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大ヒット中の映画『アナ雪2』 前作よりさらに深化した、“物語っている”音楽に注目 

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ユニバーサルミュージック
『アナと雪の女王2 オリジナル・サウンドトラック(スーパー・デラックス版 [初回生産限定盤] ) \5100+税/CD3枚組BOX仕様/歌詞・対訳付/オリジナル名場面カード10枚セット付
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11月22日から公開されている『アナと雪の女王2』を遅ればせながら観た。オリジナルと日本語吹替版、両方観た。動員は600万人を超え、興行収入は84億円を突破しているという(12月25日現在)。

気になるストーリーは――

エルサはなぜ、その力を与えられたのか?──かつて、真実の愛によって姉妹の絆を取り戻したエルサとアナ。アレンデール王国の女王となったエルサは、アナ、クリストフ、そしてオラフと共に幸せな日々を過ごしていた。だが、エルサにしか聞こえない不思議な“歌声”に導かれ、姉妹はクリストフとオラフを伴い、アレンデール王国を離れて未知なる世界へ。それは、エルサの“魔法の力”の秘密を解き明かす、驚くべき旅の始まりだった…。(公式サイトより)

前作は約225億円の興行収入を記録し、5年経った現在でも、洋画アニメーション作品歴代1位という記録を守っている。ここまで大きな人気になったのは、もちろんストーリーやキャラクターの魅力も影響していると思うが、なんといってもその素晴らしい音楽の存在が大きい。「レット・イット・ゴー~ありのままで~」は、2014年を代表する一曲になった。当然『アナ雪2』も、前作に引き続き音楽を手がけている、ロバート・ロペス&クリステン・アンダーソン=ロペス夫妻が、どんな“歌”を作り上げてくるのかが、楽しみだった。結果的に、より“深い”思いが込められた新曲8曲を書き下ろし、インストゥルメンタル曲をクリストフ・ベックが手がけている。

日本版エンドソングアーティスト、19歳の新人・中元みずきが話題

まず日本語吹替版は、前作の「レット・イット・ゴー~ありのままで~」にあたるメイン楽曲「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」を、吹替版声優としてエルサ役を引き続き担当している松たか子が、再び圧巻の歌を聴かせてくれている。

日本版エンドソングアーティストに大抜擢された19歳の新人・中元みずきが、瑞々しくもすでに貫禄さえ感じさせてくれる表現力で「イントゥ~」を歌っている。中元はこの曲について「“未知の世界へ”という曲なので、私自身もこの曲に大きな勇気をもらいました。みなさんもこの曲を聴いて前に一歩踏み出そうと思えるようになればよいなと思います」とコメントしていたが、“ありのまま”の自分を受け入れ、そして歩みを止めず“心のまま”に前に進むという、エルサの心の揺れ動きを表現したこの歌を、リアルな感情を乗せ、人々に勇気を与える歌として届けてくれる。

ミュージカル映画は、その登場人物がセリフでは伝えきれない、感情があふれそうになった時、それが歌になる。だから歌の中で感情の揺れをきちんと表現し、何かを決断し、前に進むことで、物語も進む。劇中ではイディナ・メンゼルが歌っている「イントゥ~」は、メロディが決して甘すぎず、転調してから入るハイトーンのサビの部分は、とても勇ましく、ドラマティックな歌になっている。この曲にフィーチャリングアーティストとして参加している、ノルウェー出身のシンガー・ソングライター、AURORA(オーロラ)が歌う「精霊の歌声」はもの悲しくて、しかし全体的にエルサの強い覚悟が、どこまでも前向きなポップソングになり、聴こえてくる。AURORAの不思議な声も耳に残る。

「イントゥ~」以外の多彩な楽曲もストーリーをより盛り上げる

もちろん「イントゥ~」だけではなく、登場するキャラクターごとに、ジャンルの違う様々な曲が歌われている。この物語の全てのテーマが入っているといっても過言ではない、アナとエルサの亡き母・イドゥナ王妃が歌う「魔法の川の子守唄(All is Found)」、クリストフが歌う80’sロックバラード風の「恋の迷い子(Lost in the Woods)」など、次々と新曲が登場するが、非常にわかりやすいし、決して飽きさせない。

英語版エンドソングアーティストの豪華さにも注目が集まる

『アナと雪の女王2』オリジナル・サウンドトラック<通常盤>¥2500円+税/歌詞・対訳付
『アナと雪の女王2』オリジナル・サウンドトラック<通常盤>¥2500円+税/歌詞・対訳付

そしてエンドソングアーティストにも注目が集まる。「イントゥ~」を歌うのは、テイラー・スウィフトのコラボソング「ME!」で注目を集めた、ブレンドン・ユーリー率いるパニック!アット・ザ・ディスコ、「魔法の~」を担当するカントリーシーンの歌姫・ケイシー・マスグレイヴス、そして「恋の~」を歌う、日本でも人気のバンド・ウィーザーが参加している。それぞれが、劇中のそれとはひと味違う歌の世界観を作り上げている。

前作同様、音楽によって物語のより深い世界へといざなってくれる『アナ雪2』。日本語バージョンはもちろんだが、英語バージョンも言葉を超えて、歌い手の感情、伝えたいという思いが聴き手心にきちんと伝わってくる。なお12月27日(金)に放送される『MUSIC STATION ウルトラ SUPER LIVE』では、「ディズニーメドレー」がパフォーマンスされるが、もちろん『アナ雪2』の楽曲も披露される。山寺宏一×KANA-BOON! ALLSTAR「フレンド・ライク・ミー」(『アラジン』)、ダイアモンド☆ユカイ「君はともだち」(『トイ・ストーリー4』)、May J.「レット・イット・ゴー~ありのままで~」(『アナと雪の女王』)、そして武内駿輔「おとなになったら」、神田沙也加「わたしにできること」、中元みずき「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」(以上『アナと雪の女王2』)を歌う。オラフ役・武内による「おとなになったら」と、アナ役の神田による「わたしにできること」は、今回がテレビ初披露となる。

※ダイアモンド☆ユカイの「☆」は六芒星が正式表記。

『アナと雪の女王2』オリジナル・サウンドトラック 特設サイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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