突入するまでの何かステップが欲しいっていう。そういう空気感というか、そこにスーッと入っていくことができれば、一曲一曲の“芯”をしっかり感じてもらうことができると思います」。

「ロスで生活し始めて、書くべきこと、書きたいことが変わってきた」

米・ロサンゼルスに拠点を移して5年、西村は現地の文化や音楽に大いに刺激、影響を受けている。『Primitive~』にもエスニックフレーバーを感じる楽曲も少なくない。

「曲を作る時に意識していなくてもそういう感じが出るというのは、単純に音楽だけではなく文化そのものに影響を受けているからだと思う。日本にいた時とロサンゼルスにいる時とは、全く世界の見方が違うというか、よりリアリティがある。例えばニュースひとつとっても、アメリカで見る中国に関するニュースの方が、日本で見るそれよりもリアル。日本の方が中国に近いのにアメリカのニュースの方が情報量が多いから、ダイレクトに伝わる。それから、色々な人種が共存してる街にいると、狭い庭の中にいた時には知ることができなかった部分、知らなかった感情、そういうのも出てきます。当然今までの歌詞とは違うというか、深みが変わってくるというか。言葉と言葉の“隙間”が非常に大事になってきたなっていう気がしています。以前は言いたいことをとにかく羅列していたのが、今は同じ言葉を使っても、次の言葉に行く間に隙間があって、聴き手に想像してもらうことが大事だと思うようになりました」。

日本でも感じていたことを、アメリカでリアルに、身をもって感じた<言葉も国境も肌の色も関係ないだろう?>という歌詞が突き刺さる「LOVE,BELIVE,AGAIN」は、このアルバムの中でも西村が特に印象深い楽曲だという。

「世界情勢は30年前よりも悪くなっている。だから当時発信したメッセージを伝え続けようと思った」

「人種差別というのは日本にいるとあまり感じないと思うけど、外国に行くと僕も差別されるんです。もちろんアメリカは白人と黒人の人種差別が根底にあって、そういうことを肌で感じてくると、やっぱり人々の苦しみや悲しみはもっと目の前にあるもので。でも前に向かっていくしかないでしょという、普遍的なことを伝えたかったのが「Walk On」という曲です。「Love~」は、結局こういうことを言いたかったっていうのは、デビュー当初も同じでした。当時も世界情勢はよくなくて、愛し合っていこうよっていう曲も何曲も作ってきました。でも30年経っても、結局変わっていないどころかますます悪くなっていて。じゃあこのメッセージ言い続けていこうよということが、このアルバムで一番伝えたいことです」。

「3人の関係性は面白いくらい変わらない。お互いがお互いを俯瞰で見ている距離感を変わらずキープしている感じ」

30年以上音楽シーンの第一線で活躍し、その変遷を目の当たりにしてきた西村が最も感じる変化、そしてFODの3人の変わらない関係性を聞くと――

西村麻聡(Vo/B)、山田わたる(D)、北島健二(G)
西村麻聡(Vo/B)、山田わたる(D)、北島健二(G)

「やっぱりテクノロジーの進化です。僕らが音楽をやり始めた頃は全てがアナログ。レコーディングもテープで録るので、少しでも間違えるとみんなに白い目で見られるという時代で、でも集中して音楽に取り組む姿勢が求められるという意味では、いい時代だったと思います。当時僕らのライヴではステージにソフトウェアではなく、本物のシンセサイザーを並べてそれをコンピュータではなくシーケンサー専用機がコントロールするという時代でした。でも機材もここまで進化するとあまり面白くない。なんでもできてしまうので、みんな同じ音楽になってしまう。逆にデジタルを一切排除して、アナログだけでやろうという人たちもいっぱいいるし、やっぱり音楽って想像以上に奥深いもので、それはテクノロジーだけでは表現できないし、その時その時の空気感とかが、ダイレクトに出るようなスタイルはなくならないと思います。我々3人の関係性は面白いくらい何も変わらないです。音を出せば一体感が生まれてきますが、普段はお互いがお互いを俯瞰で見ているという感じの距離感を、変わらずキープしている感じです。3人共1958年生まれっていうのが大きかったのかなと思います(笑)」。

「人種も性別も年齢も関係なく、セッションを楽しむことが楽しい。自分の引き出しがどこまであるのか、何が足りないのかがわかってくる」

西村は、今アメリカで様々なミュージシャンとセッションすることが楽しくて仕方ないという。人種も性別も年齢も関係なく純粋に音楽を響かせ、楽しむことが非常に刺激になっている。

「全然知らない人といきなりセッションをやると、自分の引き出しがどこまであるのか明確なんです。そうすると、自分には足りない部分がわかる。面白かったのが何も決めないでステージに立って、誰か弾き始めるとそこに合わせていくというセッションライヴを3時間やったことです。そういう経験、音楽のアプローチの仕方は今までやったことがなかったので、面白くなってきました。その人が今音楽的にどういうことを考えているのか、その人のことがどれだけ見えるかということが大切になってきます。バンドというひとつの原型というか、役割のようなものが明確に出てくるので、これは今まであまり経験したことがないやり方なので、積極的にセッションに参加しています。何よりも気楽にできるというのが一番いい」――そう話す西村の表情と言葉からは、現在の充実した様子が伝わってきて、それはFODとしての今後の活動がより楽しみになったということだ。キャリア30年を超えてもなお進化を続けるFODの最新作『Primitive New Essence』を聴くと、“次”への期待を抱かざるを得ない。

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