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槇原敬之 その“ボーカリスト”としての魅力に、多くのアーティストも魅了されるカバー集がロングヒットに

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ユニバーサル ミュージック

10月に発売したカバーベスト・アルバムがロングヒットに

『The Best of Listen To The Music』(10月23日発売/初回限定盤)
『The Best of Listen To The Music』(10月23日発売/初回限定盤)

2020 年にデビュー30 周年を迎える槇原敬之が、30 周年記念の一環として10月23日に発売した、初のカバーベスト・アルバム『The Best of Listen To The Music』がロングヒットになっている。さらに12 月4 日にはハイレゾマスターによる、2枚組アナログ盤が発売された。これまでリリースしてきた『Listen To The Music』シリーズ3作(1998年、2005年、2014年発売)の中から、本人がセレクトした13曲+新曲2曲(14.15)、計15曲収録されている。

収録曲は、1.君に、胸キュン。(YMO)/2.月の舟(池田聡)/3.traveling(宇多田ヒカル)/4.Your Song(エルトン・ジョン)/5.言葉にできない(オフコース)/6.ごはんができたよ(矢野顕子)/7.WHAT A WONDERFUL WORLD(ルイ・アームストロング)/8.ヨイトマケの唄(美輪明宏)/9.MAGIC TOUCH(山下達郎)/10.Hello, my friend(松任谷由実)/11.時代(中島みゆき)/12.Rain(大江千里)/13.Missing(久保田利伸)/14.若者のすべて 〜Makihara Band Session〜(フジファブリック)/15.聞き間違い(YUKI)という、幅広いジャンルからセレクトされた名曲揃いの、カラフルな作品だ。新録は、槇原が「聞いたときは雷に打たれたくらいびっくりしました」というフジファブリック「若者のすべて」と、同じく「あまりにも歌詞が素晴らしく」電車の中で涙したという、YUKI「聞き間違い」だ。

「カバーアルバムは、僕自身の50年の“音楽好きの歴史”で、勝手に尊敬の気持ちを込めてカバーさせていただいている」

『The Best of Listen To The Music』(10月23日発売/通常盤)
『The Best of Listen To The Music』(10月23日発売/通常盤)

このアルバムについて槇原は「『カバー・アルバム『Listen To The Music』というシリーズでこれまでに「1」、「2」、「3」と出してきて、今回はその総集編です。本当はカバーよりも本人の歌っているバージョンが一番良いとは思いますが、このカバー・アルバムを作るときはちょっと角度が違いまして。僕自身の「音楽好きの歴史」というのは50年になるわけです。そちらの(音楽好きの)自分が、「なんでこの人はこんな良い曲を作ったんだ」とか、「この曲作るなんて本当に天才だな」とか、「本当にこの曲に救われたな」という曲ばかりを集めて、自分で勝手に尊敬の気持ちを込めてカバーさせていただいているんです」と語っているように、“リスナー”槇原敬之が心を揺さぶられた歌、アーティストへの深い愛情が全面に出ている。

「カバーベストは、槇原さんがコンポーザーとしてのみならず、ボーカリストとしても素晴らしい歌を届けて下さる方だということを、再認識できる作品」(Official髭男dism・藤原聡)

『The Best of Listen To The Music』(アナログ盤/12月4日発売)
『The Best of Listen To The Music』(アナログ盤/12月4日発売)

ユニバーサルミュージックの「槇原敬之30周年記念特設サイト」には、数々のアーティストからのお祝いメッセージと共に、この作品についてのコメントが届いている。シンガー・ソングライターのさかいゆうは「原曲をリスペクトしながらも、どうやったってマッキーさんのものになってしまう。それをカバーで感じさせてくれることに意味があると思う。何かが入っているからマッキーさんぽいのではなく、でもイントロが流れた瞬間にマッキーさんだって思ってしまうというすごさ。『Listen~』シリーズは、自分がカバーをする時のアレンジの教科書的存在です」と、その唯一無二の存在感に脱帽している。

今年大ブレイクを果たしたOfficial髭男dismの藤原聡(Vo/Pf)は「槇原さんのカバーは、槇原さんの優しさが凄く伝わってくる。どの歌も素晴らしいのですが、個人的にはフジファブリックの『若者のすべて』にグッときました。『The Best of~』は、槇原さんがコンポーザーとしてのみならず、ボーカリストとしても素晴らしい歌を届けて下さる方だということを、再認識できる作品です」と語り、平成を代表する男性シンガー・ソングライター槇原敬之の、そのシンガーとしての魅力を語っている。また『堂本兄弟』(フジテレビ系)などで、槇原と共演経験のある高橋みなみは、「楽曲やアーティストへのリスペクトと共に、楽曲を優しく包み込む槇原さんの歌声が大好きです」と語っているように、槇原の歌から伝わってくる優しさは、その人間としての懐の深さ、真の優しさが歌に滲み出ているからだ。さかいも「30周年というと相当大御所ですけど、僕達に同世代くらいの感じでフランクに接してくださるので、たまにちょっと上のお兄さんくらいだと勘違いしてしまいます(笑)」と誰に対しても、同じ目線でコミュニケーションをとる槇原の、その人間性に惚れ込んでいる。

フジファブリックの山内総一郎(Vo/G)が「心の中にいつも槇原さんの曲がある。30周年といっても、名曲を作り続けての30年って、本当に凄いこと」と語っているように、1990年のデビュー以来、数多くの名曲、素晴らしいポップミュージックの数々を世の中に送り出し、人々の心を潤すと共に、現在活躍しているアーティストにも大きな影響を与えている。今年20周年を迎えたHYの仲宗根泉は「自分の思いを人に伝えるということが、どんなに素晴らしいことかということを、槇原さんの音楽を通して教わりました」と、表現者としての根源にある部分に、槇原の音楽が光を当ててくれたと語っている。

来年30周年。「いろんな作品が、たぶんリリースされると思います」

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来年の30周年に向け「いろんな作品が、たぶんリリースされると思います。テーマに合わせたリリースが予定されておりまして、ワタクシ今年から来年くらいまでは死ぬんじゃないか?というくらい働きます。でもみんなに感謝の気持ちを込めて、この30周年を、みんなに対して本当に感謝の気持ちを言いたいので、頑張ろうと思っています。是非楽しみにしていてください」と、様々な作品がスタンバイしていることを教えてくれた。改めて槇原敬之という希代のメロディメーカーの作品に触れ、その素晴らしいポップミュージックの“煌めき”を感じて欲しい。

ユニバーサル ミュージック 槇原敬之30周年記念特設サイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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