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令和に昭和が熱い シニア層が押し寄せる“フェス”、歌謡曲のスターが集結する『夢コンサート』とは?

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BSフジ

1960年~70年代に活躍したアイドル、スターが集結する『夢コンサート』

『夢コンサート』というコンサートを知っているだろうか。シニア層をターゲットにした、1960~70年代に活躍したアイドルやシンガーが出演する、フェスのようなコンサートで、全国津々浦々を回る全国ツアーを行うほど、どの会場もシニア層のファンで大盛況だ。「一度観に来ませんか?」というお誘いを受け、10月のある日、茨城県・下妻市民文化会館で行われた『夢スター歌謡祭 春組対秋組歌合戦』を観に行った。

開演は13時。平日だが、開場の12時前から会場前には、60代以上と思われる年配者を中心に、大勢のファンが待ちきれないとばかりに集まってくる。杖をついている人、体を支えられながら歩いている人、家族連れ、夫婦、友達同士、一人で参加してい人、色々なお客さんが、この日のコンサートを心待ちにしていたのが伝わってくる。キャパシティ1000人の会場が満員だ。この日の出演者は、

【春組】

黒沢年雄/おりも政夫(フォーリーブス)/ロザンナ(ヒデとロザンナ)/平浩二/葛城ユキ/高道(狩人)/桑江知子/石井明美/保科有里/ZERO

【秋組】

江木俊夫(フォーリーブス)/辺見マリ/大野真澄(ガロ)/西口久美子(青い三角定規)/三善英史/あいざき進也/晃(フィンガー5)/伊藤咲子/リリーズ

というラインナップだ。それぞれがヒット曲を披露し、ファンは一瞬にして「あの頃」に戻る。誰もが口ずさめる事ができる歌謡曲が次から次へと披露される。昭和時代、お茶の間に欠かせなかった音楽番組を観ているような感じだろうか。この『夢コンサート』のテーマは“あなたの心をワクワク”だ。普段なかなかコンサートに足を運ぶことがないシニア層が、昔テレビでよく観ていた、聴いていた歌手が登場し、変わらぬ声で歌ってくれると、瞳を輝かせながら一緒に歌い、拍手を送り、心から楽しんでいるのがわかる。このコンサートが確実に元気の素になっている。

そんなコンサートについて、出演者の江木俊夫、おりも政夫、伊藤咲子、保科有里に話を聞いてみると、お客さんの熱量がとにかく凄いと教えてくれた。

「みなさん年齢的にもう少し静かな感じかなと思ったら、むちゃくちゃ盛り上がってくれます(笑)」(江木)

左から保科有里、おりも政夫、江木俊夫、伊藤咲子
左から保科有里、おりも政夫、江木俊夫、伊藤咲子

江木 お客様は昭和生まれの方が多いので、懐かしんでくれたり、当時にタイムスリップしてくれて楽しんでくれている思う。春組対秋組の歌合戦なので、次から次へと歌手が登場して、競い合っているところがいいのだと思う。みなさん年齢的に、客席はもう少し静かな感じかなと思っていたら、とんでもない(笑)。むちゃくちゃ盛り上がってくれます。

伊藤 ステージから見ていると、お顔が当時に、少年少女の顔に戻っているんですよね。

おりも 皆さんペンライトを買ってくださって、最初はその振りも小さかったのに、だんだん大きくなってきます。最初は恥ずかしがっていても、だんだん時間が経ってくると大きく振ってくれます。

江木 これだけの人数の歌手が、一堂に集まることができているのが大きいと思う。5人とかではなく、総勢20組で、これは昭和の歌だからできる事です。昭和の歌は短いから。今のアーティスト達がこれだけの数集まったら、何時間のコンサートになるかわからない(笑)。昭和時代の3分未満の大ヒット曲ばかり、そして全員のスケージュルが合って、お客さんが来てくれて、色々な要素が重なり実現したコンサートですよね。僕も最初はどうなるんだろうって思っていたけど、やっている方もすごく楽しい。それと、出演者全員で歌う「夢スター 春・秋」「ごめんなさい、ありがとう」という曲の存在が、このコンサートのひとつのよさになっていると思う。

コンサートのテーマソング「夢スター 春・秋」でステージと客席が一体になる

このコンサートのテーマソングとでもいうべき「夢スター 春・秋」(C/W「ごめんなさい、ありがとう」)を6月に発売し、コンサートを観終えたお客さんが、次々と手に取り、買っていく(オリコン演歌歌謡曲ランキングにチャートイン中)。歌詞も来ているお客さんの世代に響く言葉が綴られている。

保科 この歌を出演者全員が手を繋ぎながら歌うシーンがあって、お客さん同士も手をつないでくださったりして、すごく一体感を感じます。

「昭和の娯楽の中心だった歌は、みなさんの心に強く残っている」(おりも)

この日は「ブルドッグ」(フォーリーブス)、「バス・ストップ」(平浩二)、「ひまわり娘」(伊藤咲子)、「学生街の喫茶店」(大野真澄/ガロ)他、昭和を彩った名曲が次から次へと歌われ、お客さんは、知らない曲がほぼないという嬉しいコンサートになっている。わずか2分半~3分の中で、起承転結のあるドラマがしっかりと展開され、感動を与えてくれる歌謡曲の強さを、改めて感じた。

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江木 歌詞が夢を抱かせてくれて、想像力を掻き立ててくれます。最近の歌は、現実の事しか歌わないから、夢がない(笑)。

伊藤 お客さんたちも一緒にほぼ全曲口ずさんでくれます。やっぱり歌詞が心に残っているのだと思います。

おりも 娯楽が少ない時代に、歌って最大の娯楽で、歌番組がお茶の間で人気で、そういう意味でもみなさんの心に残っている昭和歌謡は、“強い”と思う。

江木 今は歌番組も少なくなって、昭和世代の歌を聴く機会も減っています。BSでは昭和の歌を取り上げてくれていますが、会場で生で聴くと、また雰囲気も違って楽しめるはず。

12月14日(土)、BSフジでオンエアされる『昭和歌謡パレード』(19:00~20:55)に、このコンサートのメンバーから総勢19組が出演し「ごめんなさい、ありがとう」をテレビ初披露する。

このコンサートは全国ツアーを行なっているが、大都市だけではなく小さな都市、街へも出向き、お客さんに来てもらうというよりも、会いに行くという感覚が強い。だから普段コンサートに行かないお年寄りも、ケガや病気で体の調子がいまひとつで、外に出かけることが億劫になっている人も、「近くだから行ってみよう」という気持ちになる。

おりも 関ジャニ∞が47都道府県ツアーをやっていますが、僕らは47都道府県はもちろん、その市町村まで行きますから。たまに町内会まで行ったりして(笑)。

「昭和の歌のよさ、出演者の仲間意識がこのコンサートのよさ」(伊藤)

「元気をもらいましたと言ってくださるお客さんが多いですが、逆に私たちがお客さんから元気をいただいている」(保科)

ステージ上で、往年のスター同士が仲良くしている姿、楽しそうに歌っている姿を見るのも、ファンは嬉しいはずだ。

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伊藤 昭和の歌のよさと、出演者の仲間意識がこのコンサートのよさだと思います。ヒット曲を持っている者同士であっても、当時は音楽番組がたくさんあったから、みんなそこで一緒になって、仲良くなっていました。それが今も続いている感じです。

おりも 年を取ってくると、輪ができてくるんですよ。若い頃の方がライバル意識があったり、それはそれでいいと思うし、でもだんだん丸くなってきて、今このコンサートでみんなで同じ曲を歌って、ひとつになれるというのが僕らも嬉しいです。

保科 世代的に、例えば介護や色々な事を抱えてる方もたくさんいらっしゃるんですけど、やっぱり思い切って来てよかったって、涙を流している方もたくさんいらっしゃるんですよ。終演後、私たちとハグをして、本当に元気をもらいましたって言ってくださる方が多いです。逆に私たちが元気をいただいています。

江木 若くないから東京まで観に行くのは大変だし、地方に住んでいると毎日そんなに楽しい事や話題もやっぱりないと思うし。でもみんなで共存共栄することが大切だと思うから、この『夢コンサート』はいい企画だと思います。

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「チェリッシュ松崎悦子 胃がんから4カ月ぶり復帰」というニュースが注目を集めているが、復帰を果たしたステージがこの『夢スター歌謡祭 春組対秋組歌合戦』だ。フォーリーブスや青い三角定規も、メンバーが亡くなったり、これまでも仲間が病と闘ったりしていたので、今回の松崎の復活を、出演者も心待ちにしていた。50代から70代の歌手が全国を回り多くの人に夢、勇気、希望を与えている。「これからの時代、みんなで手を繋いで、仲よく笑顔で過ごしたいという思いを込めてやっています」(夢グループ代表・石田重廣氏)という言葉通り、歌、エンターテイメントは、お客さん、そして出演者、全ての人を笑顔にし元気を与える。その力は計り知れない。

BSフジ『昭和歌謡パレード』オフィシャルサイト

『夢コンサート』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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